徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2015年(平成27年)8月3日 月曜日 徳洲新聞 NO.991 四面

宇治徳洲会病院
高気圧酸素治療を併用
新たな放射線治療開始を検討

宇治徳洲会病院(京都府)は、がん治療に新たに高気圧酸素治療を併用した放射線治療の検討を開始する。より放射線治療の効果を高めるのが狙い。患者さんは高気圧酸素治療装置に入り、体内の酸素濃度を高めた後、放射線治療室に移動して治療を受ける。同院放射線治療科の丹羽康江部長は「酸素効果と呼ばれ、酸素濃度が高いほうが放射線の治療効果が得られることがわかっています。ひとりでも多くのがん患者さんの力になりたい」と意気込んでいる。

国内で実施施設わずか

丹羽部長は「一人でも多くのがん患者さんの力になりたい」 丹羽部長は「一人でも多くのがん患者さんの力になりたい」

高気圧酸素治療と放射線治療の併用は①体内の酸素濃度が高いほうが放射線の治療効果が得られる、②正常な組織に比べて腫瘍部分では酸素濃度の高い状態が長く続く――という2つの特性を生かした治療法。

宇治病院の丹羽部長は「酸素効果と呼ばれ、放射線治療の効果が無酸素と通常の状態では3倍くらい異なることがわかっています」と説明し、さらに「高気圧酸素治療装置から出た瞬間、正常な組織の酸素濃度は通常に戻りますが、腫瘍部分の酸素濃度は15分くらい高い状態が続くこともわかっています」と解説する。そこに放射線治療を行うことで、より高い効果を得ようという考えだ。

診療放射線技師の嶋崎和幸主任(奥)と患者さんの位置を確認する丹羽部長 診療放射線技師の嶋崎和幸主任(奥)と患者さんの位置を確認する丹羽部長

詳細なメカニズムについては「まだ明らかになっていない部分もある」(丹羽部長)ものの、丹羽部長はフリーラジカルの関与を示唆。フリーラジカルとは、通常2つずつ対をなす電子が1つしか存在(不対電子)しない原子や分子のことで、一般的に不安定なため安定しようと他の分子から電子を奪取しようとして、細胞や遺伝子を傷つける。放射線治療では、放射線が細胞内の水と反応してフリーラジカルを産生、がん細胞を死滅させる。

丹羽部長は「酸素濃度は高いほうが、フリーラジカルが生まれやすいとされ、これが要因のひとつという見方があります」と説明。また、腫瘍の内部が低酸素状態で、放射線が効きにくいタイプのがんには、高気圧酸素治療により低酸素状態を解消することで、「同じ線量の治療で、これまで得にくかった効果が得られる可能性があります」と明かす。

高気圧酸素治療装置内には音楽が流れ、中で治療を受けながら外付けのテレビも見られる(写真左から冠﨑大毅ME、栗山穣ME) 高気圧酸素治療装置内には音楽が流れ、中で治療を受けながら外付けのテレビも見られる(写真左から冠﨑大毅ME、栗山穣ME)

治療では、まず患者さんは高気圧酸素治療装置に入り、1時間かけて体内の酸素濃度を高める。終了後、部屋を移動し15分以内に放射線治療を受ける。診療に要する時間は全体で約1時間半。公的医療保険が適用される。とくに論文などで治療効果が認められているのは「悪性の脳腫瘍」(丹羽部長)という。

同院が高気圧酸素治療と放射線治療の併用に向けた準備に着手したのは6月。丹羽部長の入職がきっかけとなった。丹羽部長は放射線治療を専門とし、これまで兵庫医科大学や兵庫県立粒子線医療センターで副作用に対するアプローチの研究や診療などを実践。そのなかで高気圧酸素治療の併用に着目した。

入職後、同院が①高気圧酸素治療装置の導入、②放射線治療機器の導入、③両治療スペースの近接――という高気圧酸素治療を併用した放射線治療の3要件を満たしていることから、高気圧酸素治療を併用した放射線治療の実施に向け準備を進めている。とくに丹羽部長は③の重要性について強調する。

「放射線治療の効果が高い時間は15分間。放射線治療では患者さんの体の位置合わせに5分くらいかかるので、患者さんの移動距離がとても大切です。当院は徒歩20秒の距離にあるので実施できるのです」(丹羽部長)

新築移転の際に機器もそれぞれ充実。最新の高精度放射線装置TrueBeamSTxを設置し、高気圧酸素治療装置は酸素加圧だけでなく空気加圧も設定できるように改善、より安全性が高い環境を実現した。

丹羽部長は現在、職員の理解を促すことに注力。急性期病院だけに、高気圧酸素カプセルは今まで交通事故による外傷などに主に使用され、放射線治療に活用できることを知らない職員が少なくないという。

「酸素治療と放射線治療の併用は自分ひとりでは無理。主科となる臓器の医師はもちろん、診療放射線技師や臨床工学技士(ME)との連携が不可欠です。関わるスタッフの理解が欠かせません」と丹羽部長。3要件のハードルが高く、国内でも併用治療が行える施設はわずか。そうした事情をふまえ丹羽部長は「治療に難渋するがん患者さんの力になりたい」と意気軒高だ。

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