徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)7月22日 月曜日 徳洲新聞 NO.1194 四面

葉山ハートセンター
地域の感染対策強化
介護施設を巻き込み実践

葉山ハートセンター(神奈川県)は地域の介護施設などと連携し、インフルエンザや誤嚥(ごえん)性肺炎、尿路感染症など感染症の予防に努めている。感染症が原因で入退院を繰り返す介護施設の入所者さんが少なくなかったことから、同センターは看護部が中心となり、施設を訪問して感染対策の具体策を指導したり、同センターで感染対策の勉強会を開いたりし、地域の感染対策のレベルアップに尽力している。

施設を訪問し直接アドバイスも

「地域密着型の病院と感じていただきたい」と長嶋・看護部長 「地域密着型の病院と感じていただきたい」と長嶋・看護部長

葉山ハートセンターは2017年6月に現在の田中江里院長が就任。心臓の専門病院というそれまでのイメージにとらわれず、より地域に密着し、地域医療に貢献していく病院を目指す方針を打ち出した。その一環で、救急医療を強化することと並んで取り組んだのが、周辺に介護施設が多いという地域特性をふまえ、内科系の患者さんの入院を積極的に受け入れるということだった。

同センターの長嶋亮子・看護部長は「総合内科的に幅広い患者さんの受け入れをスタートしました。すると、地域の介護施設から誤嚥性肺炎や尿路感染症、インフルエンザといった感染症で入院してくるご高齢の患者さんが多いことに気付きました」と振り返る。

続けて「そうした入院患者さんのなかには、治癒後に施設に戻り、再び感染症を発症して、入退院を繰り返す方もいました。このままではいけない、何とかしようと考えましたが、地域の介護施設が、どのようにして清潔な環境を保ち、そのためにどのような教育を行っているか知りませんでした。このため、まずは感染症による入院患者さんの多い施設を訪ね、現状確認のためのヒアリングを行うことから始めました」と話す。

介護施設の入所者さんが入院する際は、施設のスタッフも付き添いが必要となる。限られたマンパワーのなかでスタッフが減ると、他のスタッフにかかる負担が大きくなり、ひいては入所者さんへの介護の質の低下につながる恐れがある。

地域の介護施設職員向け感染対策勉強会 地域の介護施設職員向け感染対策勉強会

予防・対策できる感染症であれば、未然に防ぐに越したことはない。入所者さんの健康維持に寄与するだけでなく、集団感染の芽を摘むことになり、施設スタッフの業務負担の軽減、さらには入院医療費の発生回避による医療保険財政の維持にも貢献することができるためだ。

「はじめは、どのような反応があるか不安もありましたが、施設の方からは『施設内で勉強会を開いてはいたのですが、どうしてよいか、正直わかりませんでした。病院に相談できるとは思っていなかったので助かります』と言っていただきました」(長嶋・看護部長)

こうして地域の介護施設とともにスタートした感染対策。スタート当時、冬場だったことから、はじめはインフルエンザ対策をテーマに実施。同じように入院の多い施設を中心に、施設長や介護士、ケアマネジャーなどを同センターに招いて勉強会を開催した。手指衛生の方法や防護具(マスク、手袋、ガウン、ゴーグルなど)の使い方など基本的な事項から、感染症発生時の管理者の対応、職員が気を付けるべき事柄などをレクチャー。

隣接する逗子市合わせ参加施設数は延べ50に

インフルエンザ以外にも、介護施設で発症が見られる感染症をテーマに取り上げた。たとえば尿路感染症に関してはオムツの当て方など、誤嚥性肺炎に関しては口腔(こうくう)ケアの方法や誤嚥を起こしにくい食べさせ方、観察のポイントなどを情報共有した。

徐々に勉強会の評判が伝わり参加施設が増えていった。これまでに葉山町と、隣接する逗子市とを合わせ、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、有料老人ホーム、訪問看護ステーションなど延べ50施設からの参加があった。

「当センターでの勉強会以外にも、同意の得られた数施設を対象に、ラウンドをさせてもらいました。介護施設では入所者さんが集団で生活していますので、感染予防のためには、たとえば、お風呂場のマットなど、できるだけ共有物を減らし、発熱やせき、嘔吐(おうと)、下痢など感染の恐れを示す症状が見られた時には、別室で休んでもらうことなどをアドバイスしています。また、ラウンドとあわせて、施設内のスタッフ向けにオムツの当て方などに関する講習会を開きました」(長嶋・看護部長)

こうした勉強会やラウンド活動を行った結果、感染症により最も受診者が多かった施設から、翌年の受診者数が大幅に減少。具体的には2017年度の外来患者数は52人だったが、18年度は12人と4分の1以下に減った。外来患者数にて応じ入院患者数も相応に減少している。

「施設のスタッフの方が真摯(しんし)に取り組んだ結果だと思います。発見が遅くなり発症から2~3日も経つと、だいぶ悪化してしまいますが、感染症も早期に発見することで、入院まで至らず外来診療のみですむこともあります」と、長嶋・看護部長は予防と同時に入所者さんをしっかり観察することを通じ、異変に一刻も早く気付くことが大切だと強調。

「受診すべきか迷ったら躊躇せず電話ください」

感染対策で地域の中心的な役割を果たす葉山ハートセンター 感染対策で地域の中心的な役割を果たす葉山ハートセンター

一方で、予防策を講じたとしても感染を完全になくすのは難しい。このため高熱が出るなど感染を疑う症状が出た際には、様子を見て時間を消費するのではなく、すぐに医療機関を受診するよう施設のスタッフに伝えているという。

「受診すべきかどうか迷ったら、躊躇(ちゅうちょ)せず当センターに電話をください、と日頃話しています。住民の方々や周辺の施設に入所する方々、施設のスタッフの方々に、地域密着型の病院であると感じてもらえるよう、今後も感染対策に限らず、院外に出向いたりしながら、さまざまな活動を続けていきたい」と長嶋・看護部長は意気軒高だ。

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