徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2024年(令和6年)07月08日 月曜日 徳洲新聞 NO.1448 1面

南部徳洲会病院が中部徳洲会病院と連携
TaTMEで直腸がん治療開始
局所再発率減・手術時間短縮・患者さん負担減

南部徳洲会病院(沖縄県)は、進行下部直腸がんに対するTaTME(内視鏡下経肛門的直腸間膜切除術)を開始した。TaTMEは、腹部からは届きにくい場所のがんに対し、腹部と肛門の2カ所から腹腔鏡や手術支援ロボットなどを用いてアプローチし、直腸と直腸間膜を切除する術式。局所再発率の低減、手術時間の短縮、患者さんの負担低減などが期待できる。2021年に同術式を開始した中部徳洲会病院(沖縄県)と連携しながら、国産初の内視鏡手術支援ロボット「hinotori」を活用して行う。

進行下部直腸がんは肛門近くにできるがん。外科手術を行う場合、開腹手術と、手術支援ロボットを含む内視鏡下手術がある。直腸がんの手術は、いずれの方法でも腹部からのみアプローチして切除することが一般的だが、TaTMEは腹部からのアプローチと同時に、肛門側からもカメラと鉗子を挿入し、2方向から同時にアプローチして切除する。

「患者さんに安心して手術を受けていただきたいです」と宮城部長

主に、腫瘍の位置(肛門に近く、骨盤の深い位置にある)や患者さんの身体的特徴(肥満体型、骨盤が狭いなど)などにより、腹部からだけではアプローチしにくいケースが対象。外科手術前に放射線治療や化学療法を行い、“線維化”など治療後の変化によって切除の難易度が高いケースにも適応になる可能性もある。

「ロボット手術で安全な治療を提供します」と内間部長

線維化などの反応が起きた組織は、切開や剝離が難しく、解剖学的構造が不明瞭になり、腹部からのアプローチだけでは正確な切除が難しい場合もあるからだ。また、切除に長い時間がかかってしまうケースも起こり得る。

南部徳洲会病院の宮城幹史・消化器外科部長は「腹部側から見えにくいがんでも、肛門側からも腹腔鏡操作を行うことで正面にがんを捉えることができ、きれいに切除することが可能になります」と説明。腹部からのみアプローチするよりも、手術精度の向上や手術時間の短縮など患者さんの負担軽減につながることが期待される。

TaTMEで内視鏡を肛門側から操作する宮城部長(左)と「ダヴィンチ」を操作する内間部長(右)

また、直腸がんの外科手術では、切除した面に、がんが露出すると、局所再発(最初のがんと同じ場所か、ごく近くでの再発)率が高くなるため、切除するラインと腫瘍の外側の距離(CRM)を1㎜以上確保することが望ましいとされる。TaTMEでは、腹部と肛門の2方向からのアプローチによってCRMも確保しやすく、局所再発率が低いという研究結果がある。

宮城部長は「腹部側と肛門側に各1人ずつ施術者と助手を配置するなど、医療スタッフの人数が必要になりますが、安全かつ迅速ながん切除を可能にします」強調。スタッフの業務負担を低減し、「働き方改革」への寄与にも期待を寄せる。

手術支援ロボットでアプローチ グループ病院訪問し支援も視野

宮城部長は3月まで中部徳洲会病院に勤務。同院の内間恭武・消化器外科部長と協力し、2021年11月にTaTMEを開始、23年1月からは同院の内視鏡下手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いて実施している。「すべての進行下部直腸がんが適応になるわけではありませんが、沖縄県では肥満体型の方が多く、適応になりやすい傾向があります」(宮城部長)。

宮城部長は4月に南部徳洲会病院に赴任。当初、TaTMEが必要な患者さんは中部徳洲会病院に紹介し、宮城部長が同院に赴いて治療する体制だったが、南部徳洲会病院でもTaTMEを実施できるよう体制を整備。7月までに同院で2例実施、2例目には宮城部長が肛門からのアプローチを、内間部長が来院して腹部から「hinotori」でのアプローチを同時に行い、同院でロボット手術との同時手術を初めて行った。「当院でもTaTMEを実施できる体制が整い、患者さんに一層質の高い医療の提供ができるようになりました」と宮城部長は胸を張る。

対象患者さんが限られることや、とくに肛門側からのアプローチは難易度が高く、医師の技術習得に時間がかかることなどから、両院はTaTMEに関する県内多施設共同研究に参加し症例検討を行うなど、技術研鑽に余念がない。宮城部長は手術支援ロボットを有し、TaTMEの施行を検討している徳洲会グループ病院があれば、直接訪問して支援することも視野に入れている。

宮城部長は「患者さんに安心して手術を受けていただけるよう知識・技術の向上に努めるとともに、より身近な場所で受けられるように協力していきたいです」と意欲的だ。

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