徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)8月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1146 四面

読み解く・読み得“紙上医療講演” ⑰
救急車を上手に使おう!

今回は「救急車の利用」がテーマです。救急車を呼ぶ、呼ばないの基準・判断は、医療職以外の方々にとって難しいこともあるでしょう。呼ぶべき時に呼ばないのでは症状を悪化させ、最悪の場合は助かる命を落としてしまいます。一方でタクシー代わりの利用が問題となっています。救急車は、患者さんと医療機関を結び付ける大切な社会・医療資源で、適正利用が欠かせません。札幌東徳洲会病院の田畑美保・救急看護認定看護師が解説します。

田畑美保・救急看護認定看護師 札幌東徳洲会病院 田畑美保・救急看護認定看護師 札幌東徳洲会病院

救急車の出動件数は年々増えています。当院のある札幌市では2017年度、9万3614件、搬送人数は8万1411人でした。出動件数は前年比2.4%(2188件)増、搬送人数は同2.6%(2028件)増です。5、6分に1回出動し、市民の24人に1人が搬送されている計算です。重症度別の内訳は軽症51.8%、中等症43.2%、重症3.4%、死亡1.5%と、過半数は入院を必要としない軽症でした。

出動件数増加の背景としては、高齢者人口の増加や高齢夫婦世帯、高齢独居世帯の増加などが挙げられます。老々介護が増えている現状をふまえると、今後も救急要請の増加が見込まれます。

では、どのような症状が現れたら救急車を呼ぶべきでしょうか。身体の部位ごとに表に掲げましたので参考にしてください。ここですべてのケースを挙げることは難しいですが、意識障害や痙攣(けいれん)、大量出血をともなう外傷、広範囲の火傷、交通事故や高所からの転落なども救急要請を推奨します。

救急車を呼ぶべき症状の一例(成人)

突然の激しい頭痛
突然の高熱
支えなしで立てないくらい急にふらつく
顔半分が動きにくい、あるいはしびれる
ニッコリ笑うと口や顔の片方がゆがむ
ろれつが回りにくい、うまく話せない
視野が欠ける
ものが突然二重に見える
顔色が明らかに悪い
胸や背中 突然の激痛
急な息切れ、呼吸困難
胸の中央が締め付けられるような、または圧迫されるような痛みが2~3分続く
痛む場所が移動する
手足 突然のしびれ
突然、片方の腕や足に力が入らなくなる
突然の激しい腹痛
持続する激しい腹痛
吐血や下血がある

(出典:東京消防庁)

小児は「激しい下痢や嘔吐(おうと)で水分が摂れず食欲がなく意識がはっきりしない」、「手足が硬直」、「唇の色が紫色で呼吸が弱い」、「頭を痛がり痙攣がある」などの場合も重大な疾患の可能性があるため救急車を呼ぶべきです。

一方、軽症者で救急車を呼んだ理由のなかには、次のように不適切なケースがあります。「水虫がかゆい」、「しゃっくりが止まらない」、「交通手段がないためタクシー代わり」、「待合室で待ちたくなかった」、「無料で病院に運んでもらえる」など。

このようなことが現実にあるのです。救急現場は1分1秒を争います。不適切な利用によって、救急車を必要とする患者さんのもとに到着するのが遅れてしまう事態は避けなければなりません。

救急車を呼ぶ際のポイントを確認しておきましょう。救急車を呼ぶ時はご存じのとおり119番ですが、判断に迷った場合の救急相談窓口があります。成人は♯7119、小児は♯8000です。

また、救急車到着までの応急処置が救命につながることがあるため、行政や医療機関が実施する救命講座を受けるなどして、胸骨圧迫(心臓マッサージ)やAED(自動体外式除細動器)など応急処置の方法を身に付けておくことが望ましいです。また、救急患者さんのご家族は、救急車の到着までに、診察券や保険証、お金、靴・着替え、ふだん飲んでいる薬、乳幼児の場合は母子手帳や哺乳瓶、紙おむつなどを用意しておくと、スムーズな搬送につながります。

救急車到着後には救急隊に、事故や具合が悪くなった状況、救急隊到着までの状態変化、実施した応急処置、持病、かかりつけ医、ふだん飲んでいる薬を伝えましょう。

PAGE TOP

PAGE TOP