2018年(平成30年)12月3日 月曜日 徳洲新聞 NO.1162 一面
降矢・岸和田病院心臓血管外科医長
論文が日本冠疾患学会優秀賞
CABG後再開心術テーマに
「今後も情報発信に努めたい」と降矢医長
岸和田徳洲会病院(大阪府)の降矢温一・心臓血管外科医長は、日本冠疾患学会論文賞の優秀賞を受賞した。11月16日から2日間、熊本県で開催された第32回日本冠疾患学会学術集会で表彰式が行われた。
タイトルは「冠動脈バイパス術後再開心術の傾向と遠隔成績」。2017年6月発行の日本冠疾患学会雑誌23巻2号に掲載された論文。概要を紹介する。
胸骨正中切開による心臓・胸部大血管手術後の再開胸手術は、技術的な困難をともなうため通常の手術よりも死亡率は高い傾向にある。弁膜症疾患や大動脈瘤(りゅう)など再手術を要する病態が増加傾向にあることをふまえ、初回手術で冠動脈バイパス術(CABG)を施行した患者さんに対する再開胸手術の傾向と成績を検討した。
1994年から2014年に同院で施行したCABG後の再開胸による心臓・胸部大動脈手術は127例。再手術の原因疾患は狭心症や心筋梗塞など冠動脈疾患、大動脈弁狭窄(きょうさく)症、僧帽弁閉鎖不全症、胸部大動脈瘤など。
再手術の内訳は冠動脈疾患に対する再CABGが56例と最多で、大動脈弁置換術が22例、僧帽弁形成術または置換術が12例、胸部大動脈人工血管置換術が12例だった。術式ごとに死亡率、生存率、主要心脳血管イベントの分析を行った。
その結果、「緊急手術」のみが病院死亡のリスクであることが判明。再手術例全体の生存率は1年77.4%、5年61.5%。術式別では再CABG群が他群に比べ有意に良好な傾向を示した。
海外では「緊急手術」、「活動期感染性心内膜炎」、「心筋梗塞後」、「年齢(70歳以上)」、「腎不全」、「再手術回数」などを病院死亡リスクとして挙げている報告がある。一方で、今回の調査では「緊急手術」のみがリスクに該当し、疾患や術式、年齢など患者背景は影響していない結果となったことから、「(当院での手術は)緊急手術以外のハイリスク患者に対しても安定した手術結果であったと評価できる」と考察している。
受賞スピーチで降矢医長は「技術の修練とともに、今後も論文執筆や学会活動を通じて自己研鑽(けんさん)を重ね、当院の情報発信に努めていきたい」と抱負を語った。