徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2023年(令和5年)11月06日 月曜日 徳洲新聞 NO.1414 1面

福岡病院薬剤部
入院から外来まで12 PBPM運用
医師負担軽減と薬物治療の質向上

福岡徳洲会病院薬剤部はPBPMを活用し、患者さんや医師の負担軽減、薬物治療の質向上を図っている。PBPMは“プロトコールに基づく薬物治療管理(Protocol Based Pharmacotherapy Management)”を意味し、あらかじめ医師と合意した手順書に従って、薬剤師が薬の種類や投与量などを変更したり検査をオーダーしたりすること。同院薬剤部は現在、入院から外来まで、疑義照会(薬剤師が処方箋の内容について発行した医師に合わせること)の簡素化や検査のオーダー支援など12のPBPMを運用している。薬剤師のモチベーションアップにもつながり、今後も導入を拡大していく意向だ。

「PBPMを積極的に展開したいです」と渡邊・薬剤部長

PBPMは、厚生労働省がチーム医療を促す一環として、10年ほど前に示唆した方法。現行法の範囲内で薬剤師を積極的に活用する業務として、「薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間などの変更や検査のオーダーについて、 医師・薬剤師などによって事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて医師などと協働して実施すること」が掲げられ、薬物療法に対して薬剤師が一層主体的にかかわることが推奨されるようになった。

院外処方の代行入力を行う宮津・副薬剤部長。運用しているPBPMは電子カルテ内に掲示

こうした背景をもとに、福岡病院は2019年にPBPMを初導入。ICU(集中治療室)を中心に運用する「検査オーダーの入力支援」を整備した。これにより、医師とともに作成し医師が合意した手順書に基づき、医薬品に関連する必要な検査のオーダーを薬剤師が医師に代わって行えるようになった。

その意義を宮津大輔・副薬剤部長(薬剤師)は「薬剤師には、患者さんに薬が適正に使用されるよう支援する責務がありますが、検査しなければ適正かどうか正しく評価できません。そのため、重要度の高い検査に限り、薬剤師がオーダーを補完する方法としました」と説明する。

朝の医局会。病院幹部や医師にPBPMを説明し周知

院内のさまざまな場面で需要があったことから、同院はPBPMを着々と拡大。外来、一般病棟、NICU (新生児集中治療室)、手術室、ER(救急外来)と院内の各スペース、あるいは入院・外来がん化学療法といった治療を対象とするものまで、現在、12のPBPMを運用している(図)。取り組む内容も、検査オーダーの入力支援だけでなく、処方や指示の入力支援など多岐にわたる(表)。

このうち、疑義照会の簡素化については、外来の院外処方箋で先行実施。疑義照会は、処方箋の内容を発行した医師に問い合わせる行為で、調剤を行う前に薬剤師に義務付けられている。しかし、形式的・典型的な問い合わせ内容もあるためPBPMを活用し、医師の合意を得た手順書の下、それらについては逐一、医師に問い合わせることなく調剤できるように整備した。

医師から継続希望と好評!

宮津・副薬剤部長は「こうした取り組みは、すでに米国では浸透しています。適切にPBPMを運用するための手順書作成が大変ですが、一度PBPMができると院内でスムーズに普及すると思います」と指摘。「薬物治療の質を上げ、患者さんのためになるのはもちろん、『医師の働き方改革』にも寄与します」とし、さらにPBPMの運用が増える可能性を示唆した。

渡邊裕之・薬剤部長も「PBPMは、それぞれ単独で導入するケースはあっても、パズルのように組み合わせ展開している病院はあまり多くないと思います。当院では在籍している約50人の薬剤師すべてが、何らかのPBPMに携わることで、モチベーションやスキルの向上にもつながっています」と強調する。

同院は一連の取り組みの成果を、積極的に論文・学会発表している。

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