2019年(平成31年)2月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1173 三面
日本マイクロサージャリー学会
徳洲会から10演題
第45回日本マイクロサージャリー学会学術集会が大阪府で開催された。徳洲会は特別企画やシンポジウムを含め10演題を発表。また、学会の翌日には湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の土田芳彦・副院長兼外傷センター長が世話人を務める湘南・札幌外傷整形外科研究所が、第7回重度四肢外傷マイクロサージャリーミーティングを開催した。
湘南・札幌外傷整形外科研究所 ミーティングも開催
再接着指術後の早期軟部組織再建を説明する佐藤医長
特別企画「マスターに聞く:世界で最初の切断母指再接着」では、札幌徳洲会病院の佐藤陽介・外傷センター医長が
「玉井zone V再接着指術後の軟部組織状態と早期軟部組織再建の有用性」と題し発表。玉井zone分類(切断指分類)の再接着指症例8例に関し、術後軟部組織状態と、その予後を調査した。
結果、zone Vの再接着指では多くが複数指切断かつ手部の挫滅(ざめつ)をともなうため、初診時に壊死(えし)の判断のつかない組織が多く、吻合(ふんごう)血管露出を懸念し大胆なデブリドマン(完全な汚染除去)をしにくいと考察。
また、初回術後に複数回の追加手術や、破綻した再接着指周囲の軟部組織に対し、皮弁による再建を要する例が多いと説明した。最後に、zone Vでは血管吻合部直上の軟部挫滅が血管閉塞につながりやすく、「早期の軟部組織置換が有用です」とまとめた。
大屋医師はデグロービング損傷の治療戦略
同じく「マスターに聞く:マイクロサージャリーを応用した上肢重度損傷治療の回顧」では、湘南鎌倉病院の大屋博充・外傷センター医師が
「手部デグロービング損傷の治療戦略」と題し発表。デグロービング損傷とは、回転しているローラーやベルトに前腕や手を巻き込まれ、皮膚が手袋を脱ぐように全周性に剝脱(はくだつ)する損傷。発表では同院で経験した7例について調査した。
治療は再血行化や皮弁術などだが、再血行化が困難な場合には皮弁術による再建となる。今回の調査では再血行化した症例はなく、全例で皮弁術による再建を実施。母指は機能上、他指とは独立して再建するべきであり、今回の母指損傷例は全例で他指損傷を合併していたため、すべて逆行性橈側(とうそく)前腕皮弁で再建したと説明した。さらに、「広範な損傷には鼠径(そけい)+下腹壁皮弁の2双皮弁が有用ですが、合併症には注意が必要です」と訴えた。
シンポジウム「四肢重度外傷Ortho-Plastic Sur gery How I do it?」では、札幌病院の辻英樹・副院長兼外傷センター部長が座長のひとりを務め、同院の松井裕帝・外傷センター部長が整形外科医の立場でシンポジストとして登壇、
「重度四肢外傷に対するOrtho-Plasticapproach~Fix & Flapにおける骨内固定時期の検討~」をテーマに発表した。
Fix & Flap症例を検討する松井部長
Ortho-Plastic approa chとは整形外科医と形成外科医のコラボレーション治療。発表では、同院におけるFix & Flap(骨再建と軟部組織再建を同時に行う治療)症例53例を調査し、治療戦略を検討した。
複雑な関節内骨折の再建は長時間手術と過大侵襲により感染を惹起(じゃっき)する可能性があり、感染併発症例では、感染巣の掻爬(そうは)とともに、破綻した軟部組織再建を先行しなければ感染の鎮静化を得られにくいと説明。「その際、深部組織再建と軟部組織再建を段階的に施行し、手術時間の短縮と手術侵襲の軽減による術後合併症リスクを減らす試みを行っています」とアピールした。
また、同時再建が理想としながら、骨接合を先行するFix followed by Flapと軟部組織再建を先行するFlap followed by Fixを使い分けることが治療戦略上、有用であると強調した。
ほか一般演題では湘南鎌倉病院、札幌病院から合計で7演題の発表があった。
学会翌日の勉強会では辻副院長が座長
学会の翌日、第7回重度四肢外傷マイクロサージャリーミーティングが開催された。これは土田副院長が世話人を務める湘南・札幌外傷整形外科研究所による勉強会。整形外科医と形成外科医のコラボレーション治療に関し、全国の四肢外傷治療にかかわる専門家らが討論を深めた。
座長は辻副院長と京都第一赤十字病院の奥村弥・整形外科副部長が担当した。10演題の症例発表があり、そのなかで発表者は自ら課題を挙げ、参加者は課題に基づきディスカッションを展開。各症例とも治療の選択やタイミングなどに関し、整形外科医と形成外科医がそれぞれの立場から意見を述べた。
最後に辻副院長が挨拶。「全国の四肢外傷にかかわる医師と意見交換ができ、非常に濃い時間を過ごすことができました。本日、学んだことを日々の診療に生かしていただき、また第8回ミーティングで議論を展開できればと思います」と呼びかけた。