徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)7月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1195 四面

脳死下臓器提供1例目を実施
札幌東病院
「ご家族の思いに応えたい」

札幌東徳洲会病院は脳死下臓器提供の1例目を実施した。患者さんは60代の男性で、ドナー(臓器提供者)として肝臓と腎臓を提供、道内の移植施設に運ばれ、移植手術は成功裏に終了した。同院の臓器提供検討委員会委員長を務める瀧健治・集中治療センター長は「1例目でしたが、これまで準備してきたことを生かし、問題なく実施できました。社会に貢献したいというご家族の思いに応えられて良かったです」と話している。

今後も定期的な模擬練習を

「脳死判定は医療施設のレベル評価に」と瀧センター長(写真は臓器提供講演会) 「脳死判定は医療施設のレベル評価に」と瀧センター長(写真は臓器提供講演会)

同院では院内の倫理委員会を経て、2018年1月から多職種による臓器移植ワーキンググループで作業を開始、書類の整備や手順書の確認、院外での勉強会・講習会などに参加した。同年10月に臓器提供検討委員会を設置、太田智之院長からの指名を受け、委員長に瀧健治センター長、副委員長に三澤学・整形外科外傷センター麻酔部門部長が就任した。

脳死下臓器提供を実施できる施設の条件は、①臓器摘出の場を提供するなどのために必要な体制が確保されており、当該施設全体について、脳死した者の身体からの臓器摘出を行うことに関して合意が得られている。なお、その際、施設内の倫理委員会などの委員会で臓器提供に関し承認が行われている、②適正な脳死判定を行う体制がある、③救急医療などの関連分野で、高度医療を行う施設(大学附属病院、日本救急医学会の指導医指定施設、日本脳神経外科学会の基幹施設または連携施設、救命救急センターとして認定された施設、日本小児総合医療施設協議会の会員施設)。

「ひとつの大きな流れができました」と三澤部長(写真は臓器提供講演会) 「ひとつの大きな流れができました」と三澤部長(写真は臓器提供講演会)

同院の場合、施設条件の「日本脳神経外科学会の基幹施設または連携施設」に該当し、小児(18歳未満)の患者さんは対象外となる。

体制整備がひととおり終了した今年1月、脳死下臓器提供に関する知識を深め、院内で共有することを目的に、有識者を招き臓器提供講演会を開催。北海道大学病院先進急性期医療センター救急科の早川峰司講師が「脳死下の臓器提供は選択肢のひとつでしかない」、同大学病院臓器移植医療部の嶋村剛部長・診療教授が「北海道における臓器移植医療の現状」、日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野の横田裕行教授が「救急・脳外科施設からみた脳死下臓器提供の課題と取り組み」をテーマにそれぞれ講演した。

さらに3月、外部講師を招き脳死判定シミュレーションを実施。トレーニングマネキンを使い、作成した手順書をもとに脳死判定を行い、実践的に学んだ。こうした準備を重ねていた矢先の5月、ひとりの患者さんが救急搬送されてきた。

不安視する声があるも2年の準備期間を信じ

脳死判定の様子 脳死判定の様子

搬送時すでに患者さんは脳死と判定され得る状態と予想された。それでも、できる限りの医療を施したが、改善の見込みはなかった。家族と今後について相談したところ、家族は臓器提供の意思を提示。太田院長が臓器提供検討委員会を緊急招集した。

瀧センター長は当時の状況を「院内には不安視する声もありましたが、恐らく、どれだけ準備しても1例目は緊張するもの。これまで準備してきた約2年間を信じ、ご家族の意思に応えたいと考えました」と振り返る。

家族からの臓器提供の意思に加え、患者さん本人の「臓器提供をしたくない」という意思がないことを確認し、脳死判定の実施を決めた。

脳死判定は2人以上の判定医で実施、少なくともひとりは第1回目と第2回目の判定を継続して行う。第1回目の脳死判定が終了した時点から6歳以上では6時間以上、6歳未満では24時間以上を経過した時点で第2回目の脳死判定を実施。両方の脳死判定で、規定されたすべての項目が満たされた場合に脳死と判定、死亡時刻は第2回目の判定終了時刻となる。

今回は初めてということもあり、瀧センター長と三澤部長が第1回目、第2回目の両方に参加、さらに第1回目には佐藤正夫・脳神経外科部長と増井伸高・救急センター部長、第2回目には丸藤哲・救急センター顧問兼侵襲制御救急センター長と松田知倫・救急センター副センター長がそれぞれ参加し、4人体制で臨んだ。家族に不快な思いをさせないために、役割のない院内の見学者は同席させなかった。

第1回目、第2回目ともに手順書どおりに脳死判定を行い、脳死判定委員会から臓器提供検討委員会に結果を報告。最終的に太田院長が脳死を宣言した。瀧センター長は「判定医の責任は重大です。今回は勉強の意味も込めて4人体制で臨みましたが、今後はより少人数で対応できるようにしていきたいと思います」と展望する。

ベストな医療の実施に努めているのが大前提

脳死判定後に臨時の臓器提供検討委員会を開き反省会 脳死判定後に臨時の臓器提供検討委員会を開き反省会

1例目を終え三澤部長は「ひとつの大きな流れができました。ただし、院内の情報共有や役割分担など細かい課題が浮き彫りになりましたので、もっとスムーズにできるように詳細なフローを詰めていきたいと考えます」と意欲的。

太田院長は「初めてで緊張したと思いますが、スタッフはよく動いてくれました」とねぎらったうえで、「こちらが想定した以上に、臓器提供の意思を示す方はおられるのかもしれません。その思いに応えること、これが一番重要です」と吐露する。

6月に入り、日本臓器移植ネットワークのコーディネーターが同席したうえで、臨時の臓器提供検討委員会を開き反省会を実施した。その席上で瀧センター長はあらためて「脳死判定は医療施設のレベル評価にもつながります。ベストな医療の実施に努めていることが大前提です」と強調。さらに「一人ひとりのスタッフが自信をもって自分の仕事をしてください。2例目が、いつ来てもあわてず余裕をもって対応できるように、定期的にシミュレーションを行い準備していきましょう」と訴えた。

PAGE TOP

PAGE TOP