直言
Chokugen
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直言 ~
藤田 安彦(ふじたやすひこ)
徳之島徳洲会病院院長(鹿児島県)
2019年(令和元年)9月9日 月曜日 徳洲新聞 NO.1201
徳之島は出生率が日本一高く、子宝と長寿の島です。長寿では世界一になったことがある人物として、泉重千代(しげちよ)さん(享年120、1986年没)、本郷かまとさん(享年116、2003年没)がおられました。また奄美群島の郷土料理にはヘチマの味噌炒め、コサンダケの天ぷら、島ラッキョウ、フルンガブ(ニンニク)のきび酢漬け、タイモ、コーシャ、アカウルメの唐揚げ、エラブチの刺身、ヒキの唐揚げ、ヤコウガイ、豚耳皮(ミミガー)の酢味噌和え、マダ汁、ミキ(サツマイモ発酵飲料)、豚足の唐揚げ、地豆のぐじる、山羊の刺身などがあります。これら食品 には栄養成分から見てもタンパク質、各種ビタミン、リノール酸、カルシウム、マグネシウム、カリウム、植物繊維、ポリフェノール、亜鉛、不飽和脂肪酸などが多く含まれています。
奄美群島の「独自の文化と食生活」に育まれた特徴的な腸内細菌叢(そう)が、長寿者の健康を支えてきた可能性があります。そこで奄美大島、徳之島、喜界島に住む95歳以上の奄美長寿者の自然排泄(はいせつ)後の糞便を採取し、腸内細菌叢の解析を行い、奄美長寿者の細菌叢の特徴と健康状態との関係を調査することを目的とした研究を実施しました。奄美長寿者44人から試料を集め、細菌叢解析を行ったところ、奄美長寿者の腸内細菌叢の特徴として、比較的高い多様性を有していることがわかりました。また、健康状態の悪化にともなって、占有率が増加あるいは減少する菌属がありました。これらの特徴が奄美群島の健康長寿に寄与している可能性があります。
奄美群島の長寿と腸内細菌叢との関係をより明確にするためには、奄美群島内の各年代の腸内細菌叢との比較解析が今後の課題と考えます。
また腸内細菌学会のホームページを見ると、次のような説明があります。「脳と腸は自律神経系や液性因子(ホルモンやサイトカインなど)を介し、密に関連していることが知られている。この双方向的な関連を“脳腸相関(のうちょうそうかん)”または“脳腸軸(のうちょうじく)”と言う。つまり、消化管の情報は神経系を介して大脳に伝わり、腹痛・腹部不快感とともに、抑うつや不安などの情動変化も引き起こす。そして、これらの情動変化が副腎皮質刺激ホルモン放出因子や自律神経を介して消化管へ伝達され、さらに消化管の運動異常を悪化させる」。
私は徳之島出身で、1985年に島根医科大学を卒業し、大学病院、横須賀共済病院、東京西徳洲会病院、喜界徳洲会病院を経て2014年9月に徳之島徳洲会病院院長として帰郷しました。病院を建て替えたいと熱望しながら5年が過ぎています。この間、徳洲会グループ内外の先生、当院内の先生、職員、地域の皆さんに支えられ、ここまで仕事が継続できています。都会では味わえない島の暮らしや、一年中温暖な気候・風土、島の人たちの気質、郷土愛、マリンスポーツなど島外から来られたら感激すること請け合いです。
当院には島の魅力に引かれ2回、3回と戻ってきてくれる応援の看護師やコメディカル、また長年住み続けてくれる方たちが多数います。人情が厚く、情熱的で、闘牛に一生懸命になる島でもあり、迫力ある牛同士の闘いは必見です。「離島医療に貢献したい、離島医療に興味がある」方がいましたら、ぜひ当院へお越しください。素晴らしい出会いが待っています。
ところで、キューバではプライマリケアが重視され、それを地域で担う家庭医制度が進められています。同国は貧しい国ですが、医療費は無料で、大都市から過疎の山村まで福祉・医療が行き届き、乳幼児死亡率は米国以下、平均寿命も先進国並みです。同国の医療技術は高く、脳外科や心臓移植、骨髄移植など治療体制も整っています。医師数は1000人当たり6・5人ですが、3分の1は開発途上国や被災国のための医療援助で国外に出ており、実質1000人当たり4人程度ですが、それでも日本の約2倍です。ラテンアメリカやアフリカの貧しい国に対し医師や医療技術者を派遣し、多大な医療援助をしてきた歴史があり、2008年の医療支援対象国は81カ国に上ります。徳洲会も将来、離島・へき地のみならず、世界の恵まれない地域にも、多くの医師を派遣できるようにすることが私の夢です。皆で頑張りましょう。