徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

金香 充範(かねこみつのり)(吹田徳洲会病院院長(大阪府))

直言 生命いのちだけは平等だ~

金香 充範(かねこみつのり)

吹田徳洲会病院院長(大阪府)

2018年(平成30年)6月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1139

大阪府北部地震で対応の不備を実感
理念実現のためにも事前準備が重要
今回の経験生かし「事業継続計画」整備へ

私は毎朝、8時会に出席するため7時59分に院長室を出るのが日課です。しかし、6月18日の朝はいつもと様子が異なりました。ボチボチ会議へと思って準備をしていたら、突き上げるような強い衝撃が床から伝わり、院長室を飛び出し会議室に駆け込みました。8時会に集まっていた医師やコメディカルたちは誰の指示を待つでもなく、各々の判断で瞬時に会議室から走り出し、各部署に向かいました。

これが、後に震度6弱と発表された大阪府北部地震でした。職員たちの動きは機敏で、病棟などの患者さんの容態を確認するため、行動をただちに開始。建物もライフラインも無事でしたが、私は総務課で院内の被害状況に関する連絡を受け、どう対応するかを考えていました。まず、状況把握のために1階の救急外来前にホワイトボードを設置。刻々と集まる情報を書き込み、幹部と相談しながら対策を次々と決定していきました。

地下の調理室から階段使い 350人分もの食事を運ぶ

患者さんは全員無事だったものの、院内ではいくつかの問題が発生。ひとつはエレベーターが地震の揺れにより自動停止していたことです。急いで復旧しようとしましたが、震度6弱の揺れは地震時自動診断&復旧システムの保守員による復旧対応が必要な震度レベル(震度5強以上)でした。ただちにエレベーター会社に、保守員による点検・復旧を依頼しましたが、道路は交通渋滞ならぬ交通停滞しており、一向に到着しません。

こうした状況のため、その日のうちに透析を行わなければならない入院中の寝たきりの患者さんたちを、8階から2階の透析室まで移送する手段がありませんでした。致し方なく、院内にひとつしかない担架を使って階段を何度も往復しました。

一方で、昼食の用意は着々と進んでいましたが、エレベーターが動かないため、配膳車による運搬ができません。そこで、職員を40人近く動員し、地下の調理室から階段を使い食事を運びました。4階から11階まで、入院患者さんと介護老人保健施設「吹田徳洲苑」の入居者さんを含め350人分に及びました。

救急外来でも混乱が生じていました。救急搬送の依頼を次々と受け入れたものの、入院が必要な歩けない救急患者さんを5~6階の一般病棟まで上げることができない状況でした。そのため3階までのエスカレーターを利用し、エレベーターが復旧するまで3階のリハビリテーションセンターとHCU(高度治療室)を仮の病室としました。

一般外来の患者さんも来院されましたが、増えつつある救急患者さんに対応するため、午前9時半時点で、一般外来患者さんの受け入れ制限と当日の予定手術の中止を決定。外来診療の予約患者さんや予定手術の患者さんには、大変申し訳ないことをしたと思っています。

救急患者さんで多かったのは転倒による大腿(だいたい)骨頚(けい)部骨折や腰椎(ようつい)圧迫骨折でした。地震発生後の24時間で十数人の骨折患者さんの入院がありました。一般社団法人徳洲会の鈴木隆夫理事長と福島安義・副理事長から「大丈夫ですか」との連絡をいただき、できれば整形外科の応援医師をほしい旨、お伝えしました。

職員全員の努力で地震発生後の3日間を乗りきれました。ご協力をいただいたグループ内外の皆様に感謝申し上げます。

職員全員に緊急情報の伝達を 電子カルテシステム改善検討

今回の地震で、災害に対する基本的な対応の不備を強く実感。強い地震の際には、エレベーター復旧までの時間短縮に関するさらなる対策を検討する必要を痛感しました。災害など非常時に、職員全員に伝達するシステムの不備も認識しました。電子カルテでのメールのやり取りでは間に合いません。職員たちが電子カルテを開けば、すぐに「緊急事態情報」が時系列で表示されるようなソフト開発を徳洲会インフォメーションシステム(TIS)に依頼したいと思います。さらに、各病棟には最低1台の担架の設置も不可欠です。

6月末に病院機能評価を受審します。審査項目のなかには「災害などリスク発生時における重要業務継続のための計画 (BCP) 」の策定が必須事項として設けられています。〝生命だけは平等だ〟の理念を掲げている徳洲会グループだからこそ、災害時でも病院の機能を十二分に発揮できるよう、今回の経験を生かし、当院のBCPを練り上げる努力を決して惜しみません。

皆で頑張りましょう。

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