徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2016年(平成28年)8月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1046 三面

第21回日本冠動脈外科学会
高難度の手技を次代へ
徳洲会グループから9演題

第21回日本冠動脈外科学会学術大会が7月14日から2日間、福岡市で開催された。テーマは「日本発冠動脈外科の輝き」。世界的にも定評のある日本の高難度な冠動脈手術手技を再検証するとともに、その技を次世代につなげていくのが狙い。徳洲会グループは9演題を発表、口頭発表を中心に紹介する。

会長要望講演

急性期避けて手術を

松原徳洲会病院(大阪府)古井雅人 心臓血管外科医長 松原徳洲会病院(大阪府)古井雅人 心臓血管外科医長

「当院における心室中隔穿孔(せんこう)に対する外科的治療:12年の経験」。心室中隔穿孔(VSP)は、急性心筋梗塞(AMI)後、血流不足で心室間を隔てる筋肉(心室中隔)の一部が壊死(えし)し、穿孔(穴)が開いた状態。心室の容量負荷や梗塞による心臓の駆出力低下などにより心不全が急速に悪化する。心不全悪化前に穿孔をふさぐ手術が必要だが、梗塞直後の心筋は脆弱(ぜいじゃく)なため、松原病院では可能な限り心臓組織が瘢痕(はんこん)化(壊死組織がある程度修復された状態)してから手術。過去約12年間のAMI後のVSP28例を調査し、その成績を検討した。

結果、手術までの待機期間は平均9.1日。大動脈内バルーンパンピング(IABP=循環動態補助用具)や人工呼吸器を用いて心臓や呼吸を補助し待機できたのは54%、血行動態が破綻し緊急手術となったのは46%。再発し再閉鎖が必要であったのは22%(5例)、手術死亡または入院30日死亡は4%(1例)。古井医長は、救命率を上げるため急性期を避けて手術する必要性を訴えた。

低心室機能例の治療戦略

岸和田徳洲会病院(大阪府)降矢温一 心臓血管外科医医長 岸和田徳洲会病院(大阪府)降矢温一 心臓血管外科医医長

「低左心機能CABGにおけるmild-moderate MRの治療戦略」。虚血性心疾患のなかでも予後不良といわれる低左心機能例(EF40%≧)でmild-moderate MR(中等度の虚血性僧房弁閉鎖不全症)を合併した冠動脈バイパス術(CABG)適応の症例について、CABG単独群とCABG+僧帽弁形成術群の比較成績を報告した。

両群ともMRは術後有意に改善を認め、心血管イベント回避率に有意差はなかったことを報告し、虚血性心筋症でのCABGの僧帽弁形成術追加の必要性を問いかけた。

予後改善のため工夫必要

岸和田徳洲会病院 榎本匡秀 心臓血管外科医師 岸和田徳洲会病院 榎本匡秀 心臓血管外科医師

「冠血行再建を要した急性大動脈解離Stanford Aの遠隔成績の検討」。上行大動脈に解離腔(くう)(血管の内膜が破れ外膜と内膜の間に血液がたまった部分)を有するStanford A型の急性大動脈解離は高率で生命に危険が及ぶため、解離腔近傍の大動脈を切除し人工血管に置換する手術が緊急に必要。同院での緊急手術例170例の成績を考察した。

解離腔の伸展による冠動脈血流の阻害などにより、人工血管置換術時に冠血行再建を必要とした群14例と、必要としなかった群156例に分けて比較。結果、30日死亡は、再建群が3例(21.4%)、非再建群は15例(9.6%)。生存率を比較すると、全死亡、心血管関連死亡ともに2群間で有意差を認めなかった。

