徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

東上 震一(ひがしうえしんいち)(医療法人徳洲会副理事長 岸和田徳洲会病院院長(大阪府))

直言 生命いのちだけは平等だ~

東上 震一(ひがしうえしんいち)

医療法人徳洲会副理事長 岸和田徳洲会病院院長(大阪府)

2019年(平成31年)2月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1173

やりがい・誇り・幸せ感じられる現場
つくり徳洲会のさらなる拡大と成長を
仕事の究極の目的は一体感や達成感の現出

「楽しくなければ頑張れませんよ。先生の言葉は、僕なりに翻訳してスタッフに話していますから」

これは先日、岸和田徳洲会病院救命救急センター長である鍜冶有登(かじありと)先生が、私に話した言葉です。肩の力が抜けた彼の軽やかな笑顔に、自分自身が知らぬうちに、力んで鞭(むち)をふるう騎手のように、皆に頑張れと接していたことに気付かされました。

「中途半端な苦労はしんどいだけ。同じ苦労するなら一切断らずに救急対応して、結果として大阪最多の救急応需になれば評価も得られるし、何より地域の人が一番喜んでくれる」

私としては当たり前すぎるこの言葉も、受ける側からすれば励ましというより、頭ごなしに発破をかけられたことになっていたのです。思い返せば30年前、駆け出しの心臓外科医として必死に手術に取り組んでいた頃、手術中でも外線の受話器を取って、「はい、大丈夫です。すぐ送ってください」と答えていた私の姿を、当時は、非常勤の麻酔科医として見ていた彼が、咀嚼(そしゃく)し、翻訳してスタッフに伝えてくれていたのです。誰かにやらされるのではなく、私も嬉々とした態度で電話に応対していたのだと思います。

楽しいことであれば少々の苦労も楽々と越えて行ける

楽しくなければ頑張れない、頑張り続けられないことは自明のことなのです。人間はこうあるべきだとか、医師としてこうだとか、おおよそ理性や理詰めで考えたことだけで、人間はいつも行動できるわけではありません。私にとって、当時35歳という若さで自由に自分の裁量で手術を行えることが本当に楽しかったのです。楽しいことであれば少々の苦労も人間は楽々と越えて行けます。私は、そして私の心臓外科チームは楽しみながら成長したのです。

ロシアの文豪であるドストエフスキーは、『死の家の記録』のなかで究極の拷問(ごうもん)という話を記述しています。それは「半日かけて穴を掘らせて、また半日かけてそれを埋めさせる」というものです。人間はひとりで行う無意味な労働には耐えられない生き物です。たとえ穴を掘って埋めるだけの作業であっても、それを複数の人が力を合わせて掘り方を工夫したりしてやるならば、そこに、ある種のやりがいを見出したり、工夫したことへのちょっとした称賛を喜ぶ気持ちが生じたりするものです。

ほかの人とかかわりながら何かを成し遂げる時、結果や成果の如何にかかわらず、助け合ったり励まされたり、皆で力を合わせて何かをする行為そのものに喜びや楽しみ、満足を感じられるのが人間の特性のように思います。ですから仕事の究極の目的は、結果として利益を求めることではなく、仲間でつくり上げる一体感や達成感といったポジティブな感情にあるのかもしれません。人間が仕事に求めているのは、突き詰めれば「コミュニケーション」であり、やったことに対する肯定的な反応なのです。自分の行いや努力が評価されるなら、どんな労働であれ愉(たの)しく感じるのです。

私たちの最大の責務は優秀なスタッフの育成

徳洲会グループでは毎月、巡回指導という形で各病院・施設を訪問しています。各部門ごとにグループの他病院のスタッフと協力して検証し合うシステムです。スタッフ個々人が専門家としての知識を強化するうえでも非常に役立つものと思います。ただ、巡回指導の性格上、最終的な講評が増収すべき医業収益や、削減可能な経費についての助言に重きを置かざるを得ないことに限界を感じています。

徳洲会グループの目的は、あくまでも利益の追求ではなく「理念にもとづく医療・介護を離島・へき地はもとより全国に届け、また望まれるなら国境をも越えて行くこと」です。そのためには多くの優秀なスタッフを育てていかなければなりません。これが私たちに課せられた最大の責務です。人材育成には時間がかかります。それを斟酌(しんしゃく)できる余裕が私を含めたグループ指導部には求められています。

コメディカルの新人教育に十分な時間を割いたとしても、私たちの経営基盤は、それによる業務量低下が影響するような軟弱なものではないはずです。約3万2000人に上る仲間と力を合わせて、仕事にやりがい、誇り、幸せを感じられる医療・介護の現場をつくり上げ、徳洲会グループをさらに拡大、成長させていくのが私たちの目標です。皆で楽しく頑張りましょう。

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