徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

松本 裕史(まつもとひろし)羽生総合病院院長(埼玉県)

直言 生命 いのち だけは平等だ~

松本 裕史(まつもとひろし)

羽生総合病院院長(埼玉県)

2020年(令和2年)5月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1234

今こそ医療に携わる者の矜持を見せる時
感染症と闘い眼前で苦しむ患者さん救う
真に必要とされるものだけが長きにわたり存続

新型コロナウイルスの感染はとどまるところを知らず、世界中に拡大、それにともなって亡くなる患者さんの数も激増しています。日本でも感染拡大を防ぐために3月から国やメディアなどによる注意喚起、Jリーグ、プロ野球などの開幕延期、大型イベントの中止、東京オリンピックの延期など、数々の対策が講じられていますが、関東圏、大阪圏、福岡県など人口が多い地域で、患者数が指数関数的に増加、ついには緊急事態宣言が出されました。

私たち羽生総合病院が立地する埼玉県も患者数が急増、人口5万5000人程度の羽生市でも、少数ながら感染者が確認されています。一方、感染症指定医療機関になっている近隣の病院では、早期から新型コロナウイルス陽性の患者さんを受け入れたところ、医療従事者の院内感染が発生し、2週間ほど外来診療と救急診療が停止に追い込まれるという事態が発生。東京のある病院では、院内感染が広がり、高齢患者さんが何人も亡くなられるという、予断を許さない状況が続いています。

2年前の新築移転時に感染症への備えを整備

当院は新築移転から2年が経過。今のところ外来患者数、新入院数なども順調に増加しています。これには、新しく設置したHCU(高度治療室)、放射線治療装置、RI(ラジオアイソトープ)検査装置、緩和ケア病棟などが徐々に機能し始め、これまで対応できなかった患者さんを受け入れられるようになったことが大きいと考えます。

また、十数年前の新型インフルエンザ流行時の教訓から、感染症に対する備えを整備するため、出入り口を別にした陰圧の診察室を備えるとともに、院内に3床、陽陰圧を切り替えられる個室を設けました。自由に出入りできない自動ドアを多数設置し、面会者の制限が可能となっており、職員といえども、カードキーがなければ、おいそれと出入りができない環境をつくり上げています。また、羽生市医師会への加入を果たし、それに加え県から地域災害拠点病院に指定されるなど、地域での存在感が確実に高まっています。

以前にご紹介したように、新病院建設にあたって、現場の意見を最大限取り入れるようにしたことで、今のところ建築構造上の大きな不満は聞こえてきません。現場を知らない人が頭の中で考えたことを押し付けたとしたら、かなりの不満が生じたことでしょう。とかく組織が大きくなればなるほど、現場と意思決定の場が遠く離れ、互いの思いにすれ違いが生じるのは、組織拡大の宿命と言えるでしょう。当院も旧病院の倍の広さになり、職員数も増加、現場の声がやや遠くなった感があります。

離島・へき地病院の院長先生方には、普通のことと思いますが、私自身、院長として17年目を迎えた今でも、外来診療、手術、病棟での診療に従事しており、現場の問題点やニーズを肌で感じていられるのは、ある意味、ありがたいことです。病院の将来構想を考えるうえで大変参考になっています。

理念の下に患者さんを幅広く受け入れることに変わりなし

新型コロナウイルス感染症の話に戻りますが、埼玉県では感染症指定医療機関が、第1種2病院と第2種12病院の計14病院(2019年4月時点)、感染症病床は70床とされています。しかし、感染者数は700人を超え、すでに指定医療機関だけで受け入れることができなくなっています。埼玉県は人口10万人当たりの医師数、看護師数、病床数が全国最下位の医療過疎県。患者さんが急増したら、医療崩壊が真っ先に起こる可能性が高まっているのです。

徳洲会グループのいくつかの施設では、すでに新型コロナウイルス感染症の患者さんを受け入れており、今後も受け入れていく状況にあると思われます。私たちも“生命だけは平等だ”の理念の下、頼ってきた患者さんを幅広く受け入れていきます。

ちまたでは、医療機関や医療従事者に対する偏見、差別が生じているという話を耳にしますが、今、目の前で苦しんでいる患者さんを助けられなくて、何の意味があるのでしょうか。自分たちに都合の良い患者さんだけに対応していたのでは、未来はないと思います。世の中で真に必要とされるものだけが、長きにわたり存続を許されます。まだまだ感染症との闘いは続きます。今こそ医療に携わる者としての矜持(きょうじ)を見せる時です。

皆で頑張りましょう。

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