徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)7月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1092 一面

肺塞栓重症化予防へ日本初
新しい下大静脈フィルタ使用
吹田徳洲会病院

吹田徳洲会病院(大阪府)は6月2日、肺塞栓症を発症し、今後、重篤化のリスクが高い患者さんに、新しい下大静脈(IVC)フィルタを日本で初めて使用した。同フィルタは厚生労働省の承認を経て6月1日に保険適用となったばかり。肺塞栓症は生命に危険が及ぶこともある疾患で、重症例の治療をより低リスクに行える同フィルタの導入意義は大きい。

長期留置後も回収は低リスク

新フィルタ導入を決めた澁谷・心臓血管外科部長 新フィルタ導入を決めた澁谷・心臓血管外科部長

肺塞栓症とは、血管内の血栓がはがれるなどして突然、血管が閉塞する静脈血栓塞栓症(VTE)の部分症のひとつ。

近年、肺塞栓症をひとつの独立した疾患としてではなく、下肢や骨盤内などの深部静脈に血栓ができる深部静脈血栓症(DVT)と、それによって引き起こされる数々の連続した病態の一部という疾患概念が登場し、注目を集めている。

肺塞栓症は、下肢のDVTなどから遊離した血栓が血流にのって移動し、肺の血管を詰まらせることがあり、重症の場合は生命に危険が及ぶ。このため、すでに血栓がある、もしくは周術期など血栓形成リスクが高い患者さんには予防策が必要だ。

第一選択は薬物療法で、抗凝固薬が有用。しかし、血栓が広範囲にある、抗凝固薬に禁忌がある、抗凝固薬の効果が薄い場合などには、下大静脈(血栓のできやすい下肢と肺の間にある大きな血管)にフィルタを留置し、流れてきた血栓を物理的にキャッチする予防法を選択することがある。

日本では過去の適応の甘さへの反省から、近年、IVCフィルタの使用が厳格化。吹田病院に関しては以前から非常に厳しい適応判断の下、同フィルタを使用している。

同フィルタは突然死の原因にもなる急性肺塞栓の予防には適しているものの、長期間体内に留置すると、かえって塞栓など合併症を引き起こすこともあり、予防の必要がなくなれば速やかな回収が必要だ。

従来のフィルタは長期間留置すると、フィルタと体内組織が癒着(炎症によりくっつく)、回収しきれなくなるめ、安全に回収できる期間は数週間程度が目安。

フィルタがキャッチした血栓は薬剤で融解させるが、この程度の期間では融解しきれないこともあり、従来品を使用する際は、塞栓リスクが残っている状態でフィルタを回収するか、癒着のリスクを冒して留置を継続するか、難しい選択を迫られていた。

製造方法を工夫し、より壊れにくくなったIVCフィルタ 製造方法を工夫し、より壊れにくくなったIVCフィルタ

新しいフィルタは取っ手部分とフィルタが一体となっているため壊れにくく、患者さんの状態に応じて留置期間を延長することが可能で、より低リスクに肺塞栓を予防することができる。

IVCフィルタをいまだ長期留置する医療機関もあるが、吹田病院では全例回収が基本方針。同フィルタの導入を決定した澁谷卓(しぶやたかし)・心臓血管外科部長は、「新フィルタは挿入手技の難易度や侵襲の程度などについては従来品と変わらず、長期間留置後も壊れることなく回収可能というメリットだけが増えます」と、使用の意義を強調する。

こうした医療情報の有無は、時に患者さんの生死を分けることもあり、情報のアップデートは医療者の重要な役割のひとつ。同院心臓血管外科スタッフは澁谷部長、金香充範院長を含め全員が大阪大学医学部心臓血管外科の出身で、「阪大医学部附属病院とのパイプを生かし、今後も最新情報を収集、適宜、診療に取り入れ、安全性向上を図りたい」と澁谷部長。

吹田病院で人手が必要な際には阪大病院から応援医師が駆け付け、最先端の医療を共同で行うなど、両院は強固な連携関係を築いている。

吹田病院心臓血管外科は循環器内科とも協働し、心臓や大動脈だけでなく、末梢(まっしょう)血管、頚(けい)動脈疾患、静脈疾患も含めた血管疾患全般を集学的に治療している。

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