2019年(令和元年)8月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1197 三面
庄内余目病院
虐待の見抜き方
東大阪病院 橋爪院長が研修で講演
虐待をテーマに講演する橋爪院長
庄内余目病院(山形県)は6月21日、虐待をテーマとする研修会を開いた。講師を務めたのは東大阪徳洲会病院の橋爪慶人院長。大阪府児童虐待等危機介入援助チーム委員も務める。庄内余目病院の各部門の職員をはじめ、徳洲会の関連施設や地域の医療・福祉機関から計120人の参加者が集まった。
橋爪院長は「医療機関における虐待の見抜き方と対応のコツ――子どもを救うためにできること――」と題し講演。2004年の児童虐待防止法改正で通告義務の範囲が拡大、「虐待を受けたと思われる場合」も対象となった。
以来、児童相談所への相談・通告数は年々増え続けている。橋爪院長は東京都や千葉県、大阪府、北海道などで起こった痛ましい虐待事件に言及し「他の地域で起こった出来事として見るのではなく、どこでも起こり得ると意識することが重要です」と訴えた。
続いて橋爪院長は、医療機関受診時の傷の状態や挫傷の発生部位、熱傷の特徴などに関し、虐待の可能性を鑑別する方法や、写真撮影など記録を残す際のコツについて解説。さらに受傷状況(ヒストリー)の聞き取りについては受傷日時や発生場所、子どもと一緒に誰がいたのか、けがが起こる前にどのようなことがあったのか、などをポイントとして列挙した。
聞き取りのピットフォール(落とし穴)にも触れ、養育者の発言は内容だけでなく、その変遷も重要であるため、言葉どおりに記録することなどの大切さを強調。このほかネグレクト(育児放棄)や揺さぶりによる急性硬膜下出血、虚偽性障害の一種であるミュンヒハウゼン症候群、うつぶせ寝による乳幼児突然死症候群などを説明した。
最後に橋爪院長は「虐待をしてしまう親の多くは、鬼のような人間ではなく、ごく普通の人間でした。虐待があっても子どもにとっては、そこが唯一の家庭です。我々の役割は、その家庭をより良くするのが目的。支援する立場で手を差し伸べ、虐待に落ち込もうとしている家庭を拾い上げようとする姿勢が大切です」と訴えた。