2020年(令和2年)5月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1234 一面
「メディカルラリー」を初開催
中部徳洲会病院 会場に全国から13チーム
中部徳洲会病院(沖縄県)は院内で「第1回琉球メディカルラリーin北中城」を開催した。これは救急医療に携わる医療スタッフや救急隊員などによって構成されたチームが、主催者が設定した救急のリアルな模擬現場で、情報収集やトリアージ(重症度・緊急度選別)、蘇生、治療、搬送の的確さを競う大会。全国から13チーム、96人がエントリーし、運営も含めると300人以上が参加した。中部徳洲会病院からも医師や看護師、沖縄市消防本部の救急救命士などで結成したチーム「A1ソース」が挑戦した。
病院前救護の技術を競う
「全国の仲間とつながりができる」と村上医長
大会は2月23日に開催、中部徳洲会病院の村上大道・集中治療部医長が全体の指揮を執った。開会式の冒頭、同院の比嘉信喜・副院長兼救急総合診療部長が「全国レベルのメディカルラリーを当院で開催できることを光栄に思います。日頃から訓練してきた救急のプロフェッショナルとしての技を競い合い、さらにレベルアップしていただければと思います」とエール。次に新垣邦男・北中城村長も挨拶した。
続いて、村上医長が注意事項や競技のルールなど説明したうえで、「メディカルラリーは地域の医療機関や救急隊員と顔の見える関係を築くのに有効であり、さらに全国の仲間とつながりができるのも大きなメリットだと考えます」と強調。さらに「自分の地域では当たり前にやっていたことが、別の地域では違うやり方をしているなど、いろいろな発見があり、新しいアイデアが生まれることもあります。メディカルラリーは救急医療、地域医療、災害医療に大きく寄与するツールです。ぜひこの機会を活用していただければと思います」と呼びかけた。
その後、各チームにチューターが付き、チューターの案内で8つのステーションを回った。各ステーションでは、チームの代表者もしくは全員がシナリオに挑戦。その後、ステーションの責任者からフィードバックを受けた。今大会での各ステーションでは、つくり込みのレベルが高いシナリオがそろった。
ステーション1:銀行に強盗が侵入。そこに特殊部隊が駆け付け、銃撃戦となり、複数の傷病者が発生する。警察の要請で、チームメンバーはIMAT(事件現場医療派遣チーム)として出動。評価はトリアージと初期治療の正確さ。
乳児のCPA への対応と家族への説明を評価
ステーションの責任者からフィードバック
チーム「A1ソース」のメンバー
ステーション2:那覇市の国際通りにヘリコプターが墜落し、多数の傷病者が発生。チームメンバーはDMAT(災害派遣医療チーム)として出動。現場指揮本部から一次トリアージをするように指示を受け、傷病者15人のトリアージを行いタグに記載。評価はタグに記載された内容で行う。
ステーション3:制限された状況でのクイズに見せかけて、じつは応急救護所の運営を模擬的に行う。指揮命令系統の確立と、良好なコミュニケーションを軸にした人員の再配置がテーマ。
ステーション4:テーマは乳児のCPA(心肺停止)。蘇生できない乳児のCPAに対し、その内容をどのように家族に伝えるか。話し方、接遇、宗教的配慮など総合的に判断。
ステーション5:病院支援に見せかけて、ICU(集中治療室)運営がテーマ。不穏の患者さんへの対応、DNAR(心肺停止時に心肺蘇生を実施しないこと)の患者さんに対する家族対応、敗血症性ショックに対する初期対応、人工呼吸器トラブルへの対応を評価。
ステーション6:テーマは交通事故に見せかけて、内因性ロードアンドゴー症例と肩甲難産への対応。交通事故現場に到着すると、じつは事故は軽微で、運転手が心筋梗塞であることが判明。内因性ロードアンドゴー症例で、すばやい現場離脱が求められる。さらに、後部座席に妊婦がいて、すでに発露。現場での出産を決断するが、肩甲難産であり、適切な対応をしないと分娩(ぶんべん)できないという状態での対応を見る。
ステーション7:飛行機の中でのCPAがテーマ。限られた物品、スペースでの対応を評価する。
ステーション8:テーマは意識障害患者さんへの対応。チームを3つ(発見者・通信指令者・救急隊員)に分け、連携を取りながら適切な対応を行う。ログロール・バックボード固定など手技ができるか判断する。
メンバー一新して挑戦
全国13 チームがエントリーし運営も含め300人超参加
中部徳洲会病院のチーム「A1ソース」は毎週1回集まり、訓練を重ねた。昨年開かれた「第18回千里メディカルラリー」では、初優勝した経験もある。その時から引き続き参加したのは、リーダーを務める知念巧・救急総合診療部医師のみ。他のメンバーは運営に回り、大会をサポートした。大会前に知念医師は「リーダーとして参加しますが、緊張せずふだんどおりできれば良いと思います。訓練は、地域の救急隊員と情報共有できる貴重な機会です」と話す。
参加メンバーの玉城未来子看護師は「地元で開かれる大会だからこそ、優勝を目指しています。訓練を重ねることで、観察力や迅速に対応する力が身に付いたと思います」と意欲的。大嶋厚司看護師は「ふだんは透析室で勤務しているので、救急を知りませんでしたが、訓練をとおし看護師に必要なスキルだと感じました。学んだことが、透析室で患者さんが急変した時にも役立つと思います」と意義を説く。
大会は半日かけて実施。優勝したのは、奈良県立医科大学附属病院の職員を中心とする「チーム飛鳥川」。「A1ソース」は4位だった。