徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)6月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1139 一面

福岡徳洲会病院
がん温熱療法をスタート
化学・放射線療法の効果高める

福岡徳洲会病院は、高周波により、がん細胞を温めて死滅させたり化学療法・放射線療法の治療効果を高めたりするサーモトロンという医療機器を導入、がん温熱療法(ハイパーサーミア)を開始した。同医療機器の導入は徳洲会で初。ハイパーサーミアは保険診療のひとつで、副作用が少ないのが特徴。脳と眼球以外に発生した固形がんに対し実施できる。同院ではハイパーサーミア、化学療法、放射線治療、高気圧酸素治療を組み合わせた集学的治療の提供を通じ、地域のがん医療の向上に一層貢献していく考えだ。

徳洲会グループ初導入の装置

「シームレスな集学的治療で地域のがん医療の向上に貢献していきたい」と成定センター長 「シームレスな集学的治療で地域のがん医療の向上に貢献していきたい」と成定センター長

サーモトロンは、寝台に横になった患者さんを上下の円盤電極ではさみ、ラジオ波という種類の高周波で加温する装置。1990年4月に放射線治療との併用で保険適用となり、その後、化学療法との併用や単独でも保険適用となった。今年3月末時点で全国約90病院・診療所がハイパーサーミアに取り組んでいる。

がん細胞は42~43度以上になると死滅する。この性質を利用したがん治療がハイパーサーミアだ。正常な組織は温められると血管が拡張し、血流が増えて熱を逃がすため、温度上昇は、がん細胞よりも緩やかになる。そのため、がん細胞を選択的に攻撃できる。

温熱療法を行うサーモトロン 温熱療法を行うサーモトロン

今年4月に同院に着任し、前任施設でハイパーサーミアの実績が豊富ながん集学的治療センターの成定宏之センター長は「熱による直接作用は、とくに頭頚(とうけい)部がんの大きなリンパ節転移や大きな甲状腺がん、自壊した乳がんなど体表面に近いがんに対して、より効果が期待できます。こうした直接作用に加え、がん細胞が38~40度前後に温まると、細胞膜の透過性が亢進し、細胞内への薬剤の取り込み量が増え局所濃度が高まり、化学療法の効果が高まります」と説明する。

成定センター長は日本放射線腫瘍学会の放射線治療専門医、日本がん治療認定医機構のがん治療認定医、日本ハイパーサーミア学会指導医などの資格をもつ。

さらに放射線治療に関してもハイパーサーミアを併用することで、治療効果の向上が期待できるという。がん細胞は血流が低下し低酸素状態であることが多く、そのような細胞は放射線の感受性が低いため放射線治療が効きにくい。しかし温度を高めることで、がん細胞に対する放射線治療の増感効果が得られる。ただし放射線治療との併用では42度以上の高温度が必要となるため容易ではないのも事実だ。

左/ 直腸がん膀胱浸潤(赤い丸印内)、肺転移ありと診断された症例の初診時CT画像。<br />右/ 温熱化学療法施行後に放射線治療を行い腫瘍が縮小。初診時から3年経過後のCT画像 左/ 直腸がん膀胱浸潤(赤い丸印内)、肺転移ありと診断された症例の初診時CT画像。
右/ 温熱化学療法施行後に放射線治療を行い腫瘍が縮小。初診時から3年経過後のCT画像

このようにハイパーサーミアには①熱による直接作用、②化学療法、放射線療法の増感作用――といった効果がある。対象となるがん種は肺がんや膵(すい)がん、大腸がん、婦人科がん、乳がん、胃がん、食道がん、頭頚部がんなど、血液がんを除く多くの固形がん。

加温位置の決定はCT(コンピュータ断層撮影)画像をもとに行う。多くは化学療法や放射線治療と同日に施行し、加温時間は50分ほど。体内にペースメーカーがある患者さんや加温部位に金属がある患者さんには実施できない。

「使える抗がん剤を使い尽くして奏効しなくなった進行がんや再発がんの患者さんでも、サウナに入るのと同じくらい発汗がありますので、ある程度の体力があることが前提にはなりますが、ハイパーサーミアを施行することで再び抗がん剤で治療効果が得られることが多々あります」(成定センター長)

“がん難民”解決の一助 オーダーメイド治療提供

放射線治療と化学療法の効果アップにも寄与する高気圧酸素治療装置 放射線治療と化学療法の効果アップにも寄与する高気圧酸素治療装置

より増感作用を高めるために、保険診療である高気圧酸素治療も併用。放射線治療を行う前に高気圧酸素治療を施行し、血中の酸素濃度を上げ放射線による治療効果を高めるのが狙いだ。

標準治療が効かなくなり「治療法がない」として医療機関から見放された患者さんを“がん難民”と呼ぶ場合があるが、こうした患者さんもハイパーサーミアによる増感作用が期待できる場合には治療対象となり得る。同院では一人ひとりの状態に合わせ適切な組み合わせの治療法(オーダーメイドがん治療)を提供。標準治療をベースにしながらもハイパーサーミアや高気圧酸素治療を併用することで、標準治療のみでは得られない治療効果を目指す。

ハイパーサーミアの症例数は治療を開始した4月中旬以降、同月は23例、5月は39例、6月は20日までに29例を実施した。成定センター長が今までに経験してきた症例の中には①直腸がん膀胱(ぼうこう)浸潤、肺転移ありと診断され手術不能の患者さんに、温熱化学療法と放射線治療を実施したところ、腫瘍が消失し治癒と診断。②前医で、標準治療で使われるすべての化学療法の効果がなくなり病状進行となった結腸がん肺転移の患者さんに対し、化学療法、ハイパーサーミア、高気圧酸素治療を施行。腫瘍が縮小し3年以上維持――など他にも多くの奏功例があるという。

周辺地域だけでなく、たとえば山口県や熊本県など遠方から口コミで来院した患者さんもいた。「これまでに確立してきたスキルを生かし、シームレス(切れ目のない)な集学的治療の実践を通じ、地域のがん医療の向上に貢献していきたい」と成定センター長は意気込みを語っている。

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