徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)6月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1190 一面

避難所での災害関連死を防ぐ訓練
沖永良部病院 BHELP開催
島内の医療・保健・福祉従事者が研鑽

沖永良部徳洲会病院(鹿児島県)は5月18日、沖永良部島内でBHELP(ビーヘルプ)を開催した。BHELPは災害時に避難所で被災者や避難者が感染などで亡くなる“災害関連死”の防止を目的とした教育プログラム。日本災害医学会が考案し保健・医療・福祉関連業務に従事する人を対象に、全国各地で行っている。今回、同院が主催者となり、鹿児島県で初めて開かれた。同院の職員をはじめ沖永良部地区医師会会長や救急隊員、介護職員ら35人が参加した。

鹿児島県では同院が初めて実施

プログラムごとに話し合い各グループが発表 プログラムごとに話し合い各グループが発表

BHELPは発災直後から避難所での活動を効果的・効率的に実践することで、被災者が災害による直接死ではなく、避難所で感染やエコノミークラス症候群(旅行者血栓症)などで亡くなる“関連死”防止を目的とした教育プログラム。国際医療福祉大学大学院の石井美恵子・災害医療分野教授が日本災害医学会の理事として同学会に提案したのがきっかけで2017年に本格的に始まった。

原則、「地域で発災直後から支援者となり得る医療・保健・福祉関連の専門職、防災業務に従事する行政職員」を対象とし、医師や歯科医師、看護職、コメディカル、介護職、救急救命士、それらの受験資格を得ることができる教育機関の学生、行政職員などが対象。

表 BHELPの標準コースの主なプログラム

  • 自らの生命を守るための行動と備え
  • 災害対応に関する共通言語 CSCATTT
  • 発災直後の指定緊急避難場所での応急的な対応
  • 要配慮者対応の共通言語 CSCAHHH
  • 要配慮者の生命と健康を守るために
  • 避難所の生活環境アセスメント
  • 避難所で生じやすい健康問題と予防対策①②
  • 生活環境改善のためのレイアウト
  • 筆記テスト
  • 福祉避難所開設、福祉避難所の管理運営
プログラムは1日で終了するように構成され、災害対応時の原則をはじめ、傷病者の救護(トリアージ=緊急度・重症度選別)だけでなく要配慮者(関連死になりやすい高齢者や乳幼児)への適切な対応(ヘルスケアトリアージ)、健康維持に配慮した避難所の設営・運営などをテーマに学ぶ(表)。最後に筆記テストを行い、合格すれば修了証と認定証が授与される。

特徴的なのは、あらかじめ職種などが異なるようにグループ分けをし、講義と演習を繰り返しながら進めていくスタイル。参加者に考えることや協議を促すことで、地域の防災に対する意識付けと連携強化を図る。

渡慶次部長は沖永良部島で2回目の開催を示唆 渡慶次部長は沖永良部島で2回目の開催を示唆

沖永良部病院が主催したのは3月まで院長を務めていた中部徳洲会病院(沖縄県)の渡慶次賀博・呼吸器内科部長の意向。18年に台風被害で「島から食料がなくなりかけた」ことを受け、同年12月にはBHELPのインストラクターの資格を取得、「災害に対する地域の意識付けをしたい」と開催にこぎ着けた。

避難所での対応や環境整備の重要性を訴える石井教授 避難所での対応や環境整備の重要性を訴える石井教授

当日は石井教授をはじめ、渡慶次部長ら7人のインストラクターが来島。沖永良部病院の医師や看護師、事務職員をはじめ沖永良部地区医師会会長や救急隊員、保健師、介護職員、行政職員ら35人が参加した。

とくに盛り上がったのが、「生活環境改善のためのレイアウト」。避難所となる中学校の見取り図を配布し、「ラインマーカー」、「パイプいす」など学校にある備品が描かれたカードを使いながら、健康問題の予防や生活環境改善のためのレイアウトについて話し合った。各グループの発表では、たとえば応接室について「相談室として活用」、「女性専用の部屋とし、授乳や洗濯物を干す場所などに活用」と多様な意見が飛び交った。

2回目を開催する方針

中学校を避難所に想定した机上訓練では備品を生かしながらレイアウトを考える 中学校を避難所に想定した机上訓練では備品を生かしながらレイアウトを考える

最後に筆記テストを行い、全員が合格。参加した同院の藤野京子ケースワーカーは「地域全体で取り組めたことが良かったと思います」と笑顔。渡慶次部長は応募者が定員を大幅に上回ったことを受け、2回目の開催も示唆。「今回、参加できなかった方や、徳之島、与論島など近くの島の方も受けられるようにしたい」と意欲を見せた。

石井教授は「東日本大震災を経験し、日本の避難所に課題があることを実感しました。たとえば、イタリアでは冷暖房完備の大型テントに個室テントを設けたり、米国ではトレーラーハウスを避難所兼仮設住宅として使用したりするなど、人間らしい生活が送れるような環境が整えられています」と指摘。

「日本もすぐに変えることはできませんが、医療と行政の連携強化、介護職など地域の資源になり得る方が災害について学べる機会を設けることで、少しずつ課題解決を図っていきたいです」という。

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