2017年(平成29年)9月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1098 二面
進化する遺伝子解析
治療法選択などカギ握る時代へ
下山・湘南鎌倉病院オンコロジーセンター長
一部の全国紙で血液1滴から13種類のがんを早期発見する新しい検査法の臨床研究がスタートしたことが報じられた。近年、国内外で、がんの早期発見・早期治療に関心が高まっているが、血液と同様、注目を集めているのが遺伝子だ。
がん発症のメカニズムでは、遺伝子変異の関係が明らかになりつつあり、その変異の違いによって、がんの性質や抗がん剤の効き方に違いが生じる。
たとえば胃がんといっても、患者さんの遺伝子の変異は同一ではないため、患者さん一人ひとりの遺伝子情報を把握し、変異の種類に合わせピンポイントで作用する抗がん剤「分子標的薬」を使用することで、最適ながん治療が行える可能性がある。
こうしたなか、ソニーやエムスリーが出資する合弁会社P5(ピーファイブ)は、患者さんのがん組織検体の遺伝子変異を解析し、その結果と合わせて、治療に役立つ可能性のある国内外の最新治験情報などをレポートにまとめ、医師向けに提供するプラットフォームを構築。
これを「P5がんゲノムレポート」として提携医療機関に提供している。検査は国際的な臨床検査基準であるCAP認定(米国病理学会)と同一の管理体制の下に行い、最新治験情報などは日本臨床腫瘍学会がん治療専門医の確認を経ている。
このP5の提携施設のひとつが湘南鎌倉総合病院(神奈川県)だ。同院の下山ライ・オンコロジーセンター長(外科部長)は「すでに肺がん領域では遺伝子変異の有無で治療薬が選択される時代になっています。今後、多くのがんで遺伝子変異に合わせた分子標的薬が選択される時代が来ると思います」と予見。
“SCRUM-Japan”といった遺伝子スクリーニング(選別)のプロジェクトが進んでいることも明かし、「将来的には遺伝子検査の結果に基づき、治療法の選択や治験への参加などを決めることができるようになると思います」。