徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)8月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1197 四面

読み解く・読み得“紙上医療講演”㉗
不眠症改善薬の付き合い方

食事や運動と並び健康的な身体づくりに欠かせない睡眠。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2017年)によると、「睡眠で休養が十分にとれていない」と答える日本人成人の割合が年々増加するなど、不眠で悩んでいる方は少なくありません。改善策のひとつに睡眠薬がありますが、適切に服用しなければ、効果が得られないどころか、かえって心身に悪影響を及ぼすケースもあります。今回は日本医療薬学会指導薬剤師の資格をもつ瀬戸内徳洲会病院(鹿児島県)の宮坂善之・副薬局長が、不眠に関する薬との付き合い方を解説します。

宮坂善之・瀬戸内徳洲会病院(鹿児島県)副薬局長 宮坂善之・瀬戸内徳洲会病院(鹿児島県)副薬局長

近年、日本人成人の約5人に1人が不眠を訴え、約20人に1人が睡眠薬を服用していると言われています。睡眠は簡単に言うと、脳内の睡眠や覚醒を調節するスイッチ、昼夜のサイクルを認識する体内の仕組み(体内時計)が深く関係しており、これらのバランスが崩れると、不眠を引き起こします。

不眠には①寝つけない(入眠障害)、②途中で目が覚めてしまう(中途覚醒)、③朝早く目が覚める(早朝覚醒)、④寝た気がしない(熟眠困難)―の4つのタイプがあり、これらが混在している場合もあります。

図 睡眠薬のタイプと特徴 図 睡眠薬のタイプと特徴

ただし、こうした状態だけでは不眠症とは言えません。ただ寝つきが悪い、夜中に起きてしまうということではなく、日中、生活するうえで何らかの支障を来して初めて不眠症と診断されます。

日中の生活に支障がなければ安易に睡眠薬を服用せず、まずは生活習慣を見直すことが大切です。2014年に厚労省が「健康づくりのための睡眠指針」を発表しているので、それを参考に眠れない原因を考え、生活習慣を工夫すると良いでしょう。不安、痛み、頻尿、睡眠時無呼吸症候群など、ほかの疾患や服用している薬が不眠に関係している場合もあります。

それでも睡眠が改善せず、日中の生活に支障を来す場合は薬を用いることになります。現在、日本で頻用される薬は大きく4つに分類されます。睡眠を促す「ベンゾジアゼピン系薬」または「非ベンゾジアゼピン系薬」、覚醒を抑える「オレキシン受容体拮抗薬」、体内時計を調節し睡眠と覚醒のバランスを整える「メラトニン受容体作動薬」があり、不眠のタイプに合わせて薬を選択します(図)。

また、薬を服用するタイミングも重要です。時々、患者さんから「薬を飲んでも眠れない」、「薬が効かない」と相談を受けることがありますが、多くの薬は服用後10~30分ほどで効果が得られるめ、就寝直前に服用することで改善できる場合もあります。

最後に、どの薬にも副作用があり、日中まで続く眠気や倦けん怠たい感、直前の記憶障害、突然の中断による強い不眠、筋弛し緩かんによる転倒、常用薬との組み合わせなどに注意が必要です。就寝前の飲酒は途覚醒が増え、薬との飲み合わせも悪いため、お勧めしません。

薬の効果が得られないと感じた時は、自己判断で追加服用はせず、服用のタイミングの見直しや不眠のタイプに応じた薬かどうか、必ず医師や薬剤師に相談して、自分に合った薬との付き合い方を心がけるようにしましょう。

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