徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)9月9日 月曜日 徳洲新聞 NO.1201 一面

長寿の秘密解明へ臨床研究成果
奄美群島95歳以上に特徴的な腸内細菌叢
藤田・徳之島徳洲会病院院長らが特定

長寿の秘密は腸内細菌にあり――。徳之島徳洲会病院(鹿児島県)の藤田安彦院長らは「奄美群島に在住する長寿の島民の腸内細菌叢(そう)と健康状態の関係」をテーマに臨床研究を行い、奄美長寿者がもつ特徴的な腸内細菌叢を突き止めた。この研究成果を第19回日本抗加齢医学会総会、第23回腸内細菌学会でそれぞれ発表し、参加者から大きな注目を集めた。奄美長寿者を対象にした腸内細菌叢の研究は初めてで、今後は同群島内の各年代の腸内細菌叢との比較解析を行い、奄美長寿者と腸内細菌叢との関係をより明確化する方針。

学会参加者から注目の“的”

「徳洲会内外の関係者に研究協力いただき感謝します」と藤田院長「徳洲会内外の関係者に研究協力いただき感謝します」と藤田院長

臨床研究は徳之島徳洲会病院、名瀬徳洲会病院、喜界徳洲会病院、瀬戸内徳洲会病院(すべて鹿児島県)、全薬工業、岡山大学大学院環境生命科学研究科が共同で行った。

奄美地方は「長寿の島」とも呼ばれ、「独自の文化と食生活」に育まれた特徴的な腸内細菌叢が奄美群島の長寿者の健康を支えてきた可能性に着目。奄美大島、徳之島、喜界島に住む95歳以上の奄美長寿者の自然排泄(はいせつ)後の糞便を採取、腸内細菌叢の解析を行い奄美長寿者の細菌叢の特徴と健康状態との関係を明らかにすることを目的に臨床研究を実施した。

背景情報① 奄美群島の立地と人口背景情報① 奄美群島の立地と人口

藤田院長は「たとえば徳之島では当時の長寿世界一として120歳の泉重千代さんや、116歳の本郷かまとさんらがおられました」と長寿の島を強調。調査実施地域の奄美大島、徳之島、喜界島の100歳以上の人口は2015年時点で10万人当たり136・75人と、全国平均48・45人を大きく上回っている(厚生労働省統計)。

奄美群島の郷土料理としては「ニガウリの梅肉和え、ハンダマの白和え、フルイキ(葉ニンニクと豚三枚肉の炒め物)、豚肉とフダンソウの味噌煮、パパイヤの醤油漬け、ヘチマの味噌炒め、コサンダケの天ぷら、島ラッキョウ、ミキ(サツマイモ発酵飲料)など多数あり、タンパク質、各種ビタミン、リノール酸、カルシウム、マグネシウム、カリウム、植物繊維、ポリフェノール、亜鉛、不飽和脂肪酸などを多く含んでいるのが特徴です」と藤田院長は独自の食文化を説明する。

結果① 腸内細菌叢(門レベル)の比較:日本人既知データvs奄美長寿者結果① 腸内細菌叢(門レベル)の比較:
日本人既知データvs奄美長寿者

結果② 奄美長寿者に特徴的な腸内細菌結果② 奄美長寿者に特徴的な腸内細菌

臨床研究は徳洲会グループ共同倫理審査委員会と岡山大学生命倫理委員会の承認を得て、徳之島徳洲会病院、名瀬病院、喜界病院、瀬戸内病院のいずれかに通院または入院経験がある奄美長寿者を対象とした。同意を得た95歳以上の44人(女性40人、男性4人、平均年齢98・3歳)から採取した糞便を試料として16SrRNA遺伝子(V3-V4可変領域)の相同性解析にもとづく腸内細菌叢解析を行った。さらに奄美長寿者の健康状態を基に層別解析を行い、奄美長寿者の腸内細菌叢の特徴と健康状態との関係を検討した。

その結果、国内の既知のデータと比較し奄美長寿者の腸内細菌叢は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、メタノブレビバクター(Methanobrevibacter)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属の細菌が比較的高い占有率を示していることがわかった。また奄美長寿者の腸内細菌叢は比較的高い多様性を有していた。

一方、健康状態の悪化にともない、多様性が減少するとともにビフィドバクテリウム属、アッカーマンシア属、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、プレボテラ(Prevotella)属の細菌の占有率が低下し、メタノブレビバクター属、エガセラ(Eggerthella)属の占有率が増加していることが確認できた。

藤田院長は「奄美長寿者の腸内細菌叢は比較的高い多様性を有していることがわかりました。また奄美長寿者の腸内細菌叢で、健康状態の悪化にともなって占有率が増加あるいは減少する菌属があることも判明しました。これらの特徴が奄美群島の健康長寿に寄与している可能性があります」と考察。

とくにアッカーマンシア属は腸管ムチン層に生息する腸管バリア機能に重要な共生菌で、占有率の低下と生活習慣病発症の関連が指摘されるなど、腸内細菌分野では最も注目されている細菌だ。

一方、日本人の腸内にはほとんど存在せず、欧米人に多いと言われている古細菌のメタノブレビバクター属は、奄美群島の地域性を反映している可能性が示唆された。「奄美群島の長寿と腸内細菌叢との関係をより明確にするためには、奄美群島内の各年代の腸内細菌叢との比較解析が今後の課題です」と藤田院長はさらなる研究に意欲を見せている。

全薬工業創薬研究部ヘルスケア研究室の永田岳史・主席研究員は「今後も徳洲会病院との共同研究を通じ、奄美群島の健康長寿を支える腸内細菌の特徴をより明らかにし、奄美地方や健康社会に貢献していきたい。奄美長寿者の腸内細菌の特徴に近づけるような健康食品の開発や、研究成果を直接的に製品開発につなげることを最終目標にしています」と抱負を語っている。

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