徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

館山病院(千葉県) 院長
佐藤 猛(さとうたけし)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

佐藤 猛(さとうたけし)

館山病院(千葉県) 院長

2023年(令和5年)11月06日 月曜日 徳洲新聞 NO.1414

高齢者ニーズに応えるため尽力
在宅関連サービス充実させ提供
地域のため職員のため「獅子奮迅」の働きを

房総半島の南端にある当院は、海や山など自然に囲まれた風光明媚な土地にあります。館山の夕日は、日本の夕陽百選にも選ばれたほどです。高速道路を使えば羽田空港まで1時間強と交通至便でもあります。当院は地域のご支援により1891年(明治24年)に開院、130年以上もの間、地域医療に携わっています。2005年には医療法人徳洲会の傘下となり、おかげさまで昨年、新築移転を果たすことができました。

「運命は性格の中にある」 芥川龍之介が残した言葉

私の好きな言葉は芥川龍之介が残した「運命は性格の中にある」です。意味は、人の幸福や不幸は、その人が持つ心の性質や傾向によって決まる。つまり、運命は自分で変えることができるという希望に満ちた考え方です。私が館山に越して来たのは30年前です。そろそろ今後の余生をどう過ごすかと考えていた矢先、突然、院長就任の打診があり、今年6月に拝命しました。まさか、このような運命が待っているとは考えもしませんでした。

私は大阪で生まれ、静岡で育ちました。東京医科大学に入学し、サッカー部に所属、先輩や同級生の助けで、なんとか留年せず無事に卒業しました。卒業後は大学医局に入局し、血友病の患者さんを診る機会が多かったです。1986年の入局当時、エイズの原因であるHIVで汚染されている血液製剤が使われていました。この製剤を投与した約5,000人の血友病患者さんのうち約1,800人がHIVに感染し、約400人以上が死亡する薬害エイズ事件が起こりました。一部の医師は当時の状況や情報不足を考慮し、自分たちの判断や治療に責任はないと主張していましたが、その無責任な言動は、エイズ治療をしていた私にとって、あるまじきことでした。この事件は薬害エイズ問題を社会的な問題として捉え、医療制度や医学界のあり方について考え直すきっかけを与えてくれました。まさに徳洲会の理念である“生命だけは平等だ”は、私の経験を照らし、これからも大切にしていきたい思いと重なります。

大学で学位を取得した頃、地域医療に興味があった私は、総合診療医の経験を積むために当院に赴任しました。現在、館山市の人口は4万5,000人程度で、人口に占める65歳以上の割合は41.3%と全国平均より高く、高齢化率は今後も上昇すると見込まれます。そのため、高齢者のニーズに応えるための地域医療構想の設計図を作成し、実現に向けて病院機能の改革、地域との連携強化を進めることが重要です。高齢であっても、住み慣れた生活の場で必要な医療・介護サービスを受けられるように、当院は訪問診療と訪問看護、訪問介護など在宅関連サービスを充実させ提供しています。

救急医療では、市内に三次救急医療機関や救急救命センターはなく、初期救急医療機関や二次救急医療機関が配置されています。当院は二次救急医療機関として昼間・夜間・休日24時間受け入れていますが、とくに自分で意思決定ができない高齢者の搬送が増えており、患者さんの状態や意思を尊重した個別的な対応が必要になる場合もあります。

地域医療での総合診療医と 初期研修医の役割を考える

当院では今年から2カ月ごとのローテーションで、地域医療初期研修医を受け入れています。地域医療研修では地域の健康問題やニーズに応えるために、幅広い領域で経験を積まなければなりません。一般外来や入院だけではなく、私が担当する週1回の訪問診療にも同行してもらいますが、在宅医療では医師としての人格や倫理を養い、患者さんやご家族、他職種とのコミュニケーションや連携も学びます。患者さんの意思や価値観に沿った医療や看取りを行うことも重要となります。そのためには、患者さん、ご家族と信頼関係を築き、他職種と協力してチーム医療を行うことが不可欠であると気付き行動できることが必要です。

地域医療で研修医は多くの役割を担っています。これらの経験は将来的に、専門医療を選択する際にも医師の根幹としても役立つでしょう。また、地域医療に携わることで、医師としてのやりがいや魅力を感じることでしょう。こうした経験を積んだ医師を育てることで、徳洲会グループの地域医療に貢献できると信じています。地域住民のため、当院に務める職員のため、「獅子奮迅」の働きをしていきます。 

皆で頑張りましょう。

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