2018年(平成30年)8月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1146 三面
日本病院学会
中川・野崎徳洲会病院院長
ピアレビューで口演
第68回日本病院学会が6月28日から2日間、石川県金沢市で開催され、野崎徳洲会病院(大阪府)の中川秀光院長が「徳洲会病院グループにおけるMonthly Peer Review の試み」をテーマに口演(口頭発表)した。徳洲会のピアレビューは、グループ病院の「手術手技に対する評価」を行い、医療の質や医療安全の向上を図るのが狙い。全国的にも取り組み事例が少ないことから注目を集めた。このほか徳洲会グループから2演題の発表があった。
医療の質・安全の向上に寄与
ピアレビューの取り組みを発表する中川院長
中川院長は徳洲会グループピアレビュー実行委員会の事務局長を務めている。共同演者として、一般社団法人徳洲会の鈴木隆夫理事長、安富祖久明・副理事長、福島安義・副理事長、医療法人徳洲会の東上震一・副理事長、医療法人沖縄徳洲会の篠崎伸明・副理事長が名を連ねた。いずれもピアレビュー実行委員会メンバーだ。
徳洲会のピアレビューは、具体的には①手術(外科手術、血管内治療、内視鏡、カテーテル治療)、②手術時の合併症(6項目)、③輸血の有無、④入退院時のADL(日常生活動作)の差、⑤平均在院日数、⑥転帰(死亡の有無)、⑦再入院率、⑧手術後の患者満足度――の計8評価項目を、一定の基準に基づきポイント化、合計点で評価する。
たとえば①手術では症例ごとに、外保連(外科系学会社会保険委員会連合)手術指数に基づく術式の難易度や手術時間を、客観的な基準でポイント化する。
中川院長が徳洲会脳神経外科部会の部会長も務めていることから、昨年4月、同科領域でピアレビューを試行的に開始。今年4月から対象診療科を9科に拡大した。
代行入力の承認率向上を発表する氏原副主任
ピアレビューの対象病院は徳洲会グループ病院のうち、手術など侵襲的治療を行い、かつ電子カルテを導入しているDPC(診断群分類別包括評価)病院。対象となる診療科(カッコ内は対象病院数)は外科(48)、心臓・血管外科(24)、産婦人科(25)、脳神経外科(30)、整形外科(47)、泌尿器科(29)、眼科(21)、循環器内科(39)、消化器内科(46)だ。
「当グループのピアレビューによる評価は、病院間の競争をもたらすものではなく、評価項目のそれぞれを徳洲会グループのベンチマーク(指標)と比較し、各病院の潜在的な課題を顕在化させ、“医療安全の向上”と“医療の質の向上”を推進することが目的です」
ピアレビューで課題が見つかった場合、病院ごとに設置したピアレビュー結果検討委員会で改善を検討。院内のみの対応で難しければ、グループ横断的に設置した診療科ごとのピアレビュー評価委員会や、実行委員会から解決策を提示する。中川院長は「今後も取り組みを継続し、評価・運用方法などブラッシュアップしていきたい」と結んだ。中川院長は9月にスイスのベルン市で開催される第7回世界臨床安全学会、10月に東京で開かれる第60回全日本病院学会などでも同様の発表を行う予定だ。
岸和田徳洲会病院(大阪府)診療情報管理室の氏原悦子副主任は「代行入力における医師の承認率向上を目指して」をテーマに口演。同院では医師の指示により関係職種がオーダー(検査や投薬などの指示)を代行入力することがある。入力後は医師の承認作業が求められているが、実際には承認が滞ったり、運用ルールの周知が不足したりと問題があった。
対策として、承認が滞っている医師への督促、すべての常勤医への継続的な周知などに取り組んだ。その結果、未承認率が大幅に減少するなど改善した。氏原副主任は「承認作業への理解から、督促を要する医師が減り、こまめに承認作業する医師が増えてきました」とまとめた。
札幌徳洲会病院の松野玉枝・看護部長は「電子カルテ用音声入力システムを使用した看護記録時間の変化」と題しポスター発表。看護記録の記載業務が看護師の超過勤務時間の多くを占めていたことから、効率化のため電子カルテ用音声入力システムを導入。12人の看護師を対象に看護記録時間の変化を調べたところ、大きな変化はなかったものの、「音声入力システムへの慣れなどにより、時間短縮を図れる可能性があります」とまとめた。