徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

篠崎 伸明(しのざきのぶあき)医療法人沖縄徳洲会副理事長 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)院長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

篠崎 伸明(しのざきのぶあき)

医療法人沖縄徳洲会副理事長 湘南鎌倉総合病院(神奈川県)院長

2020年(令和2年)10月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1259

徳洲会は1,600人超のコロナ患者さん治療
「断らない医療」に実直に向き合った表れ
つねに新しいことにチャレンジする大切さを再認識

徳洲会グループでのコロナ患者さんの入院治療は、10月中旬時点で1600人を超えました。これは日本の累計感染者数の約1・8%に当たります。各徳洲会病院がそれぞれの地域で、その役割を果たし、「断らない医療」という徳洲会のミッションに、実直に現場が向き合い実践している結果の表れです。

コロナ専用病棟を支え 運営する若き医師たち

「私でよければ、コロナ病棟の治療に入りますよ」、「月に2回なら当直に入れます」、「日曜日でよければ診療にかかわれます」、「発熱外来なら入れます」、「自分は外科医だけど医師だから、必要とされたら一生懸命に応えるよ」――。そう言ってくれる多くの中堅の医師たちによって、神奈川県の臨時医療施設(180床のコロナ専用病棟)は運営されているのです。40歳前後の医師たちが自ら声を上げ、率先してかかわる姿を見て、私は彼らを誇らしく思います。集中治療部、ER(救急外来)/救急総合診療科、ベトナムから入職を希望してきた医師、総合内科、総合診療科、外科、病理診断部、麻酔科、脳神経外科など多くの診療科・部門によって勤務シフトが構成されています。次代を担う彼らが、将来の当院を担っている光景が目に浮かびます。

彼らはコロナ病棟で2つの治療薬の治験と4つの臨床研究も行っています。このコロナ病棟を支えているのが発熱外来で、循環器科、消化器病センター、外科、血液内科、心臓血管外科、脳神経外科、形成外科、糖尿病内分泌内科、脳神経内科、脳卒中診療科、リウマチ科、さらには地域の診療所の先生方など多くの医師が応援しています。

通常業務を行いながらコロナ病棟や発熱外来に行き、患者さんに寄り添い、話を聞き、治療し、時には患者さんとのお別れに悲しみ、診療を続けています。医療者としての性分、情熱、感性がそうさせていると私は思います。そして感染対策チーム(ICT)、看護師、コメディカルがそれぞれの分野で力を発揮し、事務職が全体の下支えをする。このハーモニーがチーム医療であり、最善の医療を提供できる体制となります。このような〝熱い医療者たち〟が育っていく徳洲会、当院にしたいと思っています。そのためにはつねに新しいことに取り組み、患者さんを断らず、〝生命だけは平等だ〟の理念を実直に実践していくことが重要です。このような文化の醸成には、リーダーが率先垂範し、夢を語り、職員のモチベーションを上げ、新しいことに挑戦できる風土をつくることが不可欠です。組織が拡大し成熟化しても、新しいことにチャレンジする、イノベーション(革新)を起こすことの大切さをコロナ病棟の運営によって再認識しました。

コロナ病棟から本院へ イノベーション発信も

コロナ病棟で新しい取り組みをスタートできました。それは退院時のアンケートにICT(情報通信技術)を使用し、リアルタイムにデータを収集、分析、介入することです。感染管理上、コロナ病棟では全室にiPadを備え付けています。このiPadに病院独自に作成したシステムをインストールし、退院時アンケートを実施。タイムリーに改善しなければならないことを把握できました。この試みは今後、病院本体でも実践する予定です。

さらに退院後、日常生活に戻られた患者さんの生活上の実体験についても、患者さんから情報収集を行う取り組みも始めます。これはPatient Reported Outcome Measures(PROMs)で、退院後の患者さんの経験によるアウトカム(結果)測定を言います。退院後、本当にQOL(生活の質)が改善しているか、たとえば退院後、「階段を上れなくなってしまった」、「味覚障害が残っている」、「呼吸がまだ苦しい」など、日常生活での結果を客観的に報告してもらい、診療プロセスを改善する試みです。患者さんの主観的な声(たとえば「医師はわかりやすく病状を説明しましたか」などの質問に対する回答)と、退院後の生活上での客観的な結果を報告していただき、この両方のデータを使用することによって、診療サービスやプロセスを改善していきます。来院する患者さんの〝数〟にあぐらをかくことなく、「また来たい」と思っていただけるよう、医療のアウトカム、サービスともに質の高い病院を目指します。

今後も全国の徳洲会の施設が患者さんのために新しいことにチャレンジし、社会的イノベーションを起こすために、皆で頑張りましょう。

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