2017年(平成29年)6月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1088 一面
東京西徳洲会病院
看護外来を相次ぎ開設
緩和ケアとリンパ浮腫ケア
東京西徳洲会病院は緩和ケア看護相談外来とリンパ浮腫ケア外来を6月に相次いで開設した。緩和ケア認定看護師やリンパ浮腫指導技能者の専門資格をもった看護師が、患者さんや家族からの相談に応じたり、浮腫を改善するためのケアを実施したりする。同院は昨年4月、東京都から乳がんの分野に関して「がん診療連携協力病院」の指定を受けており、両外来の開設は、がん診療体制の強化の一環。
がん医療の質・患者満足度向上を推進
「患者さんが、その人らしい生活を続けていけるようお手伝いしていきたい」と船橋看護師(右)、清水看護師
緩和ケア看護相談外来は毎週木曜日の午前に実施。第1、第3木曜日を看護部の船橋邦江看護師が、第2、第4木曜日を清水由佳看護師が担当している。ふたりとも緩和ケア認定看護師の資格をもつ。リンパ浮腫ケア外来は第1、第3木曜日の午前に清水看護師が担当。清水看護師はリンパ浮腫指導技能者という専門資格も有している。
同技能者資格は、リンパ浮腫指導技能者養成協会が実施する養成講座を受講し、実技・筆記試験に合格することで取得できる。同協会は2008年から5年間で400人の有資格者を輩出するという目標を達成(修了者数437人)。これにより同講座は13年度に終了したが、厚生労働省委託事業として同年度から「新リンパ浮腫研修」がスタート。複数の団体が実施しており、リンパ浮腫に関する専門技能者の養成を行っている。
船橋看護師は「当院は昨年4月に東京都がん診療連携協力病院(乳がん)の指定を受けました。それ以前からも、がん医療の質の向上や患者さんの満足度向上を一貫して推進してきましたが、こうした取り組みをさらに一歩進めるために、今回、それぞれの看護外来を開設しました」と説明する。
同協力病院は14年にスタートした都独自の制度で、がん医療の水準向上や安心で適切ながん医療の提供を促進するのが狙い。集学的治療(手術、化学療法、放射線治療)の実施体制を整え、専門的ながん医療を提供している病院が対象だ。
緩和ケア看護相談外来では患者さんや家族の相談に応じ問題解決をサポート
指定を受けるには①集学的治療、緩和ケア、標準的治療の提供、②クリティカルパス(診療計画表)の整備、③キャンサーボード(診療科や職種の垣根を越え多様な観点から、がん患者さんに対する最適な治療方針を検討)の定期開催、④がん相談支援センターの設置、⑤がん種ごとに常勤専門医の配置――などの要件を満たす必要がある。
「入院中のがん患者さんやそのご家族は、病棟の看護師に相談したいことがあっても、なかなか相談をもちかけるタイミングがなく、そのまま退院しているのが実態でした。そうした状態を改め、患者さんの安心・安全をサポートし、満足度向上を図りたいと考えています。緩和ケア看護相談外来では、がん患者さんやご家族に対して、緩和ケア認定看護師が話を傾聴し、不安や問題の軽減を図ったり、目の前の問題を解決したりするお手伝いをしたりします」(船橋看護師)
具体的には、「不安やストレス、気持ちのつらさへの対処方法を教えてほしい」、「治療後の療養場所などについて相談したい」、「緩和ケアや緩和ケア病棟について知りたい」、「家族のことや医療者との関係について相談したい」といった相談に応じていく。
なお、入院患者さんに関しては、同院では医師、看護師、薬剤師からなる緩和ケアチームが活動しており、毎週水曜午後にカンファレンス(症例検討)と回診を実施。
患者さんや家族が不安に感じていることを傾聴し、身体的苦痛の症状コントロールなどに取り組んでいる。
「その人らしい生活を」
リンパ浮腫へのケアとして弾性包帯を手際よく巻いていく
一方、リンパ浮腫ケア外来では婦人科、乳腺外科、泌尿器科、頭頚(とうけい)部などのがんの手術を受け、その後、身体にむくみが出た方たちが対象となる。日常生活指導を行うほか、浮腫の状態に応じ、弾性着衣や弾性包帯を用いた圧迫療法やドレナージ(リンパ液の流れを改善しむくみを緩和させるマッサージ)を行う。リンパ浮腫とはリンパ節を手術で切除することなどにより、リンパ管が障害されてリンパ液が滞留、それによって、むくみが生じることをいう。
「リンパ浮腫自体は生命にかかわる疾患ではないため、しっかりとしたケアの対象としては見過ごされがちでした。また、入院中はリンパ浮腫のケアを行う時間の確保が難しいのが実態です。しかし、身体が重い、だるい、ボディイメージの変化による精神的な苦痛などQOL(生活の質)を低下させます。治療・ケアに関して、どの施設に相談すればよいのか情報も不足しており、わかりにくいのが現状です」(清水看護師)
リンパ浮腫ケア外来では初回の説明の際に、血栓などがある場合には治療ができないことを清水看護師が説明し、形成外科医が血栓などの有無を確認する検査を行う。新しい血栓ができている場合などには、ドレナージは禁忌(禁止事項)であり、蜂窩織炎(ほうかしきえん)(細菌感染などによる炎症)の発症時も炎症を悪化させることから、ドレナージは実施してはいけないことになっているためだ。
同院は今年4月、看護部の委員会のひとつとして、緩和ケアリンクナース委員会を立ち上げるなど緩和ケア分野を強化。リンクナースとは専門チームと病棟看護師の橋渡し役を担う看護師をいう。これにより、緩和ケアの介入対象となる患者さんの抽出を、従来以上に適切に実施していきたい考えだ。
東京西病院は昨年4月に東京都がん診療連携協力病院に指定
医療用麻薬を用い苦痛症状を取り除いている患者さんだけが緩和ケアの対象ではなく、今日では、がんの発症初期から緩和ケアに取り組む考え方が一般化しつつある。緩和ケアを必要としている患者さんに、適切に介入していくことが肝要だ。
このためリンクナース委員会以外にも、緩和ケアの専門医を招いて院内勉強会を開くなどレベルアップに努めている。
船橋看護師、清水看護師は「新たに開設した両看護外来を通じ、患者さんがその人らしく生活を続けていけるようお手伝いをしていきたいと考えています」と口をそろえ抱負を語っている。