病気の治療
medical treatment
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ウイルスや細菌などの微生物が感染し血液を介して髄膜(脳および脊髄をおおう膜)に炎症を起こし、髄膜炎が発症します。ウイルスでは春から夏に流行するエンテロウイルスやムンプスウイルス(おたふくかぜ発症時)などが多く、治療は対症療法で一般的に良好な経過をとります。ここでは重症になることが多く診断、治療に急を要する細菌性髄膜炎について述べます。
髄膜炎の古典的な3主徴は発熱、頭痛、項部硬直で75%以上の患者さんに意識障害が起きますが、「活気がない」から「昏睡」と程度はさまざまです。嘔吐や羞明もよくみられます。けいれんは初期症状にみられ、髄膜炎の全経過を通して20~40%に起きます。診断の手助けになる重要な臨床所見に髄膜炎菌の発疹があり、初めは紅斑でウイルス感染に似ていますが、急速に点状出血になり体幹や下肢にみられます。米国の医療ドラマ(ドクター・ハウス)で患者さんに頭を左右に数回ふってもらい頭痛が強くなるかを調べるシーンがありましたが、jolt accentuationといって髄膜炎の感度が高い所見です。
小児科では欧米に20年遅れて日本でもヒブワクチン(2008年)と小児肺炎球菌ワクチン(2010年)が導入されて細菌性髄膜炎が激減しました。ワクチン導入前は年間1,000人ちかくの髄膜炎が報告され50名くらいが亡くなっていました。私が研修医のころは発熱した乳児を診たら髄膜炎を見逃すのが怖くて腰椎穿刺を常に考えたものです。現在は髄膜炎をほとんど診なくなりましたが、3生月未満の発熱はハイリスクと考えて腰椎穿刺を含めた検査を考慮する必要があります。
細菌性髄膜炎を疑えば血液培養を迅速に採取し抗菌薬をただちに開始します。診断は腰椎穿刺を行って採取した脳脊髄液の中の菌の存在や細胞の増加を証明します。
健康な人が罹患する原因菌は肺炎球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌などです。髄液の中の菌がわかるまで3~7日かかります。治療は迅速に開始します。疑いの段階では原因菌は不明なので菌を推定して抗菌薬を選択します。培養結果が戻り原因菌がわかればその菌に効く抗菌薬に変更します。ステロイドを併用するとよいといわれています。
死亡率は原因菌によって違い3~20%程度です。一般的な後遺症は認知機能低下、記憶障害、けいれん、難聴、めまい、歩行障害などです。