2021年(令和3年)1月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1269 四面
岸和田病院が心臓リハビリに力
術後早期ICUから離床訓練開始
年間約300件の開心術をはじめ多数の心臓血管外科手術を施行する岸和田徳洲会病院(大阪府)は、心臓リハビリテーションに力を入れている。安全に気を配りながら術後早期にICU(集中治療室)から離床訓練を開始し、運動療法や食事療法などを通じて、チーム医療で心肺機能や運動能力の回復を図り社会復帰を支援。待機的手術(予定手術)の場合には術前から評価・指導を行うほか、退院後も外来リハビリや訪問心臓リハビリによって介入し、心疾患の再発予防に努めている。
チーム制で切れ目なく介入
「術後早期のリハビリ開始が大切です」と古田主任
岸和田病院リハビリテーション科の心肺チームに属する理学療法士(PT)を中心に、看護師が加わって心臓リハビリを実施。土曜、日曜も休みなくリハビリを提供している。
同科スタッフは、より高いレベルの心臓リハビリを実践するため日々研鑽(けんさん)を重ねており、心臓リハビリテーション指導士(日本心臓リハビリテーション学会が認定)の資格を保有するPTが5人、呼吸療法認定士(日本胸部外科学会、日本呼吸器学会、日本麻酔科学会の3学会が合同で認定)を保有するPTも5人いる。
古田宏主任(PT)は「患者さんに、ご自宅や施設に帰れる身体になっていただくためには、術後早期にリハビリを開始して離床を目指すとともに、栄養療法により低栄養を防ぎながら、とくに高齢の患者さんは身体・認知機能の低下を意味するフレイルや、骨格筋量・骨格筋力の低下を指すサルコペニアを予防することが肝要です」と強調する。
手術を終えた患者さんはICUに入室しているうちにリハビリを開始。状態に応じてベッド上での訓練や歩行訓練などを行い、病棟に移ってからも継続する。
心臓リハビリの対象となる心臓血管外科手術を受けた患者さんの入院病棟は6階、循環器内科手術を受けた患者さんの入院病棟は4階にある。6階には心臓リハビリ室があり、エルゴメーター(ペダルをこぐ運動器具)を用いた運動や体操などの集団心臓リハビリを行っている。
エルゴメーターを用いた心臓リハビリの様子
さらに、心疾患の再発や再入院の予防のため、退院後の体調管理の方法や日常生活の注意点、運動療法などを患者さんにアドバイスしている。
待機的手術(予定手術)の場合、PTが術前から介入し、術後早期に運動を開始することの大切さを患者さんに認識してもらったり、呼吸方法(腹式呼吸、胸式呼吸、痰(たん)を出すための呼吸法、痛みを抑えて呼吸する方法)の訓練を行ったりする。
心臓リハビリはチーム制を導入。一人ひとりの患者さんに担当のPTを付けるのではなく、複数人でチームを組み対応することで、均一化したリハビリを提供できる体制を構築。各患者さんの状態などチーム内で情報共有するため、毎朝、チームカンファレンスを実施している。
心肺チームには看護師が入っているほか、心臓血管外科および循環器内科とのカンファレンスにPTが参加。それによって医師・看護師とスムーズに連携を取りながらリハビリを進めている。
座位や立位へとスムーズに移行できる“離床ベッド”
また、大阪府心不全地域医療連携の会が作成した『ハートノート』という心不全による再入院を予防するための患者さん向け自己管理ツールを活用し、患者さんへの啓発活動にも取り組んでいる。
このほか、外来リハビリに通院している患者さんを対象に心臓教室を開催。食事や生活に関する注意事項などを伝え、再認識を促している。さらに同院は2018年から訪問心臓リハビリをスタート。「訪問時には患者さんの状態確認にも努め、心不全の兆候を早めにつかむようにしています。早めに訪問看護師と連携し、再入院を防ぐため受診につなげています」(古田主任)。
20年12月には電動式の離床ベッドを新たに導入。患者さんが横になった状態から、座位や立位へとスムーズに移行できる装置だ。安全性を確保しながら、より早期の離床に役立てていきたい考えだ。