2017年(平成29年)6月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1086 三面
日本理学療法学術大会
徳洲会から12演題
高齢者テーマに多数発表
第52回日本理学療法学術大会が5月12日から3日間、千葉県で行われた。日本理学療法士学会を構成する12分科学会と同一の日程・会場による連合大会方式で開催、共通テーマは「理学療法士の学術活動推進」。徳洲会は12演題(ポスター発表含む)を発表した。口演(口頭発表)を中心に概要を紹介する。
転倒予防をテーマに発表した八尾病院の上田副主任(左から2人目)
八尾徳洲会総合病院(大阪府)の
上田哲也リハビリテーション科副主任(理学療法士=PT)は
「自宅見取り図を用いた転倒予防指導の有効性に関するランダム化比較試験 急性期病院における退院患者を対象に」と題し発表した。一般の高齢者よりも病院から退院した高齢患者さんのほうが転倒する割合が高いといわれ、最近は転倒予防策として家屋評価が注目されている。
上田副主任は急性期病院の整形外科病棟から自宅退院する65歳以上の患者さん60人を対象に、簡便に使用できる家屋の見取り図を用いた転倒予防指導の効果を検証した。
退院時に、運動指導を主体としたA群と、運動指導に加え自宅見取り図を用いて転倒危険因子の指導も行ったB群とを比較した結果、退院後2カ月間でA群では転倒発生率が12%だったのに対し、B群では0%。上田副主任は急性期病院の転倒予防策として、自宅見取り図を用いた指導が有効な可能性を示唆した。同発表は論文推薦演題に選ばれた。
多くの発表を行った札幌病院。左から2 人目が小野寺副主任。一番右が荒木副主任
札幌徳洲会病院からの口演は2演題。
小野寺智亮リハビリテーション副主任(PT)は
「寛骨臼(かんこつきゅう)骨折術後患者におけるQOLに影響する因子の検討」がテーマ。寛骨臼(股(こ)関節を形成する骨盤の一部)骨折は全骨折の2%とまれで報告が少ないことから、寛骨臼骨折骨接合術を実施した自院の24人の患者さんを対象に、QOL(生活の質)に影響する因子を検討した。
術後12カ月後に陥没骨片の有無や股関節外転筋筋力、歩行時痛などを調べた結果、陥没骨片の有無や術式などの関連は認めなかったが、患部側の股関節外転筋力は影響していることを説明。「筋力は理学療法士の介入によって改善が期待できる項目」として、介入する際は股関節面へのストレスに配慮する必要を強調した。
荒木浩二郎リハビリテーション副主任(PT)は
「最大等尺性筋力の10%を負荷とした等張性低強度筋力トレーニングの介入効果 健常高齢者に対するランダム化比較試験」と題し発表。昨年まで京都大学大学院に在籍し、その際に行った研究について発表した。荒木副主任は以前、高齢者を対象に最大筋力の10%の負荷で膝関節伸展運動を10回1セットとして5セット実施したところ、3セット以降から筋力の増加に関連する筋腫脹(しゅちょう)(筋肉の腫れ)を認めたと報告。
今回、筋腫脹が生じる最低限の運動量(3セット)で筋肥大効果が得られるかを検証した。健常の高齢者22人を対象にトレーニングの有無などで比較した結果、十分な効果が得られなかったと明かし、低強度筋力トレーニングでも効果を得るには、運動量を増やす必要がある可能性を示唆した。