2018年(平成30年)6月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1139 三面
徳洲会透析部会
安全対策などで研鑽
全国から100人超が参加
徳洲会透析部会は5月19日、滋賀県内で全国会議を開催した。グループ病院から医師、看護師、臨床工学技士(CE)ら100人超が参加。会議では診療報酬改定、安全対策などをテーマに知見を深めた。
全国から100人超が集まり研鑽し交流
冒頭、部会長を務める湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の小林修三・院長代行が挨拶。「安全対策が第一、さらに優しさ、質の向上を目指すことが大切です。徳洲会グループ全体の透析登録患者数は約5000人。各職種とも責任の大きさを感じていただきたいと思います」と参加者を鼓舞したうえで、「慢性腎不全の治療は血液透析(HD)、腹膜透析(PD)、腎移植がありますが、これら3つの療養選別をしっかりと行い、患者さんに最適な医療を提供してください」と呼びかけた。
この後、徳洲会臨床工学部会の部会長を務める庄内余目病院(山形県)の本間久統・臨床工学科技士長が、2016年と18年に実施した全施設アンケート結果をもとに
「徳洲会グループ・透析の現状報告」と題し発表。全体の登録患者数が2年間で増加する一方、PD患者さんは減少傾向にあり、療養選別のひとつとしてスタッフ教育が必要であることなど報告した。
「安全を第一に考え勉強を惜しまないでください」と小林・院長代行
次に大垣徳洲会病院(岐阜県)の久富俊宏・透析センター副室長が
「診療報酬改定の影響について」をテーマに講演。今回の診療報酬改定ポイントとして、①透析施設の規模によって「人工腎臓」の点数が異なる、②慢性維持透析濾過(オンライン血液透析濾過)に時間に応じた評価体系の導入、③長時間透析(算定条件に合えば6時間以上で加算)の新設――などを挙げ解説した。
午前中の最後は、新庄徳洲会病院(山形県)の新井貴浩・臨床工学科技士長が
「透析システムの今後と現状」と題し講演した。現在、徳洲会では電子カルテ情報と透析情報の一元管理を可能とするグループ標準の新透析システムを構築。この進捗(しんちょく)状況や使い方、試験導入した庄内余目病院と羽生総合病院(埼玉県)の感想など報告。「全施設への展開が望ましいといます」と結んだ。
休憩をはさみ、鹿児島徳洲会病院の嘉納浩文・臨床工学科技士長が、離島の病院やクリニック9施設が回答した透析室の運営状況などに関するアンケート結果を報告。人手不足などを訴える一方、グループ病院からの応援に感謝を示した。
続いて羽生病院、湘南鎌倉病院、神戸徳洲会病院、大隅鹿屋病院(鹿児島県)が
「シャント感染・カテーテル感染」をテーマに事例報告を行った。シャントとは、血液透析を行う際に十分な血液量が確保できるよう、動脈と静脈を体内または体外で直接つなぎ合わせた血管のこと。各病院とも感染が起きた原因や、その対応など報告し、今後の対策として、スタッフの手指衛生の徹底、患者さん自身による自己損傷を防ぐための保護テープの検討などを挙げた。
安全対策としてさらに、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の高木政雄・臨床工学科技士長が
「透析事故事例と安全対策」、湘南鎌倉病院の高室昌司ME室技士長が
「透析用水の管理」と題し講演。
高木技士長は「〝人は誰でも間違える〟を前提に、間違いに至っても障害に至らないようにするにはどうすればよいか考えることが大切です。個人を攻撃し、起こってしまった誤りを責めるのではなく、安全を確保できるシステムを設計し、将来のエラーを減らすように専心しましょう」とまとめた。
次に湘南鎌倉病院の日髙寿美・腎移植内科部長が
「日本における腎移植の現況と当院の取り組み」をテーマに講演した。慢性腎不全に対し、日本は諸外国に比べ腎移植を選択する割合が少ないなど、腎移植に関するデータを紹介。
さらに同院が12年12月に開始した腎移植66例(生体腎移植65例、献腎移植1例)の成績などにも言及した。「腎移植の可能性はいつでも検討できます。今後は献腎移植も積極的に登録を進めていただけるようにお願いします」と呼びかけ、「腎臓内科医の積極的な関与が、腎移植患者さんの予後をさらに良いものにできます」と強調した。
最後に小林・院長代行が総評。20年前の透析に関するインシデント(事故などの発生の恐れがある事態)エピソードに触れ、あらためて「安全が第一です。そのための勉強は惜しまないでください。そして、患者さん一人ひとりの生活、人生を考えた透析医療を行ってください」と力説。「今日は短い時間でしたが、皆さん自身が考える時間をつくりたかった。来年は看護師サイドからの問題提起もしていただきたい」と継続を誓った。