徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)8月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1199 一面

湘南藤沢病院
動的ターゲットの照射に強み
高精度放射線治療装置Versa HDを導入

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)は高精度放射線治療装置Versa(バーサ) HDを新たに導入した。高線量での照射が可能であることから、照射時間や回数を減らすことができ、患者さんの負担軽減に寄与。また、放射線を照射しながら、治療計画どおりに照射できているかを確認するCT(コンピュータ断層撮影装置)画像を同時に撮影する機能や、がんの形状に合わせた精度の高い照射、呼吸にともなう体動を考慮した照射機能なども備えており、高品質な放射線治療の提供に貢献する。同装置を用いた放射線治療は8月からスタート。徳洲会グループ病院では初導入。

徳洲会グループ病院で初めて

新たなエリアで活動を展開する京田辺訪看STスタッフ(前列左から川本看護師、高畠管理者、浜井看護師)。後列は宇治病院の(左から)森山主任、塩山課長、葛西・副看護部長 高精密度放射線治療センターのスタッフ(右から3人目が永野・主任部長)

Versa HDはIMRT(強度変調放射線治療)やVMAT(強度変調回転照射)といった先進的な照射技術に対応。IMRTは、放射線が出るガントリという部分を段階的に動かし、同時に照射野(放射線を当てる範囲)の形状を変化させながら照射する高精度な治療法を言う。強弱を付けた放射線を多方向から照射することで、腫瘍への集中的な照射を行う一方、周囲の正常組織への不要な照射を低減できる。

IMRTは照射の瞬間にガントリが静止するが、VMATはガントリを動かしたまま照射する技術。よりスピーディな治療が可能。できるだけ患者さんに負担が少なく効果的な治療を提供するために、同院は従来からIMRTやVMATに積極的に取り組んでいる。

IMRT やVMAT に対応するVersa HD IMRT やVMAT に対応するVersa HD

同院は2台の放射線治療装置を運用。このうち1台は2012年の新築移転時に導入したノバリスTxという高性能放射線治療装置で、IMRTやVMATに対応。この8月からは既存の装置1台とVersa HDを入れ替え、ノバリスTxとの2台体制に移行した。

同院高精密度放射線治療センターの永野尚登・主任部長は「照射野の広いVersa HDは5㎝程度の動的ターゲットへの照射に強みを発揮し、幅広いがん種に対応します。一方、ノバリスTxは1㎝程度の小さな静的ターゲットへの照射を得意としています。それぞれの特徴を生かし、VersaHDでは肺や肝臓、膵(すい)臓など主に体幹部の腫瘍の治療を行い、ノバリスTxは主に脳腫瘍の治療に用います」と説明。現在、永野・主任部長を含め3人の常勤医と、7人の診療放射線技師(このうち1人は医学物理士)で放射線治療に取り組む。

Versa HDは呼吸同期システムが備わり、呼吸にともなう体動があっても腫瘍以外の組織への照射やエラーを低減できる。「照射に合わせて呼吸を止める必要がありません。その分、負担が小さく、患者さんに優しい治療です」(永野・主任部長)。

表 湘南藤沢病院の放射線治療実績 表 湘南藤沢病院の放射線治療実績

同装置は出力が高く、高線量の放射線治療を行えるのも特徴。1400~2200MU(monitor unit=放射線照射の単位)/分の照射が可能で、たとえば前立腺がんであれば、2Gy(グレイ)(線量の単位)×40回の照射を、7Gy×5回にまで減らすことができるという。1回当たりの線量を増やして回数・総線量を減らし、治療期間を短縮することを寡分割照射と呼ぶ。回数・総線量を減らしても同等の治療効果を期待でき、通院期間の短縮や副作用の期間短縮にもつながる。

放射線治療室の天井と床には、患者さんの位置決め用のX線撮影装置を埋め込んでおり、治療台に患者さんが横になった時、事前に撮影したCT画像と、X線撮影した画像を照合。ずれがあるとコンピュータが検出し、微調整が可能だ。治療台と台座をそれぞれ動かし、適切なポジションとなるよう傾きを修正できる。姿勢を変えるのもつらいがん性疼痛(とうつう)など患者さんの苦痛軽減に寄与する。

なお、肝臓などX線撮影では評価が難しい部位は、ガントリに付属したCT装置を用いて位置決めを行うことができる。

永野・主任部長は「患者さんに負担が少なく精度の高い世界レベルの放射線治療を提供していきたい」と意気込んでいる。

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