榎本医師は、統計学上の有意差はないが「冠血行再建を要した同疾患の予後が厳しいことは臨床上、明らかで、予後改善のために手術手技の工夫が必要」とまとめた。

ワークショップ

TAVIも治療選択肢

岸和田徳洲会病院 畔栁智司 心臓血管外科部長 岸和田徳洲会病院 畔栁智司 心臓血管外科部長

「CABGの予後から考えるASを合併した冠動脈疾患の治療戦略」。大動脈弁狭窄(きょうさく)症(AS)をともなった冠動脈疾患の治療成績を考察した。

過去約14年間に治療した冠動脈疾患を、①外科的大動脈弁置換術(AVR)とCABG併用の284例、②人工心肺を用いた心停止下のCABG692例、③人工心肺を使いつつ心拍動下のCABG544例、④人工心肺を使用しないCABG1170例に分け比較。

結果、7日死亡は①が1.76%、②が0.14%、③が1.29%、④0.43%で、30日死亡は①が2.11%、②が0.87%、③が3.50%、④0.85%。推定10年生存率は①が45.8%、②が78.5%、③が61.6%、④が67.5%。

畔栁部長は「人工心肺や大動脈遮断は予後リスク因子とならないことが示唆されました」。近年登場した経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の同院33例も7日死亡がゼロ、30日死亡が1例と好成績なため、人工心肺そのものがリスクとなり得る場合はTAVIが治療選択肢のひとつとなるとの考えを示した。

一般口演

適切な術前管理など必要

岸和田徳洲会病院 若林尚宏 心臓血管外科医師 岸和田徳洲会病院 若林尚宏 心臓血管外科医師

「当院における心筋梗塞後左室瘤(りゅう)に対する左室形成術の検討」。左室瘤は、心筋梗塞後に心筋が部分的に非薄化し瘤化する病態。薬剤抵抗性の心不全や心室性不整脈をともなう場合、瘤内に血栓が生じた場合に手術(左室形成術)を考慮する。

同院での同手術17例を検証した。対象のうち7例で瘤内血栓、3例で中等度以上の僧房弁閉鎖不全症、3例で心室性不整脈、1例で心房細動を認めた。周術期死亡1例、遠隔期の他疾患死2例以外は現在も健在と若林医師は報告。

左室駆出率(LVEF)は術前平均28.9%から術後平均39.1%へ、各長期および収縮末期容積はそれぞれ265㎖から148㎖、194㎖から102㎖へと改善傾向。

ステント内再狭窄を繰り返す例や、無収縮範囲が広い症例などは機能改善が乏しく、「瘤の位置や梗塞範囲を正確に把握するとともに、適切な術前管理、手術時期の決定が重要です」と若林医師。

ブレイクセミナー

EVH のメリットを紹介

岸和田徳洲会病院 薦岡成年 心臓血管外科副部長 岸和田徳洲会病院 薦岡成年 心臓血管外科副部長

薦岡副部長は「CABGにおける付加価値としてのEVH」を講演。CABGは、患者さんの身体から採取した健康な血管を虚血血管の閉塞部分を迂回してつなぎ、血行再建する治療法。これに使用する大伏在静脈グラフト(下肢血管)は従来、採取部分を大きく切開する直視下手術OVHで採取していたが、近年、内視鏡下で同血管を採取するEVHが海外を中心に標準的に選択されている(日本では保険未収載)。

EVHは手術創が小さく術後の疼痛や感染症のリスクが低減することから岸和田病院では現在、ほぼ全例でEVHを施行。

薦岡副部長は、自院のCABGのうち大伏在静脈グラフトを使用した2,157例(うちOVH454例、EVH1,904例、重複あり)で両採取法を比較した。

結果、創の大きさはOVHが平均25.6cm、EVHは4.6cm。グラフト採取時間はOVHが35.5分、EVHで33.2分。血腫の合併症はOVHが7.8%、EVHが10.2%、下肢浮腫はOVHが17.6%、EVHが8.1%。グラフト開存率は6年のフォローアップ期間で遜色なかった。薦岡副部長は、EVHは創が小さく開存率もOVHと同等以上であるうえ、患者満足度も高いことを指摘。とくに創合併症リスクの高い症例はEVHを選択するべきと訴えた。

PAGE TOP

PAGE TOP