病気の治療
medical treatment
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大腸菌は腸内細菌叢を形成する常在菌で私たちの健康のために必要不可欠なものですが、なかには下痢の原因となる下痢原性大腸菌があります。
に分類されます。EHEC感染症(腸管出血性大腸炎)は無症状のこともありますが、一般的に激しい腹痛、水様下痢、血便をきたします。進行すると死亡することもあります。
EHECはもともとウシなどの腸管に存在し、ひき肉から感染した報告があります。1982年に米国のファーストフード店のハンバーガーによる集団発生が最初の報告で、O157が原因菌として検出されました。その後カナダ、英国などで集団発生が起きています。日本では1990年、埼玉県浦和市の幼稚園で集団発生し園児2人が死亡しました。現在は毎年4,000人前後の報告があります。
EHECはウシ、ヒツジ、シカなどの反芻動物の大腸に棲息しているので、それらの腸内容物で汚染された生肉、野菜、水などを介して経口感染します。食品を十分に加熱することが大切で、特に若年者や高齢者や抵抗力が弱い人たちは重症になることがあるので、生肉や加熱不十分な肉を食べないようにする必要があります。
わずか50個くらいの菌量で発症するので、患者さんや保菌者の便から二次感染しやすいのも特徴です。便で汚染された衣類、寝具、おむつは加熱し消毒します。また石鹸や流水での手洗いは大切です。
潜伏期間は2~5日程度で、血性下痢、腹痛が主な症状で、発熱は普通ありません。6~9%が溶血性尿毒症症候群(溶血性貧血、急性腎不全、血小板減少)を合併し、子どもや高齢者に多いです。溶血性尿毒症症候群になると半数程度で透析が必要になり、3~5%が死亡するという報告があります。
経口または点滴による電解質、水分の補給が主な治療です。抗生剤投与については見解が分かれます。日本では抗菌薬を早期(発症3日以内)に使うと溶血性尿毒症症候群の発症率を下げる可能性があるとの報告から早期であれば抗菌薬を使う傾向があります。逆に米国では抗菌薬の使用が溶血性尿毒症症候群の発症を誘発するとの考えがあり、抗菌薬使用を推奨していません。