徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

産婦人科の病気:子宮頸がん

子宮頸がんとは


図 子宮頸がんと子宮体がん
子宮下部の管状の部分を子宮頸部、子宮上部の本体の部分を子宮体部と呼び、それぞれの部位に生じるがんを子宮頸がん、子宮体がん(内膜がん)と言います(図)。 子宮頸がんは、あらゆるがんのなかでもその予防・早期発見に検診の有効性が証明されているがんです。しかし、最近は、腺がんという子宮頸部の奥(頸管といわれる部位)に起こり、時に検診で発見されにくいがんの割合が増えているという問題も生じてきています。

子宮頸がんの原因

子宮頸がんの多くはヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papilloma Virus)というウイルスの感染によって生じることがわかってきました。性経験があれば、だれでもこのウイルスに感染しますが、多くの人では自分の免疫力でウイルスが排除されます。しかし、約10%の人は感染が長期間持続し、いわゆるがんの前の段階である子宮頸部異形成をきたします。さらに、そのなかの一部の人が高度異形成を経て子宮頸がんに進行するといわれています。

症状は

早期には自覚症状はありません。腫瘍の進行とともに不正性器出血やおりものの異常がみられます。特に性行為の際の出血は子宮頸部の腫瘍の可能性がありますので、躊躇せずに婦人科を受診しましょう。

がん検診について

子宮頸部細胞診

子宮頸部をブラシなどで擦過して採取された細胞をグラススライドに塗抹して、顕微鏡で異常細胞の有無を調べます。この検査を子宮頸部細胞診検査といいます。いわゆる子宮頸がん検診です。20歳を過ぎたら、定期的な検診を受けることが推奨されており、市町村から2年に1回検診の案内が届きます。また、職場の健康診断で希望者が婦人科検診を受けることができる場合もありますので、そのような機会を利用して検診を受けるようにしましょう。

HPV test

子宮頸がん検診の有効性は証明されていますが、細胞診検査の限界も指摘されています。つまり、一回の検査だけでは病気を見逃す可能性があります。子宮頸がんの原因であるHPVの存在を調べる、HPV testという検査は細胞診検査より病気を“見逃さない”ことが多くの研究で証明されてきており、海外ではこの検査が細胞診検査と併用されるか、代替されてきています。ただし、注意しなければならないのは、HPV testが陽性だから病気があるということではなく、陰性であれば、病気が隠れている可能性はない(非常に低い)ということです。

2次検査・精密検査について

子宮頸部の細胞診検査の結果、異形成やがんの疑いが強い場合には、コルポスコピー(拡大鏡)検査によって異常の有無・程度を調べます。病変が認められた場合、その部分から組織を採取し(生検)、病理組織検査を行います。これにより、異形成の程度やがんの有無・種類の診断をします。もし、子宮頸がんと診断されたら、正確な病気の進行度・拡がりを内診、画像検査(CTやMRI)等を用いて子宮の周囲にある臓器、リンパ節、他の臓器への転移を検査します。

治療法は?

子宮頸部異形成は、軽度・中等度の場合は通常、定期的な経過観察を行います。高度異形成(上皮内がん)の場合は、LEEP(Loop Electrical Excision Procedure)や円錐切除という方法で病変を切除することを基本とします。

子宮頸がん(浸潤がん)の治療は、手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤)の3つを単独、もしくは組み合わせて行います。病気の進行期(表1)によって、そして患者さん本人のperformance status(元気さ)、合併症の有無などを考慮して治療方法が決定されます(表2)。臨床病期による治療方法については下に示します。

表1 子宮体がんの病期
I期:がんが子宮頸部に限局するもの(体部浸潤の有無は考慮しない)
IA期 組織学的にのみ診断できる浸潤がんで、浸潤の深さが5㎜以内、縦軸方向の広がりが7㎜を超えないもの
IA1期 間質浸潤の深さが3㎜以内、縦軸方向の広がりが7㎜を超えないもの
IA2期 間質浸潤の深さが3㎜を超えるが5㎜以内、広がりが7㎜を超えないもの
IB期 臨床的に明らかな病変が子宮頸部に限局するもの、または臨床的に明らかではないがIAを超えるもの
IB1期 病変が4㎝以内のもの
IB2期 病変が4㎝を超えるもの
II期:がんが子宮頸部を超えて広がっているが、骨盤壁または膣壁下1/3には達していないもの
IIA期 膣壁浸潤が認められるが、子宮傍組織浸潤は認められないもの
IIA1期 病変が4㎝以内のもの
IIA2期 病変が4㎝を超えるもの
IIB期 子宮傍組織浸潤の認められるもの
III期:がん浸潤が骨盤壁まで達するもので、がんと骨盤壁との間にがんでない部分をもたない、
または膣壁の浸潤が下方部分の1/3に達するもの
IIIA期 がん膣壁浸潤は下方部分1/3に達するが、子宮傍組織浸潤は骨盤壁まで達していないもの
IIIB期 子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの、または明らかな水腎症や腎臓が無機能になったもの
IV期:がんが小骨盤腔を超えて広がるか、膀胱・直腸粘膜をおかすもの
IVA期 膀胱や直腸粘膜への浸潤があるもの
IVB期 小骨盤腔を超えてがんが広がるもの
表2 臨床進行期と治療
臨床進行期 治療
IA1 子宮頸部円錐切除単純子宮全摘術
IA2、IB 広汎(準広汎)子宮全摘出術+リンパ節廓清術(病理所見によって、術後化学療法・放射線療法)
IIA、IIB 同時化学放射線療法(手術)
IIIA、IIIB、IVA 同時化学放射線療法
IVB 化学療法、緩和医療

*同時化学放射線療法:放射線治療はがん組織を破壊し、がんを小さくする効果がありますが、化学療法(抗がん剤投与)と併用するほうが治療効果が高いことがわかっています。

大切なのは早期発見

子宮頸がんは、その原因および発がん過程がわかっており、いわゆる前がん病変といわれる子宮頸部異形成の段階で発見、必要により治療すればこわい病気ではありません。もちろん、子宮頸部腺がんなど検診で発見しにくい疾患はありますが、適切な方法で検診を受けて、適切に管理されることが大切です。

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