2016年(平成28年)8月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1046 一面
徳洲会グループ
断らない医療の国際化
外国人患者受入れ整備事業に6病院
徳洲会グループの6病院は、今年度の「医療機関における外国人患者受入れ環境整備事業」を受託した。これは厚生労働省が日本医療教育財団に委託して推進しているもので、札幌東徳洲会病院、千葉西総合病院、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)が同事業を昨年から引き続き担うほか、新たに湘南藤沢徳洲会病院(同)、南部徳洲会病院(沖縄県)、東京西徳洲会病院が選出。同実施病院は全国でも36病院ときわめて少なく、徳洲会の長年にわたる国際医療支援が実を結んでいる。
長年の国際医療支援が結実
中津川責任者が院内にいない際や、国際医療支援室の対応言語以外は、同時通訳システムが活躍
外国人患者受入れ整備事業には、医療コーディネーターや医療通訳の配置支援を目的とする「医療通訳配置等間接補助事業」(外国人患者受入れ拠点病院)と、院内表示や各種文書類の多言語化支援を目的とする「外国人患者受入体制整備支援間接補助事業」があり、今年度は札幌東病院、千葉西病院、湘南鎌倉病院、湘南藤沢病院、南部病院の5病院が前者、東京西病院が後者に応募し、受理された。
徳洲会は急増するインバウンド(訪日外国人旅行者)や在日外国人の医療需要に対応するため、グループを挙げて外国人患者さんへの対応を強化。とくに需要の大きい病院は国際医療支援室を設置し、専任スタッフが各種問い合わせへの対応や通訳、翻訳、旅行会社などと提携したコーディネート業務などを担っている。
「徳洲会の理念である『断らない医療』は、外国人患者さんにも適応されます」と、各院の担当者らは口をそろえる。言葉がわからない不安をできる限り解消するため、地域性に合った外国語担当者を配置するほか、ネットワークを利用した同時通訳システムなどを導入し、担当者がいなくても英語、中国語、韓国語は24時間、タイ語とロシア語も平日日中なら対応できる環境を整備している病院もある。
「沖縄の立地上、国際化は避けられない流れ」と玉那覇事務長(中央)と大城室長(右)
今回、新たに選出された病院のひとつ、湘南藤沢病院の国際医療支援室は2人体制で、英語とドイツ語に対応。日米双方の看護師資格をもつ国際医療支援室の中津川恵責任者は、米国の病院で10年以上勤務してきた経験を生かし、同院が取得を目指すJCI(国際的な医療機能評価)事務局長も兼任、各種文書類の英語化に尽力するかたわら、外国人患者さんが来院した際に受け付けから支払いまでスムーズにサポートできるよう、一般職員を指導している。
「訪日外国人の数は年々増加しており、早急に体制整備が必要だと思います」と中津川責任者。
同院は同時通訳システムを利用。時に保険証やビザがなく、行政手続きに時間がかかったりすることもあるが、「医療以外のことは二次的な問題だと思います」と、前川俊輔・事務局長は受け入れを断らない姿勢を堅持する。
同じく今年初選出の南部病院の国際医療支援室は5人体制。対応言語は英語と中国語で、昨年取得したJCIの事務局がそのまま同室を兼務している。同院も同時通訳システムを活用しているほか、留学経験のある職員らをリスト化して、いざという時に備えている。また、8月に外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)取得しており、英語と中国語の入門編の語学教室を職員に実施するなど、病院全体で多言語化を推進。
「県の予想をはるかに上回るスピードで外国人観光客が増加しており、立地上、これからも外国人の受診は多くなっていくと思います」と大城安之・国際医療支援室長。
スタッフの国際化も進めていく意向の山本事務長(右)と宗像責任者
とくにJCI取得後、外国人患者さんは倍増しており、「第三者の質の担保がある意義は大きいと感じました」と玉那覇栄恵事務長はJCI効果を実感している。
一方、東京西病院は「まずは院内表示や文書類の多言語化が必要」と、間接補助事業に申請。同院は米軍も使用する横田基地が近いこともあり、月100人以上の外国人患者さんが受診することもあるという。国際医療支援室は現在、4人体制で英語と中国語に対応。
中国人からの問い合わせが増えてきており、医療の質だけでなく、日本人のホスピタリティにも関心が高いことから、「細かな配慮を忘れずにお迎えしたい」と国際医療支援室の宗像雅則責任者は笑顔を見せる。同院は患者さんだけでなく職員の国際化も進めている。「スタッフ、患者さんともに外国人が普通に行き来する病院にしていきたい」と山本彰事務長は意欲を燃やしている。