2017年(平成29年)6月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1088 三面
学術集会
日本乳腺甲状腺超音波医学会
超音波の知見を共有
湘南鎌倉総合病院
田中部長が会長務める
第38回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会が5月27日から2日間、栃木県宇都宮市で開催された。同学術集会のメインテーマは「超音波はアートだ!」。湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の田中久美子・乳腺外科部長が会長を務めた。徳洲会からは田中部長を含め3人がパネルディスカッションや一般口演で発表を行った。概要を紹介する。
同学術集会の会長を務めた田中部長は、開会式の挨拶で登壇し、メインテーマである「超音波はアートだ!」に言及、「超音波検査に携わる医療従事者は、それぞれ異なる“アート”をもっています。それをぜひ、この学術集会で共有してください」と呼びかけた。
プログラムには田中部長自身が座長を務めるパネルディスカッション2「特別企画 女性のライフスタイルと乳がん」や、「Her2 陽性乳癌」の画像を学ぶ企画、「豊胸術や再建後の乳房超音波診断」などが盛り込まれた。
なお、学術集会の運営スタッフとして湘南鎌倉病院の職員が多数参加。円滑な会場運営や進行などに尽力した。
パネルディスカッション
各年代で学習の機会を
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)田中久美子・乳腺外科部長
「女性のライフスタイルと乳がん~啓発活動はどうあるべきか」というテーマのパネルディスカッションで、田中部長はイントロダクションとして口演を行った。「女性のライフサイクルは小児~幼児期、思春期、性成熟期、更年期、老年期と分類されますが、学生時代など早い段階から乳房の管理や検診、乳がんの治療や妊孕(にんよう)性(妊娠する力)との関係などを啓発していくことが望ましい」とし、「現状ではインターネットなどの情報は玉石混交であり、適切な時期に適切な啓発がなされると良いと考えます」と指摘した。
一般口演
後方エコーなどで有意差
湘南鎌倉総合病院 坂井由紀子・検査部副主任
「Her2 陽性乳癌における超音波画像の検討」と題して口演。Her2 は、がん細胞の増殖に関係しているとされるタンパク質の一種。Her2 陽性乳がんに特徴的な所見の有無を調べるため、同乳がんと診断された39例と、対照群のHer2 陰性の原発性乳がん48例について、腫瘍径、後方エコー、点状高エコー(石灰化を反映)などを比較した。
その結果、腫瘍径2㎝以下の割合は対照群、4㎝以上はHer2 群に多く、Her2 群が対照群より有意に大きかった。また、後方エコーでも増強(輝度が高い)の割合はHer2 群、点状高エコー有もHer2 群で多く、それぞれ有意差が見られた。これらをふまえ「後方エコーは腫瘍内部の細胞密度や水分量を反映しており、Her2 陽性乳がんの後方エコー増強は、充実性(固形成分)の増殖態度を反映している可能性があります」と考察した。
超音波だけでは鑑別困難
湘南鎌倉総合病院 田島亜弥・検査部副主任
「乳管腺腫の3症例」をテーマに口演を行った。乳管腺腫は浸潤性乳管がんなどとの鑑別が難しい良性疾患だ。
同院で経験した3症例について、受診した経緯、マンモグラフィーや超音波検査のスコアなどを示し、それぞれの症例で乳管腺腫と見られる超音波像や組織像が認められたと報告した。
そのうえで「3症例はいずれも浸潤性乳管がんや乳管内乳頭腫などとの鑑別に難渋しました。針生検の結果でアポクリン化生(乳腺の細胞が汗腺の一種であるアポクリン腺のように変化する)、偽浸潤像などの組織像を認め、免疫染色で二相性(乳管上皮細胞と筋上皮細胞の二層構造)が確認され、診断に至りました。超音波像のみでは良悪性の鑑別が困難であり、カテゴリー3以上の所見を見落とさないことが重要であると考えました」とまとめた。