徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2021年(令和3年)6月7日 月曜日 徳洲新聞 NO.1290 四面
地域の歯科スタッフに接種する中西・歯科医師
新型コロナの感染拡大が続くなか、4月下旬に国はワクチン接種を加速させるため“筋肉注射に関する研修を受けている”など一定の条件下で歯科医師によるワクチン接種を認めた。
宇治病院は、こうした国の動きをふまえ、末吉院長が院内の歯科医師に接種の打ち手として協力するよう指示。5月に入り、同院でワクチン接種チームのリーダーを務める畑倫明・救急外傷外科部長兼救命救急センター長やICT(感染対策チーム)の篠塚淳・小児科副部長が講師となり、中村亨・歯科口腔外科部長をはじめ歯科医師に、接種のために必要な研修と実技実習を行った。
ワクチン接種への協力は歯科医師だけではない。歯科衛生士も接種会場での運営業務を行うため、医師から講義を受けた。
研修を受けた歯科医師と歯科衛生士は、5月中旬に院内で行った職員への接種や地域の医療従事者(医科、歯科開業診療所、薬剤師、看護師)への優先接種から参加。取材で訪れた19日には院内講堂を会場とし、歯科医師は看護師らとともに接種を行う場所に配置、歯科衛生士はコメディカルや事務職員と一緒に受け付けと、予診票の受け取り、接種証明書を渡す場所に配置され、医師とともに対応した。
歯科衛生士も受け付けと予診票の受け取りなど事務作業をサポート
当日は、その様子を宇治久世歯科医師会の中村雅彦会長、京都府病院歯科医会の長谷川彰則会長が見学に訪れた。
中西啓太・歯科医師は「初めて院外の方に筋肉注射を行いましたが、ふだんから局所麻酔や点滴を行っていることもあり、違和感はありませんでした」と落ち着いた様子。「世界中が大変な状況のなか、自分が少しでも役に立てているのであれば、うれしく思います。これからも自分にできることはやっていきたいです。6月から奄美大島の名瀬徳洲会病院、笠利病院に応援に行くので、機会があれば応援先でも協力したいです」と意欲的。
歯科医師による接種を受けた鴛海幸子・歯科衛生士は「痛みもなくスムーズでした。何の違和感もありませんでした」と振り返り、「集団免疫を実現するためにも、できるだけ多くの方々に、できるだけ早く接種していってほしいと思います」と歯科医師の活躍に期待を寄せていた。
歯科医師による地域での接種について協議する末吉院長(右)と宇治久世歯科医師会の中村会長
会場で中村部長は見学に訪れた京都府病院歯科医会の長谷川会長に説明
より円滑に接種するためコアメンバーで反省会
打ち手を増やすために、宇治病院は院外の歯科医師も接種の担い手となれるよう協力。畑部長が中村部長とともに日頃から連携関係にある地元の宇治久世歯科医師会や、中村部長が名誉会長を務める京都府病院歯科医会などを訪問。ワクチン接種のための研修会を行い、修了証を歯科医師会が発行することで法令順守を担保した。実技研修は宇治病院で実施。
中村部長は「歯科医師が接種を受けた後、進んで打ち手の候補者に登録するという好循環を生んでいます」。宇治久世歯科医師会の中村会長も「畑先生にご講演いただき、接種はもちろん、見守りのやり方や問診のことなど、いろいろ教わりました。国難ですから、私たち歯科医師でできることはやるべきです」。日頃の円滑な地域医療連携の関係も相まって、700人近くの歯科関連接種希望者のうち、450人余りを宇治病院で担当した。
地域を巻き込んだ取り組みについて、中村部長は「元をたどれば当院が実践した“1バイアル7回接種”により、接種を希望する全職員にワクチンが行き届いたのが大きい」と指摘。「もし接種が遅れれば、今度はワクチンを打つ際に新型コロナに感染したり・させたりするリスクがあり、今回の取り組みの実現は難しかったと思います」。
すでに一般の方のワクチン接種がスタートし、同院も対応中だ。中村部長は「地域の方が少しでも早く安心して生活できるように、医療関係者が皆で連携しながら協力していきたいです」と語気を強める。