徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

感染症:レジオネラ症

米国在郷軍人会で発症

問題になるのはレジオネラ肺炎です。1976年7月21~24日、フィラデルフィアのホテルで米国在郷軍人会が行われ、参加者のうち182人が具合が悪くなり、146人が87の病院に入院しました。ほとんどにレントゲンで肺炎像があり29人(16%)が死亡しました。約6ヶ月の流行で、亡くなった方の肺の組織から新しい細菌が分離され、在郷軍人会(Legion)にちなんでLegionella pneumophilaと呼ばれるようになりました。ホテルの空調用冷却塔の水の中で菌が繁殖し、エアロゾルとして散布され、それを吸った人々が肺炎になったのです。

レジオネラは25~43℃で増殖し、70℃以上の高温では1分以内に死滅します。温泉設備などで繁殖しやすく、実際に大規模浴槽施設での集団感染も報告されています。ハイリスクとなるのは、移植後の免疫不全者、透析患者、高齢者、慢性肝障害、閉塞性肺疾患をもつ方などです。

冷却塔、浴槽なども感染源

レジオネラ菌は土壌、河川、湖などの自然環境に広く存在しますが、ヒトの生活環境のなかでも冷却塔水、給水・給湯系、浴槽などに定着し感染源となります。

肺炎以外では、菌血症、リンパ節炎、心内膜炎、副鼻腔炎、脊髄炎などがあります。
ハイリスクの患者さん、通常のβ-ラクタム系抗菌薬が無効の場合は常にレジオネラ感染症を疑う必要があります。診断は菌の分離、血清抗体価などがありますが、尿中抗原検出は迅速に実施できて早期診断に役立ちます。

迅速に診断し適切な抗菌薬投与で死亡率を下げる

抗菌薬はキノロン系、アジスロマイシン、クラリスロマイシンなどを使います。一般的に院内のレジオネラ感染症の致死率は、市中での感染に比べると高く、いまだに30%くらいと米国の教科書には記載されています。尿中抗原による迅速診断と適切な抗菌剤を投与することで死亡率を下げることができます。

人の集まる場所の清掃を

わが国の冷却塔の60%以上からレジオネラ菌が検出され感染源と考えられましたが、レジオネラは自然界に分布しているので真の感染源が不明のこともあります。すべての冷却塔を消毒する必要はありませんが、人が集まるビルやホテル、病院などの清掃は必要です。厚生労働省はレジオネラ症防止指針を出しています。

参考文献
  • Goldman-Cecil Medicine 25th Edition. Elsevier. 2015
  • 青木眞. 感染症診療マニュアル 第3版. 医学書院. 2016
  • 感染症予防必携 第3版 日本公衆衛生協会. 2015

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