徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)12月3日 月曜日 徳洲新聞 NO.1162 四面

回顧この1年 ①
徳洲会グループ
新治療 続々スタート
循環器・がん・リハビリなど

徳洲会グループは医療の質や安全性の向上、治療にともなう患者さんの負担軽減を図るため、日進月歩で進化する新しい医療技術・機器を積極的に導入、今年も新治療開始の動きが目立った。デバイス(医療機器)の開発が目覚ましい循環器領域では、高齢などさまざまな理由で外科手術が難しい患者さんに対し、カテーテル(管)による新たな低侵襲治療をスタート。さらに、がん温熱療法(ハイパーサーミア)やロボットスーツを活用したリハビリテーションなども開始、内視鏡用ホルダといった手術補助の医療機器を導入する取り組みもあった。

MitraClipは先端に特殊なクリップが付いている(画像提供:アボット ジャパン) MitraClipは先端に特殊なクリップが付いている(画像提供:アボット ジャパン)

外科手術が困難な重症の僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する低侵襲な治療法であるMitraClip(経皮的僧帽弁接合不全修復システム)を開始したのは湘南鎌倉総合病院(神奈川県)と岸和田徳洲会病院(大阪府)。湘南鎌倉病院はMitraClipの治験を行った国内6施設のひとつ。4月の保険適用に貢献した。

僧帽弁は心臓の左心房と左心室の間にある弁で、MRは僧帽弁が適切に開閉せず血液が逆流してしまう疾患。根治療法は、これまで外科手術(僧帽弁形成術・僧帽弁置換術)に限られ、高齢や併存疾患などが原因で手術困難な患者さんが少なくなかった。MitraClipは、こうした患者さんにカテーテルによる新たな根治療法の選択肢を提供する国内初の治療法だ。

MitraClip は脚の付け根にある大腿(だいたい)静脈からカテーテルを挿入、心房中隔穿刺(ちゅうかくせんし)を行い右心房から左心房にカテーテルを導き、X線透視や経食道心エコーガイド下で、先端に付いたクリップにより僧帽弁の前尖(ぜんせん)と後尖(こうせん)をとめ、逆流の改善を図る。

進化するデバイスを積極的に導入 進化するデバイスを積極的に導入

より低侵襲で患者さんに負担が少なく、エビデンス(科学的根拠)のある先進的な治療技術を臨床に取り入れていくのが徳洲会のスタンス。2013年10月に保険適用となった重症の大動脈弁狭窄(きょうさく)症(AS)に対する低侵襲治療であるTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)に関しては、すでに湘南鎌倉病院、千葉西総合病院、札幌東徳洲会病院、名古屋徳洲会総合病院、岸和田病院の5病院が実施しているが、今年新たに福岡徳洲会病院でもスタートした。

ASは心臓の左心室と大動脈の間にある大動脈弁の動きが悪くなる疾患。重症AS治療の第一選択は大動脈弁置換術(AVR)という外科手術だが、高齢であることや呼吸機能の低下などにより、体力的に外科手術の実施が困難な患者さんに対し行う低侵襲な治療法がTAVIだ。

さらに、今年7月に保険適用となったばかりのTAVinSAVも湘南鎌倉病院と札幌東病院で開始。これは、ASに対し外科手術で植込んだ生体弁が機能不全を起こした際の新しい治療法。すでに植込んである生体弁のなかに、カテーテルで新たな生体弁を植込む。TAVinSAVを実施できるのは、植込まれているのが生体弁の場合のみで、機械弁は対象外。

生体弁の耐久性は10~20年と言われ、石灰化や摩耗により徐々に劣化。そして弁が機能不全を起こすと、胸の痛みや息切れ、意識消失などを生じ、再び弁の置換が必要になる。ASの治療を受けた時点で高齢だった患者さんが、さらに10年以上経過したケースでは、開胸手術に耐えられず保存療法で様子を見るしかないことが多い。そのような場合に有用な治療法だ。

がん温熱療法を開始

高周波により、がん細胞を温めて死滅させたり化学療法・放射線療法の治療効果を高めたりするサーモトロンという医療機器を導入、がん温熱療法(ハイパーサーミア)を開始したのは福岡病院。

ハイパーサーミアは保険診療のひとつ。副作用が少なく、脳と眼球以外に発生した固形がんに対し実施できる。サーモトロンは、寝台に横になった患者さんを上下の円盤電極ではさみ、ラジオ波という種類の高周波で加温する装置。がん細胞は42~43度以上になると死滅する。この性質を利用したがん治療がハイパーサーミアだ。

温熱療法を行うサーモトロン 温熱療法を行うサーモトロン

こうした熱による直接作用に加え、がん細胞は38~40度前後に温まると細胞膜の透過性が亢進、細胞内への薬剤の取り込み量が増え局所濃度が高まり、化学療法の効果が高まる。加えて放射線療法の増感作用などの効果もあるとされる。

治療補助のための新たな医療機器を取り入れる動きもあった。八尾徳洲会総合病院(大阪府)は内視鏡用ホルダEMARO(Endoscope MAnipulator RObot)を導入。これは、ジャイロセンサーを頭部に装着した術者が、頭を上下・左右に傾けると、その動きを感知して内視鏡を操作する手術支援ロボット。通常はスコピスト(内視鏡を操作する医師)が担当する役割を同機がサポートする。術者は意図する内視鏡アングルを直感的な操作で得ることが可能になり、内視鏡を保持するホルダがぶれないため安定感のある映像を見ながら手術を進めることができる。

本態性振戦で自由診療

リハビリテーションで患者さんの動作に合わせHALがサポート リハビリテーションで患者さんの動作に合わせHALがサポート

先駆的に取り組んできた治療技術が今年、新たな局面を迎えている。湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)は院内倫理委員会の承認を得て、薬剤抵抗性の本態性振戦に対するMRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)の自由診療を開始した。

同疾患は自分の意思と関係なく手や首が震える。MRgFUSはMRI(磁気共鳴画像診断装置)で患部の位置と温度をモニタリングしながら約1000本の超音波を集束して患部を熱凝固する新しい治療法で、16年12月に薬事承認を受けた。同院は17年3月に本態性振戦に対する臨床研究を開始し、同年8月に予定の10例を終了した。

MRgFUSは外科的侵襲がなく、治療直後から効果を確認できるのがメリットだ。

MRgFUSは覚醒下で施行し、治療直後から効果を確認できる MRgFUSは覚醒下で施行し、治療直後から効果を確認できる

リハビリテーションの分野でも先進技術を積極的に導入。湘南藤沢病院、和泉市立総合医療センター(大阪府)、南部徳洲会病院(沖縄県)はロボットスーツ「HAL(Hybrid Assistive Limb)医療用下肢タイプ」を導入した。

HALは体に取り付けたセンサーが装着者の動こうとする「意思」を皮膚表面に流れる微弱な生体電位信号として感知し、装着者の動作をアシスト。筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄(せきずい)性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、シャルコー・マリー・トゥース病など8疾患が対象で、16年4月に保険適用になっている。

HALを用いて「歩く」動作をアシストした時、「歩けた」という感覚のフィードバックが脳に送られる。これにより脳は「歩く」ために必要な信号の出し方を少しずつ学習していく。こうしたメカニズムも、足の不自由な方がHALを装着しなくても歩くことができるようになるための一歩につながる。

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