徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)7月22日 月曜日 徳洲新聞 NO.1194 三面

徳洲会消化器がん部会
多彩なテーマで研鑽
第4回消化器がん研究会開く

徳洲会消化器がん部会は6月15日、徳洲会グループ全体の消化器がん診療のスキルアップを目的として、第4回消化器がん研究会を大阪市内で開催した。オンコロジー(腫瘍学)プロジェクトの一環。全国の徳洲会病院から医師や薬剤師、看護師、研究スタッフら約40人が参加。幅広いテーマで演題発表を行い、知見を共有。参加者は一つひとつの発表を興味深そうに聴講し研鑽(けんさん)に務めた。

グループ内の横のつながり強化

「相談し合える関係を構築しましょう」と下山部長 「相談し合える関係を構築しましょう」と下山部長

冒頭、徳洲会消化器がん部会の部会長を務める湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の下山ライ外科部長兼オンコロジーセンター長が挨拶。

「消化器がん診療に取り組む皆さんの知見をもち寄り、共有していきたい。この研究会ではグループ内の横のつながりを強化するのも大きな目的です。相談し合える関係を構築していきましょう」と呼びかけた。

幹事を務めた冨田部長 幹事を務めた冨田部長

今回、幹事を務めた岸和田徳洲会病院(大阪府)の冨田雅史・外科部長の挨拶に続き、「オープニング講演」として、徳洲会オンコロジープロジェクトの新津洋司郎顧問(札幌医科大学名誉教授)が「KRAS変異、BRAF変異癌の新しい治療戦略」をテーマに講演。KRAS遺伝子変異のあるがん組織では、さまざまながん種で過剰に発現しているGSTP1という酵素が高率で陽性を示す。これをふまえ新津顧問は札幌医大や北海道大学で、KRAS遺伝子変異がんに対するGSTP1の役割を研究。GSTP1の発現を抑制することで、KRAS変異がん細胞の造腫瘍性を抑制することにつながるのを発見した。これらの知見をもとに昨年、米国で肺がん治療薬の第1相試験を開始したことを紹介。BRAF変異がんの研究も報告した。

術前放射線化学療法について発表する古河顧問 術前放射線化学療法について発表する古河顧問

一般演題では、まず松原徳洲会病院(大阪府)の古河洋・外科顧問が「スキルス胃がん(4型胃がん)に対する術前放射線化学療法のこころみ」と題し発表。古河顧問は自身が客員教授を務める近畿大学で取り組んでいる術前放射線化学療法の臨床試験(Ⅰ/Ⅱ相試験)に言及。根治切除可能な4型または大きな3型を対象とした試験で20例実施。結果はグレード3以上の血液毒性は10%、同非血液毒性25%、CR(完全奏効)10.5%、RR(奏効率)100%、3年生存率70%。「スキルス胃がんに対する術前放射線化学療法は良好な奏効率を得ました」とまとめた。

UESDを解説する永田部長 UESDを解説する永田部長

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の永田充・内視鏡内科部長は「十二指腸腫瘍に対するUnderwaterESD(UESD)の有用性」をテーマに発表。十二指腸ESDは従来、送気下で行われてきたが、術中穿孔(せんこう)や遅発性穿孔のリスクが高いことから、手技上の工夫が求められていた。

UESDは消化管の内部を生理食塩水で満たしてESD(内視鏡的粘膜下層剝離(はくり)術)を行う。これにより①視野改善効果、②浮力や水圧により剝離面の展開が容易になり術野を確保しやすい、③吸熱効果―といったメリットが生じる。動画を供覧し手技のポイントなどを解説。「UESDは送気下ESDにない利点があり十二指腸腫瘍の治療に有用です」と結んだ。

臨床試験案を説明する関センター長 臨床試験案を説明する関センター長

吹田徳洲会病院(大阪府)の関明彦・腫瘍内科がんカテーテル治療センター長は「大腸癌肝転移に対するsalvage TACE~直近の成績と臨床試験の立案」をテーマに発表。TACEは高濃度の抗がん剤と極小のビーズ(塞栓物質)を、転移巣の栄養動脈からカテーテルで腫瘍に注入する治療法を言う。

