2017年(平成29年)6月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1086 三面
日本の標準治療へ
土田・湘南鎌倉総合病院外傷センター長
四肢外傷で会議
「提示された症例と検討内容は貴重な財産」と土田センター長
土田芳彦・湘南鎌倉総合病院(神奈川県)外傷センター長(湘南厚木病院兼務)は、都内で第2回重度四肢開放骨折ピアレビューミーティングを開催した。全国から四肢外傷医療の専門家ら30人以上が参加し、症例検討で知識や経験を共有した。
開放骨折とは、折れた骨が皮膚を突き破り体外に露出する骨折をいう。治療は筋肉や血管、神経の損傷を改善し機能を回復するとともに、感染症への対応も必要になる。会合では10人の専門医が経験した症例を提示すると同時に、討論したい議題を挙げ、土田センター長の司会の下、参加者が治療法を話し合う形式で進行。
土田センター長は「ここで討論したことが、そのまま日本の標準治療になるくらいの意気込みで臨みます。今回で2回目を迎えますが、提示された症例と検討内容は貴重な財産。記録して100例たまったら冊子にする予定です」と参加者に発破をかけた。
小児から高齢者まで、さまざまな症例が提示された。そのなかで土田センター長は、右大腿(だいたい)骨骨幹部開放骨折(Gustilo ⅢA)の20歳代男性で、10㎝の骨欠損に対し、どのように治療すべきかを提示。札幌徳洲会病院の辻英樹・副院長兼外傷センター部長は、右前腕がベルトコンベアに巻き込まれた20歳代女性で、骨や軟部組織(皮膚や筋肉など)の再建法や手関節固定を回避できたかを議題に挙げた。
各症例とも画像や治療過程を振り返りながら最善の治療法を探った。共通して話題に上ったのがデブリードマン(完全な汚染除去)のタイミングや方法。感染・壊死(えし)組織を放置しておくと周囲にまで感染・壊死が広がる可能性があるため、早めの実施が推奨された。また、イリザロフ法(創外固定器による骨延長)、マスケレット(医療用セメントによる骨補塡(ほてん)後の骨移植)など各再建法の選択のポイントも話し合った。
重度四肢開放骨折の治療成績は、Fix and Flap(骨接合と同時期に皮弁形成術を行う手技)の概念が導入されて以降、飛躍的に進歩した。しかし、土田センター長は「まだまだ現場に浸透していない」と指摘。「四肢外傷再建外科医単独での治療が理想的ですが、形成外科医と整形外科医が共同で治療を行うのであれば、重度四肢外傷治療に対する理解をお互いが深める必要があります」と強調した。