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Tokushukai medical group newspaper digest

2021年(令和3年)3月22日 月曜日 徳洲新聞 NO.1279 四面

深井・湘南鎌倉病院部長
再発胸腺腫症例の論文受賞
「Distinguished Scholar Award」

「今後も患者さんのために」と記念の盾を持つ深井部長「今後も患者さんのために」と記念の盾を持つ深井部長

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の深井隆太・呼吸器外科部長がオンライン医学ジャーナル「Archives of Clinical and Medical Case Report」に投稿した症例報告の論文が、European Journal of Scientific Research(EJSR)という団体からDistinguished Scholar Awardを受賞した。論文タイトル(邦訳)は「再発した胸腺腫に対する積極的手術と切除不能な心筋内病変に対する陽子線治療により10年間生存し得た症例」。

論文では、根治的放射線治療によって完全寛解したものの、その5年後に胸腺腫が再発した重症筋無力症の女性患者さんの症例を報告。10年前に深井部長(当時は別の医療機関に所属)が手術を施行した患者さんだ。

再発した胸腺腫に対し確立された標準治療はないが、外科的切除を行うことで、より良い生存率が得られるという報告がある。ただし、大きな侵襲がともなうことなどにより、手術の難度は高い。深井部長は心臓血管外科医と協働し、人工心肺装置を用い心停止下に胸腺腫を摘出した。他方で、心筋内に別の病変を発見したが、冠動脈の一部に重なっていたため、この病変の摘出は見合わせた。

一人ひとりの患者さんに合わせた治療を実践(中央が深井部長)一人ひとりの患者さんに合わせた治療を実践(中央が深井部長)

術後3年で病変のサイズが拡大。すでに放射線による治療歴があり耐用線量に達していたことから、体の奥にある病変でもピンポイントで狙える陽子線治療を選択。他の医療機関で先進医療として実施した。結果、病変は縮小し、術後10年が経過するが、再発の兆候もなく元気に過ごしているという。症例をとおして、全身状態が良好な患者さんに対する手術療法の検討の必要性や、切除不能な心筋内病変に対する陽子線治療の有効性などを示唆した。

「受賞はとても励みになります。今後も患者さんのために頑張りたいと思います。今回の論文では、標準治療がないなかで、患者さんが40代と若かったため侵襲に耐えられると判断し積極的に手術を行ったこと、そして陽子線治療を選択したことを評価していただいたと考えています。臨床を通じ得られた知見を情報発信し、より良い治療法の確立に貢献していきたい」と抱負を語っている。

なお、深井部長は2019年3月から呼吸器外科領域で手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使った手術を開始。縦隔腫瘍や肺がん、胸腺腫などに活用している。

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