2020年(令和2年)10月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1259 四面
近江草津病院
生活リハビリを強化
地域包括ケア病棟でプログラム
近江草津徳洲会病院(滋賀県)は地域包括ケア病棟(49床)での生活リハビリテーションを強化している。理学療法士(PT)など専門職によるリハビリに加え、同院は病棟内で実施できる生活リハビリのプログラムを作成し、看護スタッフが実践。PTが考案したオリジナルの〝いきいき体操〟を取り入れるなど、多職種が一丸となって患者さんのADL(日常生活動作)改善を図り、在宅復帰の促進に努めている。
多職種一丸で在宅復帰促進
デイルームで“いきいき体操”
同院は同病棟の入院患者さんに対し、リハビリテーション科のPT、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)によるリハビリ以外にも、看護スタッフ(看護師、看護補助者)が体操やレクリエーション、歩行練習、デイルームでの食事などを通じ生活リハビリを行っている。
しかし、これまで生活リハビリに関しては確立したプログラムがなく、また実施状況にばらつきがあり、アウトカム(成果)を評価できないことが課題だった。
「このような状況を改善するため、患者さんの離床時間を増やしADLを改善する生活リハビリの標準化を目的とした『病棟リハビリプログラム』を作成しました。看護スタッフが入棟時から退院時まで毎日、同プログラムに基づいた生活リハビリを患者さんに提供しています」(大河治子・看護部長)
病棟リハビリプログラムでは、①デイルームまたは自病室でいすや車いすによる座位で食事、②同院オリジナルの〝いきいき体操〟、③PT・OTが患者さんごとに作成した病棟内で実施できる生活リハビリのメニュー(病棟廊下やスタッフステーション周囲での歩行練習、足踏み体操、トイレ移動、トイレ動作など)に取り組む。病棟内に備え付けている「地域包括リハビリ表」に記載し一元的に管理、実施状況を可視化している。
いきいき体操は音楽に合わせ体を動かす上下肢の運動を中心とした体操だ。座ったまま行うことができる。梶原正章院長やPT、看護師がモデルとなった見本の動画も作成した。コロナ禍以降は3密(密閉、密集、密接)を避けるために、グループ分けして行うなど感染対策にも気を配りながら取り組んでいる。
生活リハビリの一環で植木鉢に水やりする入院患者さん
楽しみながらレクリエーションに取り組む患者さん
患者さんが自主的に歩行訓練することもあるため、病棟の廊下やスタッフステーションの周囲には、歩行距離が目視でわかるよう10mごとに目印を付けた。達成感を実感しやすく、リハビリに対する意欲の向上につながっている。
また、アウトカムを評価するため、入棟時と退院時にバーセルインデックス(BI)による評価を実施。BIはADLの評価指標のひとつ。日常生活を送るうえで必要な基本的能力を把握するため、食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、着替え、排便コントロール、排尿コントロールの10項目(すべて自立の場合は100点)の動作に関し、それぞれ自立度や要介助度を判定基準として点数化し評価を行う。退院先や家族とその情報を共有し連携を強化、療養生活の継続に役立ててもらっている。
同院は急性期を脱し地域包括ケア病棟に入棟した65歳以上の患者さんを対象に、2019年8月に病棟リハビリプログラムを開始。開始後約2カ月間のデータを集計したところ、半数強の患者さんが、BIの合計点が5点以上改善。約4割は15点以上改善した。トイレ動作や入浴動作、歩行、車いすとベッド間の移動、食事などで改善の度合いが大きかった。
大河・看護部長は「数値で表れるBIの改善以外にも、体操や歩行練習に積極的に参加する患者さんが増えたり、患者さんの離床時間が増えたりしました。また、病棟リハビリプログラムの運用により、離床を促すスタッフの意識が高まるなど効果もでています」と手応えを示す。
患者さんのADL改善や在宅復帰をサポートするため、今後も多職種が一丸となって尽力していく考えだ。