2019年(令和元年)10月14日 月曜日 徳洲新聞 NO.1206 一面
「Master Clinical Operator Award」
心臓カテーテル治療領域で世界最高峰
齋藤・湘南鎌倉病院総長が受賞
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の齋藤滋・総長兼循環器科主任部長は9月27日、インターベンション治療(カテーテルを用いた治療)を行う医師として最も栄誉あるGeoffrey O. Hartzler Master Clinical Operator Award(ハツラー記念カテーテル治療名人賞)を受賞した。同賞は、経皮的冠動脈形成術(PCI)の開拓者である米国のジェフリー・ハツラー医師(2012年に逝去)にちなみ、米国の心臓血管研究財団(CRF)が09年に創設。インターベンション治療領域で世界最高峰の賞であり、高い技術をもち革新者として世界的に活躍した医師に贈られる。過去に日本人の受賞歴はあるが、単独での受賞は初。また齋藤総長は15年にEthica Award (エチカ賞)という同領域に関する欧州最高峰の賞を受賞しており、ダブル受賞は日本人で初めて。
Ethica Award とダブル受賞は日本人初
トロフィーを手に満面笑みの齋藤総長(中央)。レオン医師(左)、ストーン医師
受賞理由は、齋藤総長が長年にわたり世界各国でCTO(慢性完全閉塞疾患)の治療や、TRI(経橈骨(とうこつ)動脈冠動脈形成術)の手技普及に尽力したことに加え、薬剤溶出性ステントや生体吸収性ステント、TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)、MitraClip(経皮的僧帽弁接合不全修復システム)など多数のデバイス(医療機器・材料)について臨床研究・試験を行い、日本国内での承認取得に注力したことなどが高く評価された。
授賞式は米国サンフランシスコで現地時間9月27日午前に行われた。同月25日から5日間開催されたインターベンション治療領域で世界最大規模のTCT(経カテーテル心血管治療学会)2019の主要プログラムのひとつとして実施された。
会場は、国際会議施設であるモスコーンセンターにある3000人収容可能なメインアリーナ。前方の巨大スクリーンに、これまで齋藤総長が交流してきた世界各国の著名な循環器内科医が受賞をたたえるビデオメッセージが、授賞式直前まで上映され、会場の雰囲気を盛り上げた。
質疑応答の場面では診療時の心構えなど開陳
授賞式ではまず、質疑応答のセッションが設けられ、プレゼンターであり、米コロンビア大学に所属するインターベンション治療の泰斗であるマーティン・レオン医師とグレッグ・ストーン医師が、齋藤総長に診療時の心構えなどを質問。
齋藤総長は1999年、TRIを施行した困難症例のライブデモンストレーションを日本からTCTの会場へ2時間中継。レオン医師は目の当たりにした齋藤総長の手技と見事な結果に衝撃を受けたことを今でも覚えており、当時のライブデモに言及しながら「どのような心構えで難しい症例の治療に臨んでいるのですか」と質問を投げかけた。
これに対し齋藤総長は「私もはっきりと覚えている症例です。それは私にとって、とても大きなチャレンジでしたし、大きなストレスのかかる症例でした。私はそのようなストレスフルな状況で、いつも自分に言い聞かせていることがあります。『特別なことは何も望まない』、『できないことはできない』、『自分にできることはすべてできる』ということです」と応じ、聴衆の拍手を浴びた。
国内外の医療機関に出向き治療と技術指導に尽力(写真はバングラデシュの病院)
また、このなかで齋藤総長は「この歴史的な賞の受賞は、私にとって大変な栄誉なことです。ここまで来ることができたのは、これまで私の活動を支えてくれたすべての方々、多くの患者さんたち、同僚、家族、そして医療の世界で働いているすべての方々の助けによるものです」と謝意を表明。この後、レオン医師とストーン医師からトロフィーが授与され、盛大な拍手のなか授賞式は終了した。
齋藤総長は今後も先端的な治療に積極的に取り組みながら、湘南鎌倉病院での診療を軸に世界中の患者さんの治療に注力するとともに、若手医師の育成・教育活動にも尽力していく考えだ。