徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)6月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1190 四面

湘南鎌倉病院
腎移植が95例に到達
初の腎移植家族会総会を開く

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は6月8日、院内講堂で第1回湘南鎌倉腎移植家族会総会を開催した。これは同院で実施した腎移植のドナー(臓器提供者)やレシピエント(臓器受給者)、その家族からなる団体。同院は2012年12月に生体腎移植(健常な生体からの腎提供)、18年5月に献腎移植(死後、善意による提供)の1例目をそれぞれ実施、現在までに計95例を数える。会には40人超が参加し、腎移植について知識を深めた。

40人超の患者さんや家族が集まり第1回家族会総会 40人超の患者さんや家族が集まり第1回家族会総会

冒頭、小林修三・院長代行兼腎臓病総合医療センター長が挨拶。「腎移植を経験した皆さんが、元気でこの会場にいることが何よりも嬉しく、また長生きし、ずっと笑顔でおられることを望んでいます」と期待を込め、「お互いの情報交換だけでなく、同じ病気を抱えている全国の方々に、私たちが体験したことを伝え、勇気と希望を与えていけるようになれば良いと思います」と抱負を語った。

「腎移植を経験した皆さんが元気でいることが嬉しい」と小林・院長代行 「腎移植を経験した皆さんが元気でいることが嬉しい」と小林・院長代行

さらに「これからの医療は患者さんの視点が重要です。1年、命が延びることも大事ですが、それよりも本当の意味で生きる喜びのある暮らしが送れるかが大切です。そして、腎移植によって皆さんの生活が変わったと思いますが、いただいた腎臓を大切に使うための努力もしなければなりません。私たちも皆さんの要望に応えていくために、最善の努力をしていきます」と誓った。

「移植医療はドナー不足を克服していく医療」と三宅医長 「移植医療はドナー不足を克服していく医療」と三宅医長

講演会では、まず三宅克典・腎移植外科医長が「移植医療の過去・現在・未来」と題し講演。献腎移植について、これまで脳死後の臓器提供は本人の書面での意思表示が必須となるなど厳しい制限があったが、改正臓器移植法により、本人の意思が不明の場合は家族の承諾で臓器の提供が可能となったことを報告した。

ドナー拡大の取り組みにも言及。先進医療に条件付きで適用になった修復腎移植、HIV(エイズウイルス)感染者同士の移植など紹介し、今後の展望として、ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用した再生臓器による移植、革新的なゲノム(全遺伝情報)編集技術(CRISPR-Cas9) を用いる方法など説明した。「移植医療はドナー不足を克服していく医療です。啓発、行政、研究の各分野でのアプローチが重要です」とまとめた。

参加者と一緒に運動も

「腎移植後の感染症は早期診断が重要です」と日髙部長 「腎移植後の感染症は早期診断が重要です」と日髙部長

次に、須田健太郎・理学療法士(PT)が「腎移植後の運動について」をテーマに講演した。腎移植前は倦怠(けんたい)感により運動ができなかったり控えたりしている方が多く、また腎移植後は食欲増進や食事制限からの解放により、体重が増加しやすい傾向にあると強調。運動の必要性として、①筋力や体の機能維持、②生活習慣病の予防、③ストレス・不安の軽減――を挙げた。

これまで負荷の大きい運動は腎臓への血流を低下させ、腎機能を低下させる危険性があるとされていたが、近年は適度な運動が推奨されている。運動不足が引き起こすものとして、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、フレイル(体の予備力が低下している状態)、サルコペニア(筋肉量の低下)について説明した。

参加者と一緒にその場でできる運動を実践し「腎移植後は脱水により血清クレアチニン(腎機能を示す指標)が容易に上昇するため、こまめな水分補給が必要です。生活のなかに上手に運動を取り入れてください」とアドバイスした。

自作の曲『命綱』を歌い上げる木村主任 自作の曲『命綱』を歌い上げる木村主任

続いて、日髙寿美・腎移植内科部長が「腎移植後の感染症」と題し講演。腎移植後には免疫抑制療法が必要であり、感染症のリスクと隣り合わせとなる。移植後早期は手術にともなう創部感染、ドナー由来の感染、レシピエントの尿路系の保菌による感染などが多いが、移植後1~6カ月は免疫抑制療法が最大限に効果を示す時期であるため、日和見感染(免疫力低下による感染)が多いと指摘。サイトメガロウイルス、ニューモシスチス肺炎について詳説した。

移植後6カ月以降は肺炎球菌感染への注意を促し、ワクチン接種上の留意点を説明。「腎移植後の感染症は早期診断が重要です。かかった時の対応をきちんとすれば、必要以上に感染症に対し神経質になることはありません。規則正しい生活、手洗いやうがい、水分補給、そして排尿を我慢しないようにしましょう」と注意喚起した。

作詞した曲を披露

須田PTの講演では参加者と一緒に運動も実施 須田PTの講演では参加者と一緒に運動も実施

最後に、石垣島徳洲会病院(沖縄県)の木村美子・地域連携室主任がドナーとしての経験談を披露した。昨年11月に姉に腎臓を提供、「小林・院長代行から姉への腎臓提供を提案され、これが私の生きる希望になりました。私の分身である腎臓が姉の体内で生きている。『精いっぱい頑張ったね』と自分に言えるような生き方をしたい」と目を潤ませた。

また、木村主任は腎移植を啓発するための曲を作詞した。「腎移植を多くの人に理解してほしい、ドナーになることを考えてほしい、透析人生にならないよう健康に気を付けてほしい、こうした思いを伝えたいのです」と明かし、家族会総会のために作成した映像作品とともに、石垣島の音楽家が曲を付けた『命綱』を披露。「こぼれる涙もいつかは晴れる、あなたがいるから私もそこに、切るに切れない命綱」と感情を込めて歌い上げた。

休憩をはさみ、家族会総会を開催。会長や役員を選出、それぞれ挨拶した後、活動方針を確認した。①レシピエント会員、ドナー会員、家族会員の情報交換の場とする、②会員向け講演会、勉強会を企画、開催し会員のQOL(生活の質)向上、③会員向けに情報発信を行い会の活動を活性化、意見収集を行い会の運営に反映、④会員の経験を生かし外部に向け腎移植について啓発活動を行う――。また、家族会の愛称についてアンケートを取り、「湘南鎌倉KT(kidney transplant)会」に決まった。

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