病気の治療
medical treatment
medical treatment
図 子宮体がん子宮体部、つまり子宮の本体に発生するがんが子宮体がんで、大多数は、子宮体部内腔を覆う子宮内膜から発生するがんであり、子宮内膜がんとも言います(下図参照)。子宮頸がんとは違い、発展途上国では少なく、先進国で多い婦人科がんです。最近、我が国でも欧米と同様に、成人女性に増えてきているがんのひとつです。このことは、肥満と非活動的な生活習慣と関連していると言われています。
資料:独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター
Source:Center for Cancer Control and Information Service, National Cancer Center, Japan
子宮内膜がんの発生の多くには、エストロゲンという女性ホルモンの過剰刺激が関わっています。肥満や生理不順などはエストロゲンの過剰分泌や刺激を引き起こすため、内膜がんのリスクが高いと考えられています。また、ホルモン補充療法などでエストロゲンだけのホルモン療法を受けている方も同様です。このような場合、異型子宮内膜増殖症といういわゆる前がん病変を経て内膜がんが発生します。その一方、ホルモン刺激とは関係なく発生するがんもあります。このようタイプの多くは、委縮した内膜にがん関連遺伝子の異常によって発生することがわかっており、高齢者に多くみられます。他にも、遺伝的に子宮内膜がんを発症しやすい方がいます。
一番多い自覚症状は不正出血です。上記のようなリスクがある方、35歳以上、特に閉経後の不正出血は注意すべき症状ですから、そのような症状ある場合は、躊躇せずに婦人科受診が必要です。
子宮頸がんの検診と同様、子宮内膜の検査も外来で施行可能です。直接、子宮内腔に細いチューブ状の器具を挿入して内膜組織を採取して検査する子宮内膜組織診によって診断します。診断がはっきりしない場合や前がん病変とされる異型内膜増殖症の診断が得られた場合などは、麻酔下での子宮内膜全面掻爬にて組織を採取し、診断を確定することがあります。これは通常日帰り手術になります。
がんと診断されると、CTやMRIなどの画像検査によって、がんのサイズや広がり、リンパ節転移、他臓器転移の有無を調べます。
子宮頸がん検診と違って、子宮体がん検診(内膜細胞診)の有効性は証明されていません。子宮体がんは症状が出てから発見されても一般に予後良好です。しかし、検診や婦人科受診において超音波検査上内膜肥厚が認められたり、前述のようなリスクがある場合は積極的に内膜検査をすることが大切です。
基本治療は手術です。子宮頸がんと違って、進行していても手術の適応となります。子宮、卵巣・卵管、リンパ節を摘出するのが標準的手術です。現在は子宮体がんの腹腔鏡下手術が保険適応となっており、条件が満たされたケースについては、認定された施設において低侵襲な手術も可能となっています。湘南鎌倉総合病院では、腹腔鏡による子宮体がん手術の場合3泊4日程度の入院での治療となっています。
手術後の病理検査で、正確な腫瘍組織分類と病期決定(病期の表参照)がなされ、また再発リスク判定がされます。リスク判定により、術後の抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療などが行われます。手術不能例では、化学療法や放射線療法によって治療します。子宮を温存し妊孕能を維持して治療することを希望される方には、ホルモン剤を使って治療することも可能です。ただし、ホルモン治療の適応となるのは、分化度の高い初期の子宮体がんのみであり、確実な臨床・病理診断に基づいて決定される必要があります。
子宮体がん(子宮内膜がん)は近年増加傾向ですが、早期に診断すれば、完治が見込める病気で、婦人科がんの中では比較的予後がいいとされています。がんを克服するには早期発見・早期治療が重要なのは変わりありません。心配な症状があれば、婦人科での診察を躊躇することなく受けることが大切です。
I期 | がんが子宮体部にのみ存在するもの |
---|---|
IA | がんが子宮筋層の1/2以内にとどまるもの |
IB | がんが子宮筋層の1/2を超えて浸潤するもの |
II期 | がんが子宮体部超えて子宮頸部間質に浸潤したもの |
III期 | がんが子宮外に広がっているもの。または、骨盤内もしくは大動脈周囲リンパ節に転移しているもの |
IIIA | がんが子宮の漿膜や、骨盤腹膜、もしくは卵巣・卵管に転移しているもの |
IIIB | がんが膣や子宮傍組織にひろがっているもの |
IIIC1 | 骨盤リンパ節転移のあるもの |
IIIC2 | 大動脈周囲リンパ節に転移のあるもの |
IVA | がんが膀胱もしくは腸粘膜まで浸潤をしているもの |
IVB | 遠隔転移を認めるもの |