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Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)6月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1088 四面

生駒市立病院
「まぶた外来」好評
患者さんのQOL改善に力

生駒市立病院(奈良県)の「まぶた外来」が好評だ。同外来は中西新・整形外科部長が昨年11月に開始。まぶたが上がりにくい状態の「眼瞼(がんけん)下垂症」をはじめ、目元に近い「皮膚腫瘍」、逆さまつ毛のような「眼瞼内反・眼瞼外反」といった目元まわりの形成外科領域の疾患に対応している。毎週木曜日の午後に実施。「命を脅かすような重篤な疾患は少ないですが、ひとりでも多くの患者さんのQOL(生活の質)を向上したい」と中西部長は意気込んでいる。

眼瞼下垂や逆さまつ毛など対応

「患者さんのQOL向上をサポートしたい」と中西部長 「患者さんのQOL向上をサポートしたい」と中西部長

まぶた外来は毎週木曜日の午後3時~5時。基本的に予約制で、眼瞼下垂症や眼瞼皮膚腫瘍、眼瞼内反・眼瞼外反、外傷後の瘢痕(はんこん)拘縮など、まぶた全般にかかわる形成外科領域の疾患を治療する。多くが眼瞼下垂症の治療だ。同疾患は、まぶたが下がり、目が開けづらくなる病気で、眼瞼挙筋(まぶたを動かす筋肉)の弛緩や動眼神経(眼瞼挙筋を動かす神経)の異常によって起こる。

死に直結するような重篤な疾患ではないものの、物が見えづらくなるため、中重度では姿勢や表情が悪くなるケースも珍しくない。中西部長は「日中でも眠たそうに見えたり、物を見るために後傾の姿勢を取ったり目を開こうと額にしわを寄せたりするため、他人に与える印象に影響します」と説明し、「患者さんのQOLに関係する疾患です」と指摘。姿勢の悪さから、頭痛や肩こりの要因になるといわれている。

眼瞼下垂症には先天性と後天性があり、先天性では眼瞼挙筋などの形成不全、後天性では加齢による筋力低下や皮膚のたるみで起こる。後天性は「腱膜(けんまく)性眼瞼下垂症」といい、高齢者に多く見られるが、近年は若年層や中年層にも増えているという。原因のひとつとして考えられているのが、コンタクトレンズの長期利用だ。

中西部長は「レンズはあくまでも異物ですから、直接、目に入れることで、まぶたの裏側に慢性的な炎症を起こし、眼瞼挙筋などに影響を及ぼします」と解説。自身の経験から「30、40歳代の患者さんでも眼瞼下垂が生じている方が少なくありません」と強調する。

治療法は主に手術。同院のまぶた外来では、主に①緩んだ挙筋腱膜のたるみをなくすために、眼瞼挙筋を前転させて瞼板に縫合固定する「挙筋前転術」、②たるんだ皮膚と眼輪筋(目を閉じる際に使う筋肉)を部分切除する「皮膚眼輪筋切除術」、③眉下の皮膚を切除する「眉下皮膚切除術」―の3つの方法を実施しており、患者さんの状態に応じて選択・治療する。

「いずれも後天性の眼瞼下垂症に用いる方法です。たとえるなら、弾力が低下したゴムの一部をたくしあげて固定することで、弾力を回復するようなイメージです」(中西部長)

手術は両目で約2時間。局所麻酔で行い、仮止めで左右のバランスに配慮しながら治療する。重力によって皮膚のたるみなどが異なるため、途中、患者さんに起き上がってもらい、確認する。傷は皮膚のたるみ具合など個人差があるものの、二重のラインを目の幅程度に切開する。先天性のケースでは、眉毛を上げる額の筋肉(前頭筋)と、まぶたをつなげたり、太ももなどほかの部位から筋膜を移植したりする。

中西部長が心がけているのは「より安全面に配慮した丁寧な対応」だ。たとえば、初診の患者さんの場合、問診に1人当たり20分程度の時間をかける。たとえば眼瞼下垂症の場合、診察室でそのまま検査を行う。目の開き具合や目元の筋肉の動きを確認したり、MRD(margin reflex distance=黒目の真ん中からまぶたまでの距離)を測定したりする。MRDが3.5㎜以上は正常、1~2㎜は中程度、0~1㎜は重度という評価になり、中程度以上の場合、手術の対象としている。

手術に際しては一度、患者さんに帰宅してもらい、治療するかどうかを検討してもらう。「たとえば手術すると一重まぶたの方は二重まぶたになります。目元の印象がすごく変わるため、なかには、ご家族を含め見た目が変わることを喜ばない方もおられます」と中西部長。

眼瞼下垂チェック!

以下の項目に1つでも該当する場合、眼瞼下垂症の疑いがあります。

  • 目が開きにくく、上まぶたが瞳孔にかぶさっている。
  • 目が小さく、眼たそうに見える。
  • 目を開けている状態で眉が上がり、おでこに大きくシワが寄っている。
  • 額の筋肉を使って目を開ける癖があり、おでこが過剰に緊張し、疲れや肩こり・頭痛を生じやすい。コンタクトを長時間使用しているが、最近まぶたが重い感じがする。
  • 花粉症などで、まぶたをこする癖があり、最近、目が開きにくくなってきた。
「患者さんにしっかりと術後のイメージをしてもらいたい」と、鏡を見ながら針金で二重まぶたにするなど、シミュレーションを行い、そのうえで一度考えるよう促している。

「患者さんが初診日に手術を希望しても、説明を聞いたうえで検討する時間をできるだけ設けます。命にかかわる疾患ではないため、ご家族にも納得していただきたいのです。そのうえで治療を希望する場合は1週間後に来院していただきます」

術後のケアにも万全を尽くす。最近は日帰りで眼瞼下垂の手術を実施する医療機関が散見されるが、同院では2泊3日を推奨。理由を中西部長は「頻度は少ないですが、合併症が起こることがあり、そのひとつが術後の血腫。目元は血流が多いため、術後2日間は目がパンパンに腫れます。術後血腫の発見が遅れ後遺症が生じた報告もあるため、万全を期して2日間は入院することをお勧めしています」と説明。

どうしても入院を希望しない場合は、翌日に必ず受診することを約束したうえで、手術を実施している。術後1週間で抜糸を行い、1カ月半~2カ月程度経過すると、次第に腫れが改善、自然な見た目になる。同外来は眼瞼下垂症以外にも目の周囲の皮膚腫瘍や傷跡、逆さまつ毛などに対応。中西部長は「目元まわりの疾患で日常生活を送るのに困っている患者さんは、気軽にご相談ください」と呼びかけている。

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