徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2020年(令和2年)2月3日 月曜日 徳洲新聞 NO.1221 四面

徳洲会乳がん部会 初の乳房超音波セミナー開く
検査・診断の質向上へ研鑽

徳洲会乳がん部会は中部徳洲会病院(沖縄県)の講堂で、第1回乳房超音波セミナーを開催した。乳がん診療では精度の高い超音波診断が重要な位置を占めていることから、診断の質の向上を図る機会として同セミナーを企画。日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構)が乳房超音波の技術や知識を習得するための講習会を主催しているものの、参加倍率が高く受講が難しい状況を考慮した。徳洲会グループ病院から医師2人と臨床検査技師29人の計31人が参加し研鑽(けんさん)を積んだ。

6月に北海道で開催予定

全国の徳洲会病院から医師、臨床検査技師が参集 全国の徳洲会病院から医師、臨床検査技師が参集

乳房超音波診断のエキスパートで精中機構の講習会の講師などを務める吹田徳洲会病院(大阪府)の藤本泰久・乳腺外科部長、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の田中久美子・乳腺外科部長や、同院の永田好香・乳腺外科医長、坂井由紀子・検査部副主任(臨床検査技師)が講師を務めた。開催は昨年12月15日。

冒頭、乳がん部会の部会長を務める大垣徳洲会病院(岐阜県)の間瀬隆弘院長が「最先端の医療を取り入れるのも大切ですが、まずはしっかりと質の高い医療を提供していくことが肝要です。今回、講師を務めていただく先生方のおかげで念願の乳房超音波セミナーを開催できました。参加した皆さんが今日学んだことを各施設にもち帰って広めていただくことを期待しています」と開会挨拶。続いて田中部長が「立地的に精中機構の講習会受講のハードルが高いため、第1回は沖縄で開催することとしました」と説明した。

「質の高い医療の提供が肝要」と間瀬院長 「質の高い医療の提供が肝要」と間瀬院長
「乳がん診療はチーム医療」と田中部長 「乳がん診療はチーム医療」と田中部長
マンモグラフィと超音波検査を解説した永田医長 マンモグラフィと超音波検査を解説した永田医長

はじめに永田医長が「乳腺診療と超音波」と題し講義。永田医長はマンモグラフィ(乳房X線検査装置)のMLO(内外斜位方向)撮影とCC(頭尾方向)撮影について解説したうえで、「乳腺と大胸筋の間にある脂肪領域をmilky way、別名no man's land と呼びます。ここには乳腺が存在しないため、何らかの影が写った場合には正常組織ではなく、がんである可能性が高いです。読影時はここの見落としをしないのが重要です」と呼びかけた。

超音波の原理など講義した藤本部長 超音波の原理など講義した藤本部長
超音波検査時の注意点など講義した坂井副主任 超音波検査時の注意点など講義した坂井副主任

また、マンモグラフィでは乳房を圧迫して撮るためブラインドエリア(死角)が生じるが、超音波検査で確認することにより、死角を補えると説明。マンモグラフィと超音波検査の長所・短所や針生検などについて言及したうえで、経験を積みフィードバックを重ねることや典型的ながんを見落とさないことの重要性などを訴えた。

続いて、藤本部長は「超音波の原理と乳房組織特性、ドプラ」をテーマに講義。超音波画像の作成方法は、半世紀前に使用された超音波の強度と距離をグラフ状に表示するAモードと、その後、開発された超音波の強度を明るさで表し、距離を深さで表すBモードがあり、現在は一般的に使われているBモードが基本となり画像がつくられていることを説明した。

藤本部長はこれらの原理を解説したうえで「現在の超音波診断装置では良性、悪性の鑑別や、形状、境界だけでなく、組織型・組織亜型を推定することができます」と述べ、浸潤性乳管がんの硬性型、腺管形成型、充実型の3つの組織亜型に言及、それぞれの画像の特徴を挙げた。

超音波画像には、組織性状に応じた減衰(超音波の強さが弱くなること)や後方散乱(細かな反射体の集合があれば、超音波が超音波探触子側に、さまざまな方向に反射して戻って来ること)といった特徴的な現象が写り込む。超音波検査をより深く理解することに有用であるため、こうした画像が現れるメカニズムを解説した。また、血流の状態を描出できるカラードプラ法の適正な使用法をレクチャー。次いで、田中部長は「主な乳腺疾患~ 腫瘤(しゅりゅう)、非腫瘤性病変~」をテーマに講義した。代表的な良性腫瘍として線維腺腫と乳管内乳頭腫に触れ、「線維腺腫は基本的には治療の必要のない良性腫瘍ですが、形状不整な場合は、がんとの鑑別が必要です」などと指摘した。

続けて、浸潤性乳管がんに特徴的な画像所見に言及。「前方境界線(乳腺と脂肪組織との境界部分)の断裂が見られる場合は浸潤がんを積極的に疑う所見です」とポイントを語った。また浸潤性小葉がんや硬化性腺症、糖尿病性乳腺症の特徴を示し、非腫瘤性病変の要精査基準などを解説した。最後に、坂井副主任が「走査条件・検査環境とレポート」をテーマに講義。検査実施時の注意点として「超音波探触子はなるべく下部を持ち、垂直性を保つことが大切です。過度な圧迫はせず、ゼリーは事前に温めておき、被検者とコミュニケーションを取ることを心がけてください」とコツを語り、超音波検査レポートの記載内容についてアドバイスした。

実際の画像を用い具体的にアドバイス 実際の画像を用い具体的にアドバイス

この後、藤本部長が司会・講評役を務め、参加者の所属施設で撮影した超音波画像を題材に画像評価を実施。1枚ずつスクリーンに写しながら「画像は1画面に1枚だけ記録するようにしてください」、「腫瘤を撮る場合は周辺の正常組織の状態もわかるように撮影してください」、「できるだけ腫瘤を画面の中央に入れて撮ってください」など具体的なアドバイスを次々に送った。終了後、学習効果を測るためにミニテストと解説を行いセミナーは閉会。

田中部長は「乳がん診療はチーム医療で、臨床検査技師の力が大きいです。部会として、できるところから医療の質の向上に向けて取り組みを進めていきたい」と意欲的。参加者のひとりは「超音波画像の撮り方について具体的な指摘がとても参考になりました。明日からの検査に生かせそうです」と手応えを得た様子だった。6月には同様のセミナーを北海道で開催予定だ。

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