徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2021年(令和3年)4月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1284 四面

調剤業務の自動化を促進
ロボットで効率化や安全性向上
中部徳洲会病院

中部徳洲会病院(沖縄県)が新築移転時に薬局に導入した調剤業務を自動化するシステムが、効率化や安全性の向上に寄与している。徳洲会グループ病院では10施設以上がアンプルピッカー(注射薬自動払い出しシステム)を導入しているが、輸液まで対応する機器、さらに水剤管理ロボットを設置しているのは中部徳洲会病院のみ。

「時間に余裕が生まれ、できることが増えました」と喜多・薬剤部長 「時間に余裕が生まれ、できることが増えました」と喜多・薬剤部長

調剤業務を自動化するシステムを導入した経緯について、喜多洋嗣・薬剤部長は「新築移転オープン当時、病院の規模が大きくなるのに、薬剤師の人数が変わらないという現状がありました。最初は人手不足解消のためにシステムを導入したのですが、使っていくうちに、安全性の担保にも欠かせないものになりました」と明かす。

同システムのひとつがアンプルピッカー。同機器は電子カルテと連動して、処方せんごとに注射薬(アンプル、バイアル)を調剤、加えて薬袋、処方せん、病棟で使用するラベルを、個人トレーごとに搬出する。これらは薬剤師が監査し、輸液と組み合わせて病棟に払い出す。

同機器の導入により、正確かつ安全性の高い調剤が可能になった。同時に、患者さん個人に1回施用単位で注射薬を調剤することが可能となり、病棟での取りそろえ業務の軽減や、薬品の取り間違い防止に役立っている。

同院が導入したアンプルピッカーは輸液にも対応。輸液は1回に調剤する量が多いため、同機器への補充業務を考えると、手作業で行うほうが早いと考える施設もある。一方、喜多・薬剤部長は「正確性、安全性を考え輸液にも対応する機器にしました。当薬局では冷蔵が必要な注射薬や麻薬以外はアンプルピッカーで対応可能なので、全体の約85%は自動化の恩恵を受けています」と説明する。

輸液にも対応できるアンプルピッカー 輸液にも対応できるアンプルピッカー

さらに「注射薬は3日に1回ほどの補充ですみますが、輸液は1日に3回ほどの補充が必要になります。これを調剤助手が担当することで、円滑に回しています。システムの導入により、補充や運搬、メンテナンスなど調剤助手ができる業務内容が増えました。これまで5、6人の薬剤師で行っていた業務を、薬剤師と調剤助手ひとりずついれば、回せるようになりました」とアピールする。

同院では他にも散薬管理ロボットや水剤管理ロボットを導入。両機器とも薬品が入っているカセッターを複数内蔵しており、電子カルテからの処方せんに従い自動的に払い出す薬品をピックアップ、秤量(ひょうりょう)から分包まで、すべての作業を自動で完結する。散薬管理ロボットには31品目、水剤管理ロボットには4品目と使用頻度の高い薬品をセットしている。散薬管理ロボットは同院以外に3施設が導入。

業務の効率化を促進したことにより、沖縄・離島ブロックの基幹病院として、離島病院へのスタッフ応援を安定的に行えるようになった。さらに院内ではプロトコール(事前に取り決められた薬物療法決定手順)に基づく薬物治療管理(PBPM)も加速。これは医師の「働き方改革」でのタスクシフトが目的で、今では入院処方の約60%を薬剤師が管理するまでに至った。喜多・薬剤部長は「時間的な余裕ができ、薬剤師にできることも増えました」と胸を張る。

散薬管理ロボットには31品目の薬品をセットできる 散薬管理ロボットには31品目の薬品をセットできる

同システムは離島病院など薬剤師の少ない施設での導入が期待されそうだが、喜多・薬剤部長は「離島の場合、故障した時の修理にどうしても時間がかかります。また、薬品のデザインやコードが変わるたびに登録変更が必要となり、日々のメンテナンスに時間が取られます。現状では、基幹病院への導入により、業務の効率化を図り、そこからスタッフの派遣を検討するのも良いのではないでしょうか」。

今後、グループ病院では、抗がん剤ミキシングロボットが湘南鎌倉総合病院(神奈川県)と和泉市立総合医療センター(大阪府)に導入予定だ。

音声入力を試験導入

音声入力システムを試験導入し服薬指導などで活用音声入力システムを試験導入し服薬指導などで活用

中部徳洲会病院の薬局では音声入力システム「エニフボイス」も試験的に導入。キーボードをたたいて文字を入力するのではなく、口頭で話した内容がそのまま文字となるため、業務効率の向上や省力化に寄与する。2018年9月に一部の電子カルテに同システムを導入、その後、19年11月に薬剤師専用の24台の電子カルテ端末すべてに導入した。主に、病棟服薬指導の記録、入退院サポートセンターの指導記録、持参薬の鑑別報告書の作成、各種報告書の作成などに使用している。

喜多・薬剤部長は「通常の会話や文書の内容はもちろん、医薬品名を音声入力する際も精度が高く、学習機能も優れており、使えば使うほど操作者の癖を理解し、正しく入力できるようになります。転記ミスがなくなるため、医療安全にも貢献しています」と評価。

一方で「もともと調剤薬局向けに開発されたものなので、病院での専門用語の変換に弱い部分もあります。さらに、電子カルテを音声操作できるようになれば、より使い勝手が良くなるのではないでしょうか」と指摘。試験導入は3年間を予定していたが、コロナ禍により期間を延長。同院でのログはメーカー側にフィードバックする計画だ。

また、同院では昨夏にピッキングサポートシステム「ポリムス」を導入。これは処方せんに従い薬品をピッキングする時に、薬品棚に貼り付けたバーコードを読み取ることで、作業に間違いがないかチェックするための機器だ。調剤業務を担当する薬剤師一人ひとりが活用することで、ヒューマンエラーを防止できる。

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