病気の治療
medical treatment
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ヘリコバクターは“ラセン状の細菌”という意味です。ピロリとは胃の出口の「幽門部」のことで、この菌は胃の幽門部ではじめて見つかりました。ヘリコバクター・ピロリ菌の発見者はオーストラリアのウォーレンとマーシャルで、「胃炎患者で認めたピロリ菌の存在」、「ピロリ菌培養成功」が1983年に国際医学雑誌『ランセット』に報告され、後のノーベル賞の受賞につながりました。当時は胃の中は強い酸性なので細菌は生存できないと思われていたのです。
現在ではH.Pylori感染胃炎を背景に、消化性潰瘍や胃がんが発生することがわかり、除菌治療によって胃がんやH.Pylori関連疾患の予防が可能になりました。わが国での感染率は10~20歳代で10~20%ですが、年齢とともに上昇し、60歳以上では50~70%です。
胃カメラで胃を観察すると、H.Pylori感染胃炎では胃粘膜の萎縮や腸上皮化生などがみられます。胃カメラのときに胃の粘膜の一部をとって調べる組織生検がありますが、ピロリ菌感染のない場所から組織をとってしまうおそれがあります。
胃カメラではない検査(非侵襲的な検査)には、尿素呼気試験、抗体測定、糞便中H.Pylori抗原測定などがあります。
診断がつけば治療を行いますが、ピロリ菌が除菌されたことを確認するための検査は、尿素呼気試験と糞便中抗原測定が推奨されています。除菌薬の服用が終わってから4週間以降に検査します。
尿素呼気試験では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を飲んでいると偽陰性率が高くなるので、2週間以上の休薬の後に検査をします。
酸分泌抑制薬と2種類の抗菌薬を内服します。初回の除菌(一次除菌)のときは、PPI(ランソプラゾール、オメプラールなど)、アモキシシリン、クラリスロマイシンを1週間飲みます。それで除菌に成功しなかったときは二次除菌で、PPI、アモキシシリン、メトロニダゾールを飲みます。
除菌率は一次除菌で70%、二次除菌で90%くらいです。一次除菌、二次除菌ともに不成功の場合は専門医への受診が必要になります。