関センター長はあくまでもSalvage line(救済治療)として実施していることを説明。治療成績に言及し、奏効率や病勢制御率が高く、Salvagelineとして十分な生存期間が得られたことから、グループ内の病院で連携し、安全性などを検討する臨床試験を行いたい意向を表明。試験草案を説明し「興味のある施設がありましたら、ぜひお声がけください」と呼びかけた。今後、臨床試験の内容や運営形態について、さらに検討を行い、実施を目指す考えだ。

「がん疼痛で悩んだ時はご相談ください」と服部・統括部長 「がん疼痛で悩んだ時はご相談ください」と服部・統括部長

中部徳洲会病院(沖縄県)の服部政治・疼痛(とうつう)治療科統括部長は「がん疼痛治療の最前線とMobileExpert構想」と題し発表。各種の神経ブロック法や脊髄(せきずい)鎮痛法など専門的な疼痛治療を紹介したうえで、「消化器がんでは、医療用麻薬でも除痛できずにADL(日常生活動作)が低下してしまう症例があります。ADL低下前の神経ブロック療法実施が重要です」などと訴えた。

医師が病院間を移動し治療にあたるのがMobileExpert構想だ。「グループ病院であれば、当科医師が直接うかがって専門的な疼痛治療を実践できます。がん疼痛で悩んだ時にはご相談ください」と呼びかけた。

膵がんの新しい発がん経路を説明する水上部門長 膵がんの新しい発がん経路を説明する水上部門長

札幌東徳洲会病院医学研究所の水上裕輔・がん研究部部門長は「膵管(すいかん)内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)を母地とする膵発癌の分子経路」をテーマに発表。IPMNは腫瘍性嚢胞(のうほう)のなかで最も頻度が高く、浸潤がんに進展することがある。

IPMN関連膵がんはIPMNががん化するIPMN由来がん(Sequential type)と、IPMNとは連続性のない併存がん(De novo)に大別される。同研究所を中心とする多施設共同研究の結果、併存がんで、IPMNと浸潤がんの距離が5mm以下の近接する例で共通の遺伝子変異が多かったことなどから、IPMNと同一起源の病変が、異なる遺伝子異常を獲得し枝分かれしていく新しい発がん経路(Branch-off)があると考えた。

「当院では遺伝子解析技術を応用し、リスク評価や早期診断のため、リキッドバイオプシー(液体生検)の臨床研究などに取り組んでいます」とアピールした。

「C型肝炎は内服薬のみで治療可能に」と平松医師 「C型肝炎は内服薬のみで治療可能に」と平松医師

和泉市立総合医療センター(大阪府)の平松慎介・腫瘍内科医師は「C型肝炎治療~最近の話題~」と題し発表。インターフェロン治療や抗ウイルス薬、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の治療効果や作用機序を解説し、「2014年にDAA内服のみの治療が登場し、C型肝炎治療は劇的に変わりました。毎年のように新薬が発売され、インターフェロンを用いず、内服薬のみで副作用が少なく、ほぼウイルスを排除できるようになりました」とまとめた。

最後に特別レクチャーとして、武蔵野徳洲会病院(東京都)の佐々木康綱オンコロジーセンター長が「がん薬物療法とバイオマーカー:コンパニオン診断からゲノム医療へ」と題し講演。

教育システム構築の重要性を強調する佐々木センター長 教育システム構築の重要性を強調する佐々木センター長

コンパニオン診断薬は、特定の医薬品の有効性または安全性の向上などを目的として使用する医薬品。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬では腫瘍細胞の遺伝子変異が、臨床効果を予測するバイオマーカー(生体指標)として認識されており、これらの評価方法としてコンパニオン診断の概念が登場。この考え方に基づき、治療薬の候補から最適な薬剤を選択するため、一度に複数の遺伝子変異を調べるのが遺伝子パネル検査だ。

「海外の動向をふまえ、日本でも同検査による薬剤選択の可能性を模索するプロジェクトが始まっています。今年6月には同検査2製品が保険適用を受けています」と現状を伝え、最後に徳洲会グループのがん医療発展のため、教育システムの構築の重要性を強調した。

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