病気の治療
medical treatment
medical treatment
ガス壊疽は、損傷を受けた筋肉や軟部組織から健康な筋肉に細菌が侵入し、ガスが発生して毒素が全身にめぐり、急速に筋肉の組織が死んでいきます。
クロストリジウム属の細菌は土壌に生息し嫌気性(酸素の存在下では死滅する)です。深い傷の30%以上がクロストリジウム属の細菌感染を起こしますが、クロストリジウム性の筋肉壊死は極めて少ないです。軍事的な環境下では深い筋肉の裂創で起きますが、骨の破損がない貫通性の銃創(射創)ではあまりみられず、榴散弾の破裂による創では比較的よくみられます。一般市民が経験するのは外傷や手術、筋肉注射などです。
震災時にもガス壊疽は起きます。1995年の阪神淡路大震災の際に徳洲会病院は連携して支援しましたが、被災地からガス壊疽の患者さんの搬送がありました。2011年の東日本大震災後の学会でもガス壊疽の報告がみられます。
潜伏期間は3日以内がほとんどで24時間以内が最も多いです。典型的な症状は創の部分のみが急に痛みだすので、皮膚の深い組織が炎症する蜂窩織炎(ほうかしきえん)との鑑別の助けになります。痛みはどんどん強くなりますが、創に限局しており、感染の広がりに応じて痛みの範囲も広がります。創傷部の腫脹とむくみが生じ、血性の浸出液を伴います。多くの場合、患者さんは頻脈になりますが、体温上昇は軽度で、ガス産生は発症初期には少ないかまったくありません。創から起泡性の浸出物がみられることもあります。皮膚は緊張し白く、青みがかった大理石色で、正常の皮膚に比べて冷たいです。
症状の進行は速く、受傷した患肢全体が緊満し、皮膚水疱形成、暗赤色から黒色の皮膚壊死、組織内にガス像がみられるようになります。見た目よりもはるかに広範囲に筋肉が壊死になっています。毒素によって血管透過性が亢進し浮腫の増大、血圧低下、心筋機能を抑制し循環不全になります。筋肉の崩壊によってミオグロビンが放出され腎不全にもなります。適切な治療が行われなければ予後は極めて悪くなります。
ガス壊疽を疑う所見があれば、患部のレントゲン写真を撮り、筋肉内にガス像があれば診断されます。また創傷部の浸出液や膿の培養で原因菌を調べて治療方針を決めます。
外科的に壊死物質を切除し、抗菌薬を大量投与し、高圧酸素療法などを行いますが、感染が進行した場合には患肢の切断を行うこともあります。