徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

稲邊 富實代(いなべふみよ)(榛原総合病院(静岡県)副院長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

稲邊 富實代(いなべふみよ)

榛原総合病院(静岡県)副院長

2017年(平成29年)9月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1098

日本の健康寿命を延ばす組織目指す
何事もやるからには全力・誠心誠意
21世紀の日本を救うのは予防医療と高齢者医療

昨年末、私のすべてであった母を亡くして以来、煩悩も欲も失せました。尼僧のような精進の日々を送り、患者さんに捧げ尽くす毎日です。病める人々を助けたいとの思いから医師を志し、私は東京大学医学部卒業1年後、当時は東大系列を飛び出すことは死を意味しましたが、徳田虎雄・前理事長の崇高な理想と人間愛に感動し徳洲会に入職。しかし、患者さんからの指名が集中し過労死寸前で倒れ、私は徳洲会を辞めました。

2010年5月、徳洲会に戻った私は、人手不足であった予防医療(健診センター)と高齢者医療(療養病棟)に携わることになりました。「何事もやるからには誠心誠意に全力で。そうすれば必ず道が開けます」という母の教えを信じ、邁(まい)進するうちに、21世紀の日本を救うのは、このふたつではないか、と感じるようになりました。

PSL投与で患者さんは劇的に改善し奇跡の生還

当院の健診センターでは、①オプション検査の充実:オプション検査を43種類に増やし、健診やドックを受けなくてもオプションひとつだけでも、ばら売りで受けられるようにしました。②専門ドックの充実:心臓ドック、肺ドック、膵臓(すいぞう)ドックを新たに開始。膵臓ドックはニーズが高いのに、実施している医療機関は全国でも稀(まれ)です。③サタデードック:お休みのパパに子どもを見てもらえると、奥様方にも好評です。④アフタヌーン・コース:午前6~7時頃までに朝食をすませ昼食を抜くと検査結果もほぼ問題なしです。⑤営業努力:誠実な姿勢で、1社でも多く片っ端から電話をかけまくると、必ずチャンスが広がります。全国に支社や支店のある大企業や健保組合と徳洲会本部が一括契約を交わし、全国の最寄りの徳洲会病院で健診やドックを受けていただくことができるようにするのが私の悲願です。

超高齢社会の日本を救う鍵になるのでは、と私が感じるのがプレドニン(PSL)です。5㎎1錠約9円。さじを投げられた多くの命、助からないはずであった多くの命が、この薬によって奇跡の生還を果たしました。

私とPSLの出合いは卒後1年目。東大第一内科の研修医だった私が受けもった62歳女性は、原因不明の発熱、心不全、汎(はん)血球減少症が日増しに悪化。岡博教授(当時)以下、医局全員のカンファレンスでも診断がつきませんでした。私はSLE(全身性エリテマトーデス)の診断基準に該当することからPSL投与を提案しましたが、無視されました。しかし、岡教授が「もう助からない。それならPSLを投与してみたら」と。

PSLを投与すると、劇的に患者さんは改善、奇跡の生還を果たしました。PSLは炎症や自己免疫を抑える薬です。副作用が多いと思われがちですが、分量が重要。1日15㎎以上は副作用が出やすくなると言われます。しかし、分量次第では元気になる症例が少なくありません。大量の胸水が減少し元気になる、経口摂取困難で絶食看取りのため療養病棟に送り込まれたはずが、食べられるようになる。42床の当療養病棟で、救われた方はおおむね年間100例を超えています。

11項目の自己免疫用チェックリスト作成

低用量のPSLを使いこなせば、健康寿命が延び医療費も削減可能。入退院を繰り返していた高齢者も全身状態が安定し、在宅や施設での生活を元気に続けられるようになります。その根底にあるのが、従来考えられていたよりもはるかに多い自己免疫の存在だと考えます。加齢とともに高まる抗核抗体陽性率も、加齢とともに自己免疫が増加することを表していると考えます。SLEの診断基準をもとに全11項目の「自己免疫用チェックリスト」を作成しました。

①リンパ球減少(1500/㎕以下)または血小板減少(10万/㎕以下)、②尿蛋白(たんぱく)、③胸水または腹水、または心嚢(しんのう)液、④多発性関節炎、または熱感・腫脹(しゅちょう)をともなう関節炎、または発熱をともなう関節炎、⑤リウマチ因子、抗核抗体等陽性、⑥原因不明の発熱、⑦肺高血圧、⑧日光過敏症、⑨脱毛、薄毛(とくに女性は重要)、⑩原因不明の消化管出血、⑪原因不明の肝機能障害。

生命の危機に直面する症例で11項目中2項目以上に該当する場合は、PSL5~10㎎を投与すると、大半の症例で有効でした。「日本の健康寿命を延ばす徳洲会」を目指して、皆で頑張りましょう。